弐ノ章【スキルの世界】

第1話 World

 ミトロセリアに行く事に決めた俺たちは、今その準備をしているところだ。アイリアのナビ付きでだけど。

 まずは装備。

 俺は転移してから服は変えてないから寝巻きにしていた中学校の長袖体操服のままだ。左の胸らへんに「白井しらい」と書かれた名札がある。今さらだが、俺のフルネームは「白井楓しらいかえで」だ。これだと正直言って防具としてはまったくもって頼りにならない。

 次に武器。これは俺が使える魔法の1つ、魔力剣があるから問題ないだろう。

 食料はアイリアの家にあったものを持っていかせてもらう。

 アイリアは慣れているのかさっさっさっと準備をして「早くしてね~」とか言ってる。……うるせえ。


 さて、防具以外の装備は整ったから早速出発しようか。っと、その前に


 「なぁ、アイリア。防具はどこで手に入れられるんだ?」

 「そんなもの無いわよ。」

 「は?」


 防具無し?それじゃ魔物と戦うときどうするんだよ。大熊みたいなあの爪を生身で受けろってか?死ぬよな。


 「だから、そういうの無しでもなんとかなるように、訓練するんでしょ?防具なんて重たいもの着て戦ったら余計に動けなくなるしね。」


 ああ、なるほど。そもそも着ないのか。そういえばシュネムの襲撃の時にいた他の冒険者たちも盾とかは持ってたけど鎧みたいなのは着てなかったな。

 ということは俺はこのまま体操服で今後戦っていくのか?動きやすいから良いんだけど、なんかダサくないか?考えてみてくれよ。異世界ファンタジーで戦ってる主人公が学校の体操服を着てるところを。

 あと、この世界には存在するはずがないデザインであるために目立つだろうからな。


 「ま、いいや。んじゃ、今後ともよろしく頼むぜ。体操服くんよ。」


 なんとなく好きな擬人法モドキを用いつつ体操服に挨拶をして、


 「話が脱線してるけど、そろそろ行くわよ。」


 アイリアの声をきっかけに俺たちはミトロセリアに向けて出発した。




 ミトロセリアまでは大きさはもとの世界の高速道路ほどあるけど舗装はされていない砂利道を7km進めば到着する。遠いし道も悪いけどまわりは密林、とかじゃないからまだましか。


 「このペースで行くとどれくらいかかるんだ?」

 「だいたい2時間ちょっとってところかしらね着くのはお昼頃だと思う。」

 「わりと時間はあるな。なら、今日の目標はこんな感じで良いか?」


 1 ミトロセリアで冒険者登録、パーティ結成

 2 宿の確保

 3 戦闘においての連携の確認


 「わかったわ。」

 「そういえばさ、まだ詳しい自己紹介はしてなかったよな。」

 「そうね。なら、カエデからお願いしてもいい?」

 「OK。俺の名前は白井楓。15才の高校生だった。スキルは『』だ。」

 「じゃあ私も。私はアイリア。種族は亜人で、スキルは『風雷ふうらい』。その名の通り風と雷の魔法を自由に使えるようになるの。改めてよろしくね。」

 「ああ。よろしく。」

 「ところで質問なんだけど、なんで過去形?あと『高校生』って?」


 なんか普通に言ってしまったけど、そういえばここって異世界なんだよな。アイリアの質問に答えるにはその事を言わなきゃだけど、良いのかな?ま、いいや。


 「実は、俺は別の世界から来た転生者なんだ。前の世界で死んじゃって、こっちに連れてこられたって感じ。過去形なのは一度死んだからで、『高校生』はその世界の単語の1つで子供が集まって勉強をする『学校』の1つのことなんだ。」

 「なるほど。ちょっと前から異世界人の話はたびたび聞いてたけどあなたがそうなのね。」


 『たびたび聞いてた』から分かるようにこの世界ではもとの世界よりも異世界とかそういう研究が進んでいるらしい。

 この世界においての研究では、この世には3つの世界が存在するらしい。1つはここ。もう一個はおそらくもとの世界のことだろう。


 「つまり、あと一個何かしらの世界があるわけだ。」

 「そうだと考える説はかなり有力とされているわ。4つだという説もあるけどね。」


 へー、なかなかに面白そうな話だな。復讐さえ終わればあとは特にすることもないし、何らかの方法であと1つの未知の世界に行ってみたいものだな。

 そんなとき、誰かに話しかけられた。


 「お兄さん、お姉さん、ミトロセリアまでの道を教えてくれない?」


 そこにいたのは金髪に赤いリボンの付いたカチューシャをつけた、黒のワンピースの女の子だった。

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