第5話 異常者
森から出てアイリアさんと別れた後、ベニアドラの中心部へと戻ってきた。戦利品の熊や蜂を買取業者に買い取ってもらうとなんとか明日の夜までは持ちそうなくらいのお金を得られた。
「さーってと、今夜はどこに泊まろうかな。家なんて無いから最悪野宿とかも考えないとなぁ。」
アイリアさんに宿を聞いておけばよかったと、今さらになって思う。そんなときだった。東の方から大きな爆発音がし、煙が上がっているのが見えた。
「なんだ?火事でもあったのか?とりあえず見に行ってみよう。」
現場はこの町の冒険者ギルドだった。その奥からもくもくと煙が上がり赤々と燃え上がり、建物から冒険者と思われる人々が逃げようと溢れだしてくる。
そんな中、一人だけゆっくりと歩いている人物がいた。明らかにおかしいと思い、冒険者も俺含む野次馬もその人に釘付けになっている。徐々にそのシルエットが見えるにつれて周りの野次馬たちの表情が険しくなっていった。
「貴様、また来おったな!」
冒険者の一人が声をあげる。
「ホーッホッホッホ。ここはなかなかに得られるものが多いからのぉ。また、何度でも来るからの。」
そこにいたのは、緑色の帽子に長い白銀の髪、黄色の服を着た男だった。その顔は
(なんだ?あいつ。ただの異常者ならまだましだが、ギルドを襲うのはヤバイぞ。{たぶん。})
その瞬間、小面の男の姿が目の前で消えた。野次馬全員が?マークを頭に浮かべながら周りを見ていると、男が空から大量の光の玉を撃ってきた!
「「だぁぁぁぁ!!」」
「「ぎゃぁぁぁ!!」」
光の玉は集まった市民の元に降り注ぎあちこちを爆破して彼らを蹂躙する!男が着地して腕を上空にあげると、水色の光が手に集まっていく。
「いやーありがたやありがたや。ここの魂は本当に上質なものじゃなぁ。これでボスも喜ぶわい。」
「ボス?お前ら、魂を集めて何をしようってんだ?」
「ホッホ、お主らが知る必要は無い。」
「知りたいんだよ。どうせ俺ら全員を殺すんだろ?だったら冥土の土産にな。」
「……よかろう。私たちはあらゆる異世界、パラレルワールドを消滅させるのだ!」
その台詞……
俺がそれを思い出すのと体が動くのはほぼ同時のことだった。そのまま男のもとへ突っ込んでいき、魔法剣で切り裂く。……はずだった。
「あれ……?いない。」
男が一瞬のうちに消えた。……これって最初に光の玉が降ったときと同じ!
「伏せろ!」
そう言おうと思って後ろを振り返ると、俺の顔の前で手を光らせてエネルギーのようなものをためている男がいた。
「はっ……!!」
「あっけなかったのぉ。」
その言葉と同時に男から光線が放たれ、俺の顔面を貫いていった。顔に激痛が走ると、全身から力が抜け正面に倒れこむ。
(な……何が起きた?)
「これは私なりのフェイントのようなものじゃ。私は移動系の魔法が得意でな。相手の目の前で消えて背後に周り攻撃する。私の得意技じゃよ。」
そういい残すと、男はどこかへとテレポートした。
『私たちはあらゆる異世界、パラレルワールドを消滅させるのだ!』か。あのじいさんはアトラスが言った言葉とまったく同じことを言った。ということは大方、あいつはアトラスの味方といったところか。まさか、敵はアトラスのみならず複数いる可能性が高いとはな。奴らは全滅させるって決めたんだ。この程度で諦めてたまるかよ。多ければ多いほどやりがいがあるじゃねぇか。
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