第3話 転移

 次に目を覚ますと、俺は知らない場所にいた。いや、あの水晶から見ていた町か?ということは転移は成功したようだ。

 さて、これからアトラスを倒すためにいろいろ準備をするのだが、準備って言っても何をすればいいんだ?とりあえず、まずは装備を手に入れよう。武器屋とかあるのかな?


 それから俺は転移してきた町、『ベニアドラ』を探索した。さすがは異世界って感じでもとの世界にはなかったものがいろいろあってかなり面白かった。

 あと、装備のことだが、武器屋に行くと店主が俺のなかに眠るすさまじい魔力に気づいたらしく、普通の剣とかでは武器が耐えられないということで俺に武器は使えないと言う判断をした。『すさまじい魔力』ってまさに転生者ボーナスみたいだな。

 で、さすがに武器無しはまずいので代わりの手段を教えてくれた。その名も『魔法剣まほうけん』!使用者の魔力をそのまま形にして作り出すもので、その強さは使用者に依存する。これなら俺の大量の魔力にも耐えられるそうだ。


 武器も手に入ったので試しに戦ってみることにした。ベニアドラは東西に長い楕円のような形をしていて、その北部は深い密林になっている。そこに入ってみた。

 森に入って数分歩いていると、目の前に3メートルはあろうかという巨大な熊のような化け物が現れた。……いや、こういうのってダンジョンの中ボスだよな。はじめての戦闘の相手じゃないって!でも、やらなきゃ殺られる。


 ということではじめての戦闘が始まった。早速俺は魔法剣を構える。両手を前に出して、左右に開く。すると右手の方からオレンジ色に輝く剣が出てきた。

 

 「!!」


 剣を正面に構えると、熊は右手で殴りかかってきた。それを察知して後ろに下がり、すぐに前へ出て剣を振り下ろす!


 「!!!!!」

 「よっしゃ!」


 熊の右手が吹っ飛んで、腕を押さえながら熊は後ろに倒れ混んだ。「チャンス!」と思って熊に一気に駆け寄り、首を狙う!熊が立ち上がろうとしていたために首はなんの防御もされていなかった。そして、、


 「!!!………」


 熊は絶命した。と同時にその死体が光になって消滅し、後には熊のものと思われる肉や骨、皮が残されていた。


 「とりあえずは勝てたな。……アトラスもこんな風に単純だったらいいのになぁ。」


 そうぼやきながら戦利品を拾おうとすると……


 「「「GYAAA!!!」」」


 さっきの熊よりも少し大きめの熊がさらに三匹襲いかかってきた!なんとなくだがその顔には怒りの表情が見える。


 「同族の敵討ち……か。その気持ち、わからなくもねぇぜ。」


 だって、今まさに俺がしようとしていることだからな。なんて思っていると、3匹一斉に右腕を俺に向かって振り下ろしてくる!とっさに下がるも、熊を左から順にA、B、Cとすると熊Cが左手で俺を吹っ飛ばす!


 「グハッ……!」


 飛ばされた先には熊Aと熊Bが待ち構えており飛び上がって両手を組んで地面に叩きつける!飛ばされた反動でとっさに動けず、それをもろに食らってしまった。


 (こいつら、連携がとれてる!)


 よろめきながらもなんとか立ち上がるが、全身から力はもう抜けていた。魔力剣も本当にそこにあるのかと疑うくらい透けて消えかかっている。熊3匹がずしずしと足音をたてて迫る。2度目の死を覚悟した。そこでフッと思い出す。


 (スキル……。)


 あれがどんな能力かはわからないが、今こそ使うべき時だ。さぁ、『』の力、見せてくれよ!


 ~無力むりょく【ノーパワー】~


 その台詞が頭の中をよぎった瞬間、同時に口からも出てきた。刹那、熊A、B、Cがそれぞれの左腕を振り下ろした!


 「…………!!」


 熊のパンチは俺の体に直撃した。しかし、それは俺にたいしてなんのダメージも与えていなかったのだ。俺はその一瞬を逃さなかった。謎の現象に熊が怯んだ隙に俺は熊Aの首を狙い、その後熊Aが倒れる。しかし、他の2匹はまだ死んでおらず熊Bが突進してきた!先ほどの攻撃で動きが鈍った俺にそれが直撃、数メートル飛ばされる。


 (なるほど、相手の攻撃を1度完全に無効化、しかしその後は数秒間使えなくなるわけか。まだ無理か。)


 次が使えない俺に熊が近づいてきた。怒りの表情はさらに険しくなっている気がする。


 (The end……だな。)


 スキルを使えない∩剣を振れない俺はなにもできなくなっていた。戦意も喪失しほぼ諦めていたとき、後ろから何か力を感じた。

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