第10話憧れと親友
GK
1:稲津春一
GKとして背は低い。だが的確なコーチングとシュートセーブには定評がある。甘いものが好き。
DF
2:鈴木和也
守備意識の塊のCDF。攻撃意識ゼロ。というか攻撃に繋げる技術を持ち合わせていない。
DF
3:トーマス・イースラー
190㎝を越える長身が武器のアメリカ人センターバック。空中戦にはめっぽう強いが足元に不安が残る。奥さんは日本人で帰化を考えている。
DF
4:新田瞬
俊足の右SB。キャプテン翼のキャラクターと同名だがFWじゃないことを揶揄されているのを非常に気にしている
6:イ・ソンヨン
アジア枠のイケメン韓国人左SB。実力的にはチームでも並みだが、営業的に考えて女性ファンの心を掴んでいる彼を外すわけにはいかない。顔は実は年々バージョンアップしていて比較写真がネットに出回っている。
MF
5:利根亮平
守備力には若干不安があるがロングフィードが巧い。ものごとを決めるときに、天然パーマのアフロヘアを掻くのが癖。子供は4人いて長女が反抗期になって困っている。その原因は自身の天然パーマが遺伝したため。
7:ロドリゴ・
ブラジル出身のテクニカルな日系CMF。守備意識ゼロ。スルーパスを出す前に目を見開く癖がある。
FW
13:柳沢隆行
ユースから1年前に昇格した左WG。90分間動き続けても連戦できそうな運動量が武器。
9:セバスティアン・インザーギ
スカウトがどこからか見つけてきたイタリア人。フィリッポ・インザーギと同姓・同背番号であることを誇りに思っている右WG。性格は本物同様、ストイック。彼の右サイドの突破は戦術上のキー。
10:向島真吾
兄。高くて速くて強くて巧い。
そしてオーナー事案によってレギュラーを奪われかけた男。
8:
日本最速ではないかと言われるMF。その俊足を活かし元センターフォワードだった。裏へスルーパスを出せば大抵は追いつくが、足元の技術が危うく、突破しても決定機はノーゴールとなることが多い。息子二人あり。キャプテン利根に並ぶチームの精神的支柱。ミニチュア・シュナウザーを飼っている。
考え直した。彼らを理解しないことには、理解を得られない。
信頼も同様だ。
それがわかってきたつもりだ。
目標を世界一に設定したところで、その土台が腐敗していてはしょうがない。踏み切り板であるはずのその板は、大吾にとってだけ腐っていて、ジャンプする寸前に壊れるところであった。
人間関係というしがらみはどこにでも存在する。それを拒否したければ、仙人にでもなって山に籠もるしかない。元々は、オーナーの気まぐれによってもたらされた人事だ。巻き込まれたという気がしないでもない。
しかし、早く知っておいて良かったという気もする。人の感情は複雑で、他者に利益をもたらなさい、利己的な人物が好かれるであろうか。ユースまでは、自分の力だけでやってきた気もする。それが通用したのはここまでだったということだ。
『人事割礼』
そうとも言うべきことを知ったのだ。裏を返せば、プレイせずに応援だけするサポーターの気持ちも解っていなかったのかもしれない。
応援するチームを持つということは宗教と同じだとも言われる。
中東では入国するときに信じている宗教をビザに書かなくてはならない。そこに『マンチェスター・ユニオン』と書いたフットボールジャーナリストもいる。言い換えるならば、移籍ばかりするジャーニーマンは、宗教を状況に応じて変更する『不信人者』である。
少なくともそのチームの熱狂的サポーターにとっては……
自分の憧れである、ラファエウ・サリーナスはたびたびチームを移籍してきたはずだ。
どんな感じであったのだろう。寮のベッドの上で寝転んで、ラファエウ・サリーナスの自伝本を読みつつ、iphoneでウィキペディアのアプリを眺めながら大吾はそう思った。
ラファエウは、大吾のアイドルだ。憧れどころか、焦がれてさえいる。幼い頃にWOWOWで見た彼のフィジカルに頼らず、相手を完全に置き去りにし、
振り返れば2010年のバロンドールはメッシではなく、ワールドカップ優勝に大貢献したラファエウ・サリーナスが受賞すべきだった。大吾は自分に投票権があれば、すべてラファエウに投じたであろう。
ヨーロッパ・チャンピオンズリーグで優勝しても、ワールドカップを獲っても、ラファエウはバロンドールを取っていない。つまりは大吾の最終目標は『
あと15年やそこらのプロフットボール人生でそこまでたどり着けるであろうか。
ラファエウ・サリーナス
東京所属
10番
ミッドフィールダー
ブラジル出身・元スペイン代表
幼い頃のアイドルはリバウド。
サントスFCのトップチームに初めて練習に行ったときに『今日はラファエウ・サリーナスという選手が初めてトップチームに来た記念日だ』とまで先輩に言わせた男。
トップチームに正式に加入後は、サントスのマスコット的存在であった。
結局ブラジルでは本当の芽が出ず、2部リーグを転々としたあとスペイン2部へと青田買い移籍し、活躍の結果スペイン1部セビリアへ移籍。
最初はボランチであったが、レギュラーが故障すると一時期その司令塔ポジションを奪い、復帰すると左ウイングへと転向。
そして、ロイヤル・マドリーへと当時の移籍金記録で移籍。
ロイヤル・マドリーでは、当時の監督から『私の望んだ選手ではない』と移籍会見の場で述べられてしまった上に、その小さな体格のせいか干されてしまう。
しかし、監督交代によりグティよりポジションを奪い、センターハーフへと再コンバート。
ブラジル代表ではなく恩を受け、自分を発見してくれたスペインへと帰化し、2010年のワールドカップ優勝に貢献。
親友のスペイン代表ディフェンダー、ダニ・ハルケの死をキッカケに本格的にメンタルを病む。
ざっと調べただけでこれだけ出てくる。
順風満帆なサッカー選手として認知されているが、15歳でデビューを飾ったけれども実は20歳くらいまで完全にレギュラーを取れてはいない。
派手な経歴に、整った顔立ち。
とてもブラジルのスラム街出身とは思えないほどの世界的なスーパースターとして、一般的に認知されている。
大吾にも親友と呼べるディフェンダーがいる。
今年から大吾と同じく、トップチームに上がった秋田所属の
今では180センチを越えているらしい。
らしい、というのは勇也は中学時代に大吾と同じ岡山のユースに入ったが、親の都合で秋田へと転校していったからだ。勇也は今ではU-17代表の
大吾がフリーキックゴールを連発した際に、携帯電話に一番最初に着信履歴を残していた。今ではそんな関係だ。
彼はいずれ、A代表のセンターバック、そして
ラファエウのプレー集を見ていると、あることに気づく。
ゆっくりお散歩しているようにも見えるが、その頭は数限りなく振られている。
そしてボールを持つときはダッシュで駈けより、次にどこへ味方が移動し、どこへパスを出すべきか事前に知っているかのようだ。
いわゆる
トータル・フットボールがオランダからブラジルへと渡って熟成され、スペインで料理されたのがラファエウ・サリーナスだと言われている。
1974年のオランダ代表のトータルフットボールは、攻撃陣も守備をするのが画期的であった。
50年近く経った今でも、サッカーに関わる人々は永遠にトータルフットボールの完璧な答えを探し求めている。
リヌス・ミケルス、そしてヨハン・クライフが亡くなった今、100点の解答用紙を生徒に渡せる名教師はいなくなってしまった。今の教師陣は80点の解答をあれでもか、これでもかと試行錯誤しなければならなくなっただけの存在であるやもしれない。
今現在、名監督と呼ばれる監督たちは、多かれ少なかれトータルフットボールの亜流である。
ここから先、大吾が完全なレギュラーを取るには、30分どころか、その4倍の120分を闘って、なおかつPKまで蹴られるようになることだ。
――とりあえず元チェコ代表、パヴェル・ネドヴェドのように毎朝10キロのランニングをしよう
ネドヴェドの自伝が出ていることを知った大吾はamazonで買おうとしたが、イタリア語版しか出ていないことに愕然とし、初めての給料で伊日辞書を買いイタリア語を勉強することに決めた。
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