9.昔みたいだ
点いたり消えたりを繰り返す蛍光灯の下で
あたしは、子供みたいにぐずぐず泣いた。
秋人は笑って待っている。
昔から、秋人はあたしに優しかった。
意地悪もされたけど。
「可愛い可愛い俺の紗良。」
そう呟いて、秋人はあたしの頬にキスした。
「やめてよっ。」
びっくりして頬を抑えた。
秋人は平気な顔で
「いーじゃん。」
と言う。
真っ赤になっているであろうあたしを見て
笑った。
涙を拭って顔を上げた。
「あきに心配かけないよう気を付ける。」
「あぁ。ホントに頼むから、
もう俺の前からいなくならないでよ。」
秋人の声は真剣で言葉に詰まった。
どういう意味なのか尋ねる勇気はないから、
あたしは曖昧に頷くに留める。
「じゃ、行くか。」
秋人は当然のように
あたしの手をとって歩き出した。
キスをして、手を繋いで
秋人はまるで、十年前に戻ったかのようだ。
「あきと手をつなぐの久しぶりだよ。」
秋人の顔を見上げた。
「そうだっけ。」
秋人にとっては
興味のないことなのかな。
やっぱり、秋人にとって
あたしは恋愛対象外、妹でしかないのかな。
ひとつ年上の秋人。
秋人とあたしは同じ家で
小さい頃から一緒に暮らしてた。
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