5.シズさん!

「紗良ちゃんっ、」




シズさんが、

呆然とするあたしを抱き起こした。




「逃げるよっ」









「シズさん、ごめん。腰が抜けて・・・」








「頑張れ!」




シズさんが騒乱に紛れて

助けに来てくれたのに、




あたしは、なかなか立ち上がれない。






「シズっ。」




賢人の切羽詰まった声が倉庫に響いた。






はっと顔をあげたときには、




シズさんは後ろから

連山の番長に殴られて倒れていた。







カラン、、





番長は棒を手放し、




あたしを後ろから羽交い締めにした。










棒を使って殴るなんてっ!




殴られたシズさんはピクリとも動かない。




「シズさんっ、シズさんっ。離してっ」







その時、






ヒヤリと、冷たいものが首筋に当たった。








「てめえっ。」








「そこまでだ!!桜坂!!」







ゆっくりと視線を下に送ると、





あたしの首に

本物のナイフが突きつけられていた。







「なんのつもりだよ!

 紗良は関係ないだろっ!!




 そいつを巻き込むな!!」








あたしを拘束している番長の手は

小刻みに震えている。




普通じゃない、上ずった声で番長は叫んだ。






「女を離して欲しければ、

 そこに土下座しろ!!」






あたしは、拳を握って俯いた。






「ご、ごめん。秋人。




 あたしがさっさと逃げだしてれば・・・」




声が震える。




「あたしのことは気にしないでさ、

 倒しちゃ、」


「うるさい、黙ってろ。」




秋人はそう言って、


まっすぐにあたしを睨んだ。



全部、あたしのせいだ。



目をつぶった。恐怖でおかしくなりそう。








「てめえら、

絶対に地獄に落としてやる!!」




連山の番長が狂ったように叫んだ。





ちっ、秋人舌打ちが倉庫のなかに響いた。




「土下座したら、

 紗良は離してくれるんだろ。」





ゆっくりと、膝を折った。











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