第7話 豚王①
母さんの粋な計らいによって俺達は街に来ていた。今まで街の方には降りなかったが活気にあふれ、人々が生き生きしている。道の両端に屋台が開かれ魅力的な食材達が並んでおり興味を引かれる物ばかりだ
「初めて来たけど見てるだけで楽しいな」
「なんだかんだで初めてだね!アー君とのお買い物」
「あまり外でイチャつかないでよね」
『ぷるん!』
「皆様、私から離れないでくださいね」
ウェイエアさんの付き添いのもとで、母さんから渡されたメモを頼りに店を巡っていく。一軒目は肉屋でコカトリスのモモ肉を手に入れるのが目的だ
「アー君!魔物の肉沢山あるよ!ドラゴンにシーサーペント!」
「ドラゴン肉・・・・美味しそうね」
「アルテミス、涎拭きな。リディア、ショーケース叩いちゃダメだよ」
「すいません。コカトリスのモモ肉2キロ頂けますか」
「あいよ、2500メリーだ。これからもご贔屓に」
その後も鮮魚店、八百屋、揚げ物屋などと色々な店を巡り初めての街散策を楽しんだ。気づいた時には“簡易詠唱”の事など忘れて心の底から楽しめた
*
「乾燥マンドラゴラ2本っと。これで買い物は完了ッ!」
俺は街の中心にある噴水広場で本日の品を全て確認し終える。時刻は午後16時を回り陽が傾き初めていた
「あ〜楽しかった〜アルテミスちゃんのお洋服選び楽しかった〜」
「選ぶの手伝ってくれてありがと・・・・リディア」
「また一緒にショッピングしたいね〜」
「ええ!」
リディアとアルテミスも以前より親密度が上がってるようで良かった。流石に食後のデザート取り合いはやめてほしい
「アー君もっ楽しかった?」
「リディアと一緒にショッピングできて凄く楽しかった!」
「いつものアー君だ」
「どういうこと?」
「ん〜♪な〜いしょっ!にしし」
リディアが笑うと自然と俺の口角も上がってくる。リディアはこんな俺の側に居てくれてるんだ。こんな時間がずっと続けば良いのに
プオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!
そう思った瞬間、茜色に染まった夕空に警報音が鳴り響き街の入り口の方から轟音と地響きが起きる
「なんだ⁉︎」
「アー君!」
「アーサー!何よこれ!」
「皆様、私から離れないでください!」
『ブルブルブル』
「ルネ・・・・大丈夫だ」
小刻みに震えるルネを抱きしめ落ち着かせる・・・・ルネは何かに怯えているのか?その瞬間、リディアが鬼気迫った顔で突然叫んだ
「みんなにげて!!!!!!!!!!!」
「ッ‼︎」
ウェイエアさんに抱えられその場から離れた直後に噴水が爆発した!爆風で吹き飛ばされ地面をバウンドしたが、直ぐに立て直し噴水の方を見る
「ウィィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイッ‼︎」
そこには体長5mはある巨漢の魔物が立っていた。その立ち姿には威厳があり、溢れ出る魔力がソイツの強さを嫌と言うほど知らしめてくる。
魔力量からしてルネより5倍はあろうか、魔力出力は下手すれば俺の50倍はある・・・・細胞一つ一つがヤツに恐怖し言う事を聞かない
「オーク・・・・しかも、上位個体の
「は、はい!いくぞリディア、アルテミス!」
「うん!」「ええ!」
俺はリディアとアルテミスを両脇に抱え全力疾走する。街の人は警報の時に全員逃げているみたいだな・・・・クソっ!タイミングをずらしての避難は悪手だったか
「ウェイエアさん・・・」
「大丈夫だ。ウェイエアさんなら上手くやるはずだ」
後方ではウェイエアさんと豚王の戦闘が始まっているのかさっきから轟音と莫大な魔力の奔流そして、禍々しい殺気が止めどなく溢れている
「もう少しで」
「アー君ッ右に避けて!」
「え!?」
リディアの叫びと共に右に大きく跳躍すると横を何かが高速で横切る。そのナニカは地面をバウンドし続け、どんつきの家に衝突し砂埃が立つ
「まさか」
横切ったのは一瞬だったが、魔力の感じからして最悪の事態が脳裏をよぎる。俺は家に衝突したナニカを見るとそれはウェイエアさんだった
「あ・・・・・嗚呼」
「「・・・・」」
「ウェイエアさん!」
ウェイエアさんに駆け寄り息を確認するが問題なく息をしていたが、体は足が向いてはいけない方向を向いたりしていた。腹から込み上げてくるがそれを無理矢理戻す
「坊っちゃま・・・・おに・・・げ」
「ウェイエアさん血の色が・・・・・青い」
「お気に・・・・なさらないで・・・・下さい。私はうっ!ホムンクルスなので問題ありません。5分もすれば歩ける様にはなります」
「良かった・・・・」
どうすれば全員助ける事ができる?最小限の犠牲で済む様にするのは?母さん達が到着するまでどれくらい掛る?それ以前に街人が屋敷に着くまでどれくらいかかる?自警団や騎士団が出てこないのは何故だ?自警団の人達がやられたのか?
「リディア、アルテミス、ルネ」
「なにアー君」
「ウェイエアさんを連れて逃げろ」
「坊っちゃま・・・・なりません」
「そうよ!アーサー死ぬわよ!」
「そうだよアー君!」
『ぷるん!』
だよな・・・・そう来るよな。でも、ごめん
「此処で全員揃って逃げても追い付かれて殺される。なら、
リディア達の静止の叫びを振り切り豚王の元に向かう。途中、民家の中に飛び込みガラスの割れる音で気を引く
「ウィィィィィィィィィイイイイイイ」
咆哮を上げた瞬間、奴の棍棒が振るわれ隠れていた民家の壁がウエハースのように崩れ去る
「ぐッ!くそッ壁ごと壊す奴がいるかよ⁉︎三匹の子豚ではレンガの家は壊れないのに!」
「ブヒョヒョww」
「なぁに笑ってんだ豚ぁ!とんかつにして喰ってやるよ」
あ〜逃げてぇ。怖い怖い怖い・・・・・でも、アイツらが死ぬのはもっと怖い。ホムスさんごめんなさい・・・・再開する前に俺死ぬかもしれない。ごめん、母さん父さん親不孝もので
「死んだらまた、お願いしますよペルセポネーさん」
覚悟は決まった・・・・俺だけで15分保たせる!
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