第3.5話


 【蜃気楼の白布ミラージュ・ヴェール】を使用し強化倍率1.5倍のゴーレムを倒してから4ヶ月が経った。魔力の操作もかなり上達し燃費もかなり良くなってきたと自負している!なんと言っても前までは一日一回しか使えなかった【蜃気楼の白布】も一日三回は使える様になれた。


『この世界の家電の仕組みも学べた。まさか、錬金術が大きく関わっているとは思わなかったな』


 この世界の家電は“魔石”の魔力を電力に変換して家電を動かしているみたいだ。仕組みも学ぼうとしたが珍紛漢紛だった・・・・それもそのはず、魔力を電力に変換するためには高度な錬金術で製造されたパーツが必要になるからだ。


「我、汝に命ずる 古からの姿を今、変え 我、望む力を帯びたまえ 【付与エンチャント】」


 魔法陣の描かれた紙に置かれた石が輝き出し光の粒子になり下に置かれたスローイングナイフに吸い込まれていく。


「どうですかホムスさん?」

「確認いたしますね。 今此処に 彼の者を見定める力を【鑑定】」


 うっすらと光るモノクルを用いてホムスさんがナイフを観察する。モノクルには対象の状態や名称を見破る為の【鑑定】と呼ばれる能力が付与しているらしい


「少し粗が目立ちますが問題ありません。これならば勝手に【炸裂】が発動する心配もないでしょう」

「よかった〜」

「それにしても坊っちゃまは【付与術】もモノにするとは御見逸れしました」

「頭を下げないでくださいよ!此処迄来れたのはホムスさんが熱心に教えたくれたからであって!」

「冗談です。私も坊っちゃまに教えているとつい熱が入ってしまいますから。私めに出来る事があればなんなりとお申し付けください。このホムス全能力を以て坊っちゃまのお役に立ってご覧に入れましょう」


 ホムスさんは仰々しく頭を下げたので俺は椅子から降りホムスさんにハグをする


「ありがとうございます。呉々も無理はしないでくださいよ。ホムスさんも僕の大切な家族なんですから」

「有難き御言葉、恐悦至極に存じます。では、私も失礼して」


 ホムスさんも抱きしめ返してくれる。身長差がありすぎるせいかホムスさんが膝立ちになる形ではあるが


「アーサーちゃん、いる・・・・あらあらまあまあ!本当にあなた達は仲が良いのね〜お母さん眼福だわ〜♪」

「ふふん〜良いでしょ〜」

「羨ましいわ〜お母さんもぎゅーして〜♪」

「ロザリア様まで!」


 母さんまでハグに混ざってしまいかなり過密になったが悪くない気分だった


「そう言えば母さんが書斎に来るなんて珍しいね」

「あっ忘れるところだった!お父さん迎えにいくよ」

「私もお供します」

「今回は私とアーサーちゃんだけで十分だから、ホムスは休んでて」

「御意に」


 まぁ、母さんは現役バリバリの時はめっちゃ強かったって本人が言ってたし、最年長執事のセバスさんもめっちゃ強いって言ってたし大丈夫でしょ。てか、ハグしながらする会話かな?



 その日の午後7時に屋敷を出発し、母さんに背負われながら移動する事30分ほどで母さんと父さんの待ち合わせ場所に着いた。結構高さがあり直感でビル10階分はあるのかもしれない


「我、求めるは 導を照らす光 【光球】」

「アーサーちゃんは魔法が上手ね〜お母さんなんか大人になっても魔法が使えないから羨ましいわ〜」

「そう?僕なんかまだまだだよ」

「う〜ん、そうかしら?同年代の子達と比べれば特出してるし、“神童”と呼ばれてる子達の魔法と比べても頭2つくらい抜けてるわよ?」

「うんん。ホムスさん達に熱心に教えて貰ってるのに【簡易詠唱】も使えないし、魔力操作も粗い僕なんてまだまだだよ」

「そう・・・・・・十分だと思うけど」

「?」


 母さんが何かぼやいてた気がするが聞き取れなかったな。でも、今の俺が使えるのは”完全詠唱“と完全詠唱から不必要な詠唱を省いた”抜粋詠唱“だけだ、その上位互換である魔法の名称だけを言う”簡易詠唱“と自身の知識とイメージだけで魔法を放つ”無詠唱“


 無詠唱は使えなくても良いが簡易詠唱だけでも使える様にしたい。詠唱は長い物ほど強力だがその分時間を喰われ、尚且つ相手に使う魔法がバレ不利になる。人語が通じない魔物相手なら良いが、人語が通じる相手にとって詠唱は、ボクサーが試合中に「右ストレート行きます!」と言って右ストレートを放つに等しい。

 

「そうだぞアーサー。アーサーと同レベに魔法が使える子供なんかいないからもっと誇れ!」

「ひやあああああああああああああああああああ!!!!!!!」

「エッ⁉︎そんな驚くか⁉︎」

「父さん突然現れないでよ!心臓が止まるかと思ったじゃん!」

「いや〜ごめんごめん」


 ああああああああああびっくりしたあぁぁぁぁぁぁ


「腹減ったなーさっさと帰ろうぜ」

「そうね、私たちもお腹へったし帰りましょ。アーサーちゃんちゃんと捕まってね」

「う、うん」


 俺は嫌な予感を感じながら母さんの背中にくっつくと母さん達は助走を付けて岩から飛び降りた・・・・・その日の夕飯はいつもより美味しく感じた





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る