第3話
なんだかんだで、アーサーは5歳になった。これ迄のアーサーは災難続きであったありとあらゆる病気に罹り何度も生死の境を彷徨い、一時期はペルセポネーが見え掛けてることもあったが、無事に今日まで生き残る事ができた。
そんな怒涛の幼児期を乗り越えたアーサーも読み書きや意思の疎通をそつなくこなせる様になった。文字が読めるということはこの世界の本が読めることの証明。アーサーはホムス同伴の元で書斎に入り世界の事や魔法について学ぶ事にした。
だが、今回はロザリア、ホムス同伴で庭に出向き戦闘訓練を積んでいる。
戦闘相手はアーサーと同じ背丈に造られた戦闘用ゴーレム。ゴーレムの強さは現時点のアーサーの1.5倍程度の強さに設定されており強過ぎず弱過ぎずの適正レベル
「今、我に集いて力となり 彼の者を妨げる凍星となれ【極冠】」
詠唱が終了するのと同時に地面に触れる。すると瞬く間に一直線に地面が凍結しゴーレムの足を地面に固定する。アーサーが唱えた魔法は【水極性魔法】の応用である【凍結魔法】。
(よし!固定出来た。畳み掛けるなら今しかない!)
アーサーは細身の細剣を抜きゴーレムに切り掛かる
「grrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!!」
だが、奇怪な叫び声をあげゴーレムは固定された左脚を自切、瞬時に修復を行い、動く様になった左脚でアーサーに上段蹴りを放つ。咄嗟に蹴りを柄で防ぐがアーサーの体は埃の様に吹き飛ばされる
「くッ‼︎」
着地したその刹那、瞬時に肉薄したゴーレムの右フックが炸裂し再び地面を転がる。
だが、アーサーも遊んでいた訳ではない4歳からの特訓で叩き込まれた受け身でことなきを得るが、右フックによって生じた3秒程度の隙をすぐに取り戻そうとするが、ゴーレムは崩れた体勢を整わせまいと追撃を掛ける
「ほらほら、気を抜かない!倒せなければ模擬戦は終わりにしないわよ!」
(チッ!マジかよ。50分近く闘いっぱなんだぞ⁉︎)
内心舌打ちと悪態を吐きながらもゴーレムの連撃の隙を窺うが見えず体勢を立て直す暇すらも与えて貰えず、アーサーはいつ負けてもおかしくない状況に置かれている
(この状況をひっくり返すには・・・“無詠唱”くらいしか)
“無詠唱”それは魔法戦闘の極地であり、魔術士ならば誰もが目指す最高到達点。上位の魔法職や戦闘職の人間は息をする様に使用するが、死ぬ迄に“無詠唱”を可能にする人物は世界人口の0.01%にも満たないと言われている
「奥様・・・・止めて差し上げた方が」
「止めないで。今ここで止めてしまったらアーサーは成長できなくなってしまうわ」
「Rryryryryryryryryryry!!」
ゴーレムの高速の連撃をアーサーは間一髪で回避しながら
必死に脳裏に術式を思い描く
「痛ッ!チッ汝、彼の者を惑わす霧」
ゴーレムの拳が頬を掠め地面を叩き轟音と共に砂埃が立ち込める
「gry⁉︎」
「汝、導を隠す
埃が晴れた瞬間、ゴーレムの目の前にはアーサーの姿が無く驚愕の声を上げる
「汝、心なき白の樹海」
「⁉︎」
詠唱のを唱えながら突如、横から現れたアーサーに驚きつつも、ゴーレムは咄嗟に防御体勢を取り、組まれた両腕の中心にアーサーの殴撃が炸裂する。
完全に防がれた。
ゴーレムは勝利を確信した様な唸り声を上げ蹴りを入れるが、目の前のアーサーは白い煙となって消えた。ゴーレムが後ろを振り返った瞬間、鳩尾に一本の細剣が貫通していた
「【
ゴーレムは心臓の位置にあるコアを破壊された影響で元の土に戻り、魔力を大量消費したアーサーはその場にへたり込む
「アーーーーーーーーーキッツかった!」
「お疲れ様アーサーちゃん!よくやったわね〜よしよし」
「お疲れ様です坊っちゃま」
「へへへ、ありがとう。母さんロザリアさん」
アーサーはロザリアに背負われ屋敷に戻って行く
「そう言えばアーサーちゃんは、いつ【幻影魔法】を習得したの?」
「ホムスさんに魔導書を読んで貰ってそれで覚えたんだよ」
「ホムス・・・・GJよ!」
「勿体なきお言葉。ありがとうございます」
*
時刻は昼を少し過ぎ、昼食とシャワーを済ませた俺はすこぶる快調!なのだが、俺はかつて無い程の危機に見舞われている・・・・俺の手中のカードはジョーカーとスペードの1
正面から伸びる手は無慈悲にもスペードを引き抜く
「やったー!私の勝ち!」
「リディア、ババ抜き強すぎだよ〜」
「だって、アー君すぐ顔にでるからわかりやすいんだもん」
俺の目の前で笑っているのは幼馴染のリディアだ。ボブカットの黒髪と側頭部から真紅の角が左右に生えている魔族の女の子だ。
3歳頃に許婚として紹介され、そこからは月に1〜2回我が家に遊びに来ている。母さん曰く、父さんの古い友人の娘さんであり由緒正しい家の出なのだとか。俺と遊んでるって事は一つ上の公爵か一つ下の伯爵位だろうか?
「リディア、次何して遊ぶ?」
「アー君ちの書斎にある本読みたいな」
「魔導書と兵法書くらいしか無いけど良いの?」
「いいの。速く行こ!」
「うん!」
リディアは自分のやりたいことをし終えると、俺のすきな事を優先してくれる。俺は転生してからというものの娯楽の少なさに絶望し、気付けば特訓と読書が趣味になっていたくらいに娯楽がない。
「リディア、僕のやりたいことに付き合うの楽しい?」
「ん?楽しいよ。アー君といっしょに何かするのが楽しいから、いいの」
「それなら良いんだけど。つまんなくなったら言ってね」
「・・・・・・・そういうところだよ」
「なんか言った?」
「いや!なんでもないよ」
その後はリディアと書斎の本を二人で日が暮れるまで読み続けた。まあ、リディアは途中で寝ちゃったけど・・・俺はリディアの可愛い寝顔を見るのが好きだ
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