氷造形→氷凝縮→氷破壊→完成!!
屋敷の裏にあるトイレではない方の小屋へと向かう。
そこにあるのはもちろん、風呂だ。
寒いから動いてもほとんど汗をかかないし、頼めばエメーラが浄化魔法をかけてくれると言っていた。
もちろんそれはありがたいことなのだが、せっかく設備があることなのだし試してみて悪いことはないだろう。
やることは簡単である。その辺の氷をバスタブの中にぶち込んで、それをスキルで溶かす。それだけ。
急にやると、冷めた状態からいきなり熱くなってバスタブにヒビが入ったりしてしまわないかと心配だったが、そんなことは全くなかった。
陶器製?のような見た目で、何の石で作られているのかははよくわからなかったが、ほとんど新品に見えるきれいなバスタブは熱変化にも強そうだった。
そして問題は、小屋自体の寒さである。ちょっと湯を熱くするだけでこの湯気がもうもうと立ち込めた。
俺はスキルがあるから問題はないけど、あのエルフたちは3分もここでバスタブに使っていたら胸から上が凍えてしまう。
頻繁に湯の中に潜るという方法もあるかもしれないけれど。
とにかく湯から出た部分が寒いことには変わりなく、そこまでしないといけないのならば入らない方がましだろう。
俺は小屋を出た。
そして雪に意識を集中させる。
『さて、どこまで思い通りにできるかな』
――氷造形!
俺が念じると、雪は反応して動き始めた。
左手で文字を書こうとしているかのようなぎこちなさはあるが、何とか雪を自分の思う通りに動かすことができている。
地面から、まずは上に積み上げてみる。
ズズズズズ……
雪同士が擦れるかのような奇妙な音とともに、狙い通りの形をつくることができた。
自分の二倍くらいの背丈がある、巨大な円柱。イメージしたのは、あのでかいたけのこ氷だ。
しかしたけのこ型にはせず、あくまで太い円柱に仕上げる。
高さもまぁまぁだが、太さはそれ以上だ。
材料となる雪は地面にいくらでもある。しかし量が量なので、さすがに円柱の周りは、雪の下に隠れた土が若干顔をのぞかせていた。
それを今度は固めてみる。
――氷凝縮!
自然に、突き出した手を握っていた。
スキルの扱い方は人それぞれだというが、体でスキルをイメージしながら発動させる人もいるという。
自分がそのタイプなのかは分からないが、手を動かすとスキルで望む形を思い描きやすいと感じた。
慣れるまでは、体を動かしながら感覚を掴むのはありかもしれない。
氷の円柱に意識を集中し、見えない大きな手で内側へと力を加えるイメージだ。
圧縮し、雪からイメージされるやわやわな円柱ではなくて、カチカチのものにする。
するとまたズズズと軋むような音がして、円柱はややスリムになった。
『よし』
はぁはぁと息が切れた。まだ慣れていないせいかもしれないが、圧縮はそれなりに神経をつかった。魔力の消費が心配になり確かめてみる。
――ステータスオープン。
『魔力:2180/4431』
『うわぁ……』
魔力の消費よりも、最大値の増加にちょっとひいてしまう。
ホッキョクに来る前なんて100に届かないくらいだったのに、どこまで増えるんだろうか。
正直嬉しさより、異常な数値の上がり方に対する困惑の方が勝っている。
まぁ魔力切れの心配は今のところなさそうだと考え、意識を目の前に戻す。
凝縮した氷の柱を軽く叩いてみる。
がっしりとした感触だった。
壁に触れているような、力をしっかりと跳ね返す感じがする。
「ははっ」
いい感じだ。
だが、ここで終わるなんてことはしない。
せっかくやり始めたのだから、最後まで仕上げてしまおう。
――氷破壊!
巨大たけのこ氷のときとは違って、この作業は慎重を要する。全部壊してはこれまでの作業が水の泡だ。
慎重に、そおっと。
これまた氷凝縮と同じで、集中力が求められる作業になった。ちょっとでも雑にやると、有り余る魔力で全部ぶっ壊してしまいそうになるのだ。
自分のイメージと、実際に崩れる部分を確認しながら慎重に壊していく。
だがあまりにも慎重にやり過ぎては時間かかりすぎるので、大胆さも併せ持ちつつ進めていく。
慎重に、大胆に、慎重に、大胆に……。
『よし! できた!』
我ながら辛抱強くやれたと思う。
そして最後にもう一度、氷凝縮を今度は内側からかけたら。
『完成だ……!』
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