歓声
出来上がったのは、氷のドーム。
「うん、いいんじゃないか?」
中も、見た目以上にスペースがある。さすがに隣の小屋くらいとまではいかないが、これなら十分に目的は果たせるだろう。
俺は氷のドームを出て、小屋の扉を開ける。目当てはもちろんバスタブだ。
さてどうやって動かすかとステータスを確認すると、面白そうなスキルが開放されていたので、それを発動してみる。
――氷ゴーレム!
小屋の周りにある雪に意識を向けると、ぐにゃぐにゃとそれが固まって、自分の腰ぐらいの高さの小さな
『うーむ。ゴーレムというか、ちょっと雪だるまっぽいな……』
ゴーレムはこちらを見上げて、どうやら指示を待っている。
「このバスタブを、こっちのドームの中に移してくれ」
俺が身振り手振りつきで命じると、魔力を帯びた
『おっ。ちゃんとやって欲しいことは理解してるっぽいな。でも、その体で大丈夫なのか……?』
と心配したら、思ったとおりだった。
一生懸命うごかそうとしているものの、バスタブは全く動いていない。
『ああ、そうか。一人にやらせるのがいけないんだ』
――氷ゴーレム!
小屋の外に、次々とちびっこゴーレムが出現する。
その数5体。
ゴーレムたちは俺の意図を把握しているらしく、迷うことなく小屋の中に入っていった。
「おー、いい感じ!」
今度はうまくいった。ちびっこゴーレム6体はバスタブを取り囲み、よいしょよいしょとそれをドームに運び込む。
「ありがとう!
ついでにこのバスタブの中に、そこらへんの雪を入れてくれるかな」
俺が指示をし見本をみせると、ゴーレムたちはせっせせっせと雪を入れてくれた。
みるみるうちに、バスタブが雪で山盛りになる。
「あ、もう大丈夫! お疲れ様、助かったよ」
俺がスキルを解くと、ゴーレムはその場に崩れ、ただの雪に戻った。
「便利なスキルだな~」
俺は上機嫌で鼻歌まで歌いながら、バスタブにできた雪の山に手を突っ込む。
――放熱
氷はどろどろと溶ける。
そして水になったかと思うと、ぽやぽやと湯気をあげはじめた。
『まだまだ!』
残らず雪を解かすと、ドームの中は、俺のスキルによって沸かされた蒸気によってむんむんしてきた。
念のためドームの壁に触れる。
かなりの蒸気がたまっているはずだが、とける様子はない。
魔法石の採掘の時、魔力石が埋まったたけのこ氷はフレアの火をくらってもまったく溶けていなかった。
あの様子から考えると、おそらく魔力を多く含んだ氷は、熱でも衝撃でもそう簡単には崩れないのだろう。
だから氷凝縮でばちばちにかためておけば、耐熱性&断熱性ばっちりの氷風呂ドームが出来上がるというわけだ。
俺が上機嫌で、出来上がった氷風呂ドームの強固な壁をぱんぱん叩いていると。
「あれ! 何かできてるぞ!!」
「なんですか、これは!」
外から歓声が聞こえてきた。
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