第20話 続・ダンジョン

 ダンジョンの中で、キースに結界を張ってもらっているから、安心して3人の倒していく魔物たちのドロップ品を、ひたすら拾っていくことを継続中。


 ドロップ品は、肉が多くてとてもありがたい。素材は、皮や羽、爪や謎の瓶などなど…結構溜まったなぁ。

 

 嬉々ききとして、魔法を繰り出し続ける3人。


「まさか、この世界のダンジョンは魔法以外では魔物を倒せないなんてねぇ」


 わたしも、水魔法が使えるようになったから少しばかり戦えてます。

 魔法と冒険の世界の雰囲気を味わえてて、良き!


 でも…。最初に買った刀は、冒険者っぽく見えるためのポーズのためだったとはいえ、本当不要だったな。何故、ギルドの中の冒険者は持っているんだろう??


 と、ふと気配を感じて顔を上げる。

「はぁ?!」

 魚!!


 魚が二足歩行で走ってくるんですが!ここ、陸ですけどっ?!

 巨大マグロサイズのが。しかもたくさん。おぃ、マジですか。ビジュアルが個人的に受け付けないやつですよっ。気持ち悪っ!


「ウォーターガン!!」

 狙いを定めて「バーン!」と声と共に打つ。けれど狙いは外れた。


「くそぅ。ちょこまかとっ。

 目は横なのに、なぜけることが出来るのかね?!なんかムカつく。闘志がいちゃうねっ!」


「「「ウズキ!!」」」


 声をかけてくれるみんな。それぞれ大軍を相手にしている最中。


「大丈夫ー!結界してもらってるし、なんでか腹立つから、自分で倒すっ!」


 みんなの仲間って自信を持って言える自分になるっ!

 そのためにも、このキモい二足歩行の魚たちを倒すんだっ!!


 手を伸ばす。手のひらまでビシッと。

 そしてイメージ。わたしの腕がそのまま武器となる!


「ウォーターカッター!!」


 えーい!と、腕を右から左へ。ぶんっ!と振る。そして、左に振り切った腕を、すぐさま右下方向へ振りきる!

 するどい水が飛び出ていく。刀のように。よしっ!イメージ通り!あとは威力はどうだ?!


 腕を振り切り、そして戻す!念のため、そこまでやったのが良かったのか。バタバタと倒れる二足歩行のデカいマグロたち。ジュワっと煙が出た後には…


「マグロ?!」


 ドロップ品、マグロ?!え?鮭に、アジ?魚…嬉しい。これは倒そう。あと…これは骨か。麻袋もいっぱい落ちてる。なんだろ?と思ったらうろこだった。


 魚に歓喜かんき!この世界で魚にご対面!みんな、食べられるかな?

 ワクワクしながら、回収作業しようとしたら


「よくやった。さすが我が誓った主人だな」

 とキースが。

「ウズキ!カッコよかったわよー!」

 とパールが。

「やるじゃん!俺も負けてらんねーな!」

 とリンが。

 

 楽しそうに、嬉しそうに褒めてくれる。

「みんな、ありがとー!!」


 ドロップ品をせっせと回収。みんなで食べようねー!…草食のリンは食べられるかな?どうだろう??


 そんなみんなは、恐竜や蛇とバトル中。


「あ、飛んでるの増えてる。あのビジュアルは…少しペンギンに似てるね」


 翼がなさそうなのに飛べる謎。色はピンク。デカい魔物が多い中、ペンギンは普通サイズというか。なんというか。

 ロケットみたいに突っ込んでくる。ガーリーな色なのに、メンタル強いなぁ。キースに突っ込んでいくなんて。


 ドラゴンブレスをゴーーーーーッと広範囲に吐くキース。あっという間にやられるピンクペンギン。


 ちなみにペンギンのドロップ品は、皮でした。さすがに肉はない。

 ピンクとはいえ、なんとなくビジュアルが、ペンギンだもの。肉が出ても食べにくいから、出なくてよかったです。


 みんな変わらず楽しそうに戦いつつ、たまに出てくる二足歩行のマグロは、なぜかわたしに向かって来るから(わたしが一番弱いから、当然かもしれないけど)

 ウォーターカッターで戦う。ブリもゲット!


「みんな、ご飯大丈夫??」

 声をかけてみると、

「腹減ったー」とリンが言う。


 大木たいぼくカラフル蛇と戦う手は休めない。

「そうだな、あの辺りで食事にしよう」

「わたしも、お腹すいたわ」

 キースとパールも同意見。


 もちろん、2人も戦いながら、普通に返事をしてくる。最強と言われる黒龍とフェンリルは、いつもと変わらないトーンの返答。

 戦っている最中とは思えない。さすが。


「…あの辺って、どの辺??」

 思わず聞き返す。

 あの辺りもなにも、どこにいても魔物はこれでもかっ!ってほどに湧き出て来るのに大丈夫なんだろうか?


 聞いてみたら、キースとパールが

「結界を張るから平気だ」

「こんなのいつもの事よ」


 …もうこの世界のダンジョンって、結界張れる規格外きかくがいの誰かがいないと、無理じゃない?

 それとも、わりとみんなナチュラルにできるのかしら?すごいな、異世界。

 みんなが倒しまくった魔物のドロップ品を拾いながら、なんとか合流する。


「みんな、お疲れ様ー!強いねぇ!!」


 人型になったみんなに声をかける。わたしのテンションは高めです。

「ウズキも強いわ!すごいわっ」

 とパールが、ハグしてくれた。褒められて、照れくさい。だけど嬉しい。

 キースも笑顔で頭をポンポンしてくれて、リンも「やるじゃんか」と笑ってる。

 胸がぽわぽわします。幸せ。


 …ただ、キースたちが張ってくれてる結界に

「ギャー」

「グォォー」

 とか耳障りな鳴き声で、さらに結界にガンガン突進しては攻撃してくる魔物たちがね。

 雰囲気をぶち壊してくれる。全くもう。


「さて。ご飯にしようねー」

 いつも通り、テーブル出してフライパンセット。


 せっかくだから、ドロップした肉を焼いてみようかな?ゴソゴソしてたら、ダチョウもどきが。まるまると存在感ありますね。さぁ、美味しくなってください。


 よく「ダンジョン産の方が美味しい」って描いてあったのは本当かしら?楽しみ。赤が濃い。美味しそう。


 肉を焼きながら

「少し時間がかかるから焼き野菜食べる?」

と、リンに聞いてみた。


 朝、焼いてタッパーもどきに入れていたままのを取り出すと

「食う!」

 と、がっついている。

 そりゃあれだけ続けて魔法してたら、お腹空くよね。


 キースとパールにもダチョウ肉を。

 麦ご飯と一緒に食べるのはどうだろうか?と思って、ご飯をよそって一緒に出す。


「いつも通り、ウズキのご飯は美味しいわー」

「これは、いつものおむすびとは違うな」


 パールもキースも、笑顔で食べてくれる。麦ご飯も、気に入ってくれた様子で食べすすめてる。

 自分の好きなもの、気に入ってくれるって、なんとも言えない嬉しさがあるよね。うんうん。


 リンも麦ご飯に興味津々「どうぞー」とあげたら、麦ご飯の上に焼き野菜をのせて食べてる。

 …野菜にレパートリーが欲しい。調味料、くそぅ。欲しいなぁ。


 今は、みんなが「美味しい!」と食べてくれるのが幸せだけど、わたしの課題だな。


 ダチョウを次々焼いて、野菜スープも出来上がった。

 野菜スープ好評。安定の塩味ですよ。

 リンには、茹でたとうもろこしも渡す。リンの好物!ほんと美味しそうに食べるなぁ。


「ウズキも食べろ」

 と、キースから言われる。ダチョウ肉を、あーん、とされてパクッといただく。

 うわ!美味しい。

 わたしも作りながら自分のお肉を、麦ご飯の上にのせて食べる。


「ダチョウ美味しいんだね。ほどよい噛みごたえと、ジュワッと肉汁も。肉とご飯のコンビは最高だねぇ」

 わたしも自分が思っていたより疲れていたらしく、ペロリと食べてしまっていた。


 さぁ、みんなのために、まだまだ肉を焼こう。残ればアイテムボックスに入れればいいしね。

 

 相変わらず、結界の外はうるさい。体当たりがひどい。ドンドンぶつかってきてうるさいけれど。

 結界の中は、和やかだ。


「ねぇねぇ、ダンジョンって宝箱ないのかな?」


 気になっていることを聞いてみる。あれば欲しい。冒険もののテッパンだもの!テンション上がるでしょー!


「あるぞ。欲しいのか?」

 キース!!そんなサラッと!!!


「あるの?欲しい、欲しい!」

 と熱く伝えると、食事の手を止めて

「あったわよ?」

「俺も見た」

 パールとリンもサラッと続けて言う。


 なんだって?!全員、まさかの宝箱スルー???


 …ああ、みんな魔法を思う存分、これでもかって使えることが楽しいのね。

 わたしもそれ見るの楽しいけど、宝箱も欲しいのよ…。

 ちょっとシュン。


 すると、その姿を見たパールが不憫ふびんに思ったのか。

 フェンリル姿になり

「ちょっと待っててねー」

 と飛び出して行った。


 え?パール!?と思ってたら、すぐに戻って来る。

 そして宝箱をくわえている。え?!そんなに近くにあったの??


 宝箱あるあるのダミーとか罠とかあるのかも確認したら(わたしだけ鑑定スキルないからさ…)不思議な顔をされた。


「宝箱に、罠なんてねーよ」

 リンが言う。ちょっとだけ呆れてる。


 …そうなのか。じゃあ、わたしが見つけて開けるのも大丈夫ってことだね。安心、安心。

 パールが持ってきてくれた宝箱をパカっと開ける。


「わぁ!綺麗だねー!」


 中には宝石。これは分かるよ、ダイヤモンドとルビーと真珠。

 あとは、カバンと石。…石とは?不思議に思って持ち上げる。


「普通の石っぽいけど…まぁ、今は分からずとも宝箱にあったから、持っていよう!」

 そのままアイテムボックスに収納する。


 喜ぶわたしを見て3人とも、見つけたら取ってくれるって約束してくれた。

「ありがとうー!嬉しい。よろしくお願いします」

 ペコリとお辞儀じぎ

 

 …ドスンッッ!!

 わ!なんかぶつかってきた。今度は大きな音!なんだ?と振り返る。


「牛だ!牛だよ!お肉ドロップしないかな?欲しいーっ」

 思わず大声出ちゃった。


 キースが「欲しいのか?」と腕を上から下に振る。

 バリバリッッと雷魔法が落ちる。牛はそのまま倒れて、ジュワっと消えていく。魔法一撃。すごいわぁ…あ、ドロップ品は皮。

 

 ちなみに他にへばりついてた魔物たちも全部まとめて倒してくれて。ドロップ品の山になってる。…拾わなきゃね。


「肉ではなかったな。あちらに気配がするから、行ってこよう。ウズキ、また後で。食事うまかったぞ」


 おでこにチュ。そして黒龍姿になって飛んで行った。

 

 …おでこにチュ?

 

「どこの王子様だよーーー!!!」

 恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい!!


 真っ赤になっている自覚ある。顔が熱い。

 両手を頬につけて、きゃーってなってる。こういうの免疫ないんだってば!

 パールもリンもいるんだぞ!いや、そういう誰もいないなら良いとかではなくっ!


「わたしも行こうかしら、ウズキの結界もう一度、張り直しておくわね」

「俺も食後の運動だぜっ!宝箱も任せとけ」


 全く気にしてない、パールとリン。

 …うん、そうね。それくらいなのかもしれないね。


 2人を見送り、あちこちでまた魔法が飛び交う。みんな、かっこいい。ドロップ品がドンドン落ちてる。

 わたしも、ドロップ品拾いを頑張ろう!


 てか!なにかに没頭ぼっとうしてないと、恥ずかしいが勝っちゃうわ!キース手慣れてるなっ!!


 魚!見た目はアレだけど、今はかかってこーい!!


 

 

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