第19話 ダンジョン

 「おはよう…」

 眩しくて目が覚めて、キースの翼に包まれていることに気付く。

 あ、そうだよ、今日からダンジョン。


 「起きたか?」キースの声が聞こえた。どうやらわたしが一番最後に起きたらしい。

 リンはお腹が空いたらしく、草を食べに行ったって。成長期なんだろうか??それともわたしが寝坊したのか?

 リンの食べる草は私たちも食べることができたりするから、気になるけど…まずはキースとパールのご飯を。


 肉を焼く。オークはこれで無くなるかな。異世界あるあるの、ダンジョンの中で、魔物の肉ドロップとかしてくれたら助かるなぁ。

 美味しくなれー!のお祈りは忘れない。昨日の夜にいたお米をおむすびにして、タッパーもどきに入れる。鍋が空いたからコンロひとつを使って、またお米を炊く(水魔法は昨日より安定)

 麦も買えたから、麦ご飯も炊きました!楽しみ。お米と半量ずつ(目分量)で炊いたから、3人とも食べられると思うけど…どうだろうか??

 自分が麦ご飯好きだからお鍋二つ分、炊いちゃったよ。


 キースとパールの為に、オークを次々焼いては出す。わたしも勧められたけど、朝からお肉はね…39歳には重いかな…年齢にあらがえない…くそぅ。おむすびをひとつ食べて充分。

 リンのため、野菜を焼いたけど帰ってこなかったから、タッパーもどきに入れてアイテムボックスへ。


 さて、朝から働いたー!伸びーっとしてたら、リンが帰ってきた。

 「おはよう。おかえり」

 「おぅ。はよー。あ、これやるよ、欲しがってただろ?」

 手渡されたそれは、トマトの苗と、白菜の苗!!わぉ!白菜!!

 「リン、ありがとうー」お礼を伝えると、ちょっと照れてる。くそぅ。思春期少年か。可愛い。ほっこりしちゃう。

 「ウズキ、リン、ダンジョンに入るぞ」

 キースに呼ばれる。

 そうだよ、ダンジョン!気持ち的には、怖いと楽しみが混在こんざいしている。

 同時にみんなの戦う姿も見られるの楽しみだったりする。


 「行こうー!」

 みんなと一緒なら、結果的にワクワクが勝つ自分。キースに手を差し出された。…エスコート?行くのは舞踏会ぶとうかいではなく、ダンジョンだけど。キースはどこまでもジェントルマンだわ。こりゃモテるわ。

 パールが少し先で、笑顔で待ってる。妖艶ようえんの方じゃなくて、楽しみーっていう、可愛い方。女のわたしでも、ハグしたくなっちゃう可愛さだっ。

 リンこそ、ハグしたいけど…まぁツンデレだし怒られそう(我慢の時。いつかその時が来たらギューってしたい)


 さぁ、初ダンジョン!!胸熱だ。


 ダンジョンの入り口は大きな木のうろだった。よく見ないと気付けない。


 「これ見つけるって、2人ともすごいや。全然わかんないよ…」


 それにしても入り口が狭い。そして薄暗い。ダンジョンって、それなりに光があるんだと思ってた。

 キースに手を引かれつつ、しばらく歩く。道なりに歩いているけど、どうやら下に降りて行ってるみたい。

 と、突然拓けた場所に出た。


 「まぶしっ」

 突然明るくなった。周りを見ると…普通の草原。

 …ダンジョンってこんななの?なんか平和。ここで眠れるんじゃ?ってくらいのどかな雰囲気。

 鳥も鳴いている。

 …鳥?鳥のサイズか?あれは。遠いはずなのに、充分大きく見えるんですけど。

 「チューン」と雀のように鳴く。見た目もなんとなくすずめ。群れでいる。この距離でも1メートル弱はある。マジか?!

 キースとパールが、わたしに結界を張り巨大雀に対峙たいじする。

 どう戦うのかな?ワクワクするー!

 

 すると、ゴロゴロと暗い雲が巨大雀の上、一面を覆う。キースが腕を振ると、バリバリバリッッ!!!と雷が落ちた。

 わっ!と思う間もなく、巨大雀に雷が落ちて次々と落下。

 ジュワっと煙が上がったら、巨大雀は、肉になり、羽根になり、肉になり…これがドロップか!!

 お肉食べられるのか!肉だけになるとか

ありがたい。解体せずに済む!

 「それは、そんなに美味しくないがな」

 …それはとっても残念な情報だ。売れるなら売ろうかな…。

 だけど、初ダンジョン!初ドロップ品!

 嬉しいから、アイテムボックスにポイポイ入れる。


 そうしていると、次々と、いろんな魔物が出てくる出てくる。湧き出てくる。

 巨大雀もまた襲ってくるし、ダチョウみたいなのは突進とっしんしてくる。こいつもデカい。

 もふもふ赤い毛をまとった羊?の群れに、水玉模様のカエルたち。

 どいつもこいつも、一目散いちもくさんに突進してくる。


 なんだこれ?ダンジョンってこんなのなの??まだほとんど歩いてないけど?

 元の姿に戻った、キース、パール、リン。みんな楽しそうに攻撃してる。


 キースは雷魔法を落としまくるし、あと炎を吐く(ブレスですか?!ドラゴンぽい!)他にも炎を使った魔法が得意なのかな?

 巨大雀も赤い羊も、雷落ちるし、火の玉が降ってくる。容赦ようしゃない。


 パールは風魔法。ダチョウたちを浮かせて、竜巻を起こし地面に叩きつける。その後に土魔法で成人男性の拳大こぶしだいサイズの大量の石?岩?がとんでもないスピードでとどめを刺している。なかなかエグい。


 リンは立派なツノから、電流が流れているのかバチバチ強い音がする。それがカエルたちに向かってドカーン!と弾ける。そしてすばしっこくて、ヒョイっと自由に動いてる。


 すごーい。迫力!魔法ラッシュだ!!

 わたしは結界のおかげで、ドロップ品を回収係に徹する。カエルもダチョウも羊も肉出た!

 「カエル肉…?」

 食用カエルも元の世界でもあったような。美味しいかどうかは、あとで聞いてみよう。ダチョウは羽と爪も落として、羊は羊毛。カエルは皮も落とす。あと、謎の瓶。丁寧にふたがしてある。カエルのドロップ品は謎めいているな。


 拾うことに夢中になっていると、ふと、ダチョウと目が合う。

 おや?こっち来てるー!!ロックオンか!

 水!お願い!わたしも戦いたいよ!力を貸してくださいー!

 えと…ダチョウをしっかり見据えて。行っけぇぇ!!


 「ウォーターガン!!」

 ピストルみたいな手の形。バーン!と言いながらダチョウに当たれっ!とそれだけに集中。

 すると、指先から細い水が勢いよく出た。ダチョウに命中。

 少しひるんだけど、まだ倒せない。

 今度は指先を2本にして逆の手で手首をしっかり握る。

 ダチョウをしっかり見て、狙いは的が大きい体!!小さいところは狙えません!

 「いけー!!」

 ともう一発くらわす!今度は水の威力も増して、自分にも反動がきた。

 おわっ!と尻もち。おかげで、ダチョウのお腹に命中!そのまま倒れてジュワっと、肉になりました!!やっほーい!

 わたしが自分で倒した初の魔物は、ダチョウでした。お肉に変わってくれました。嬉しい。

 結界を張ってもらっているから、わたし自身は安心してるんだけど。

 ドロップ品を回収するのに、ひとり行動したから狙われたのかな?

 「やっぱり、弱いものにロックオンするよねぇ。生きるためにはさ」

 お肉をアイテムボックスに入れつつ、ひとりごと。

 

 それにしても3人とも、まぁ楽しそう。

 「ウズキ、すまなかった」謝るキース。

 「かっこよかったわよ、ウズキ」笑顔のパール。

 「やるじゃんか!」嬉しそうなリン。

 みんな自分たちの敵(大軍)を前にして、わたしに声をかけてくる余裕。

 すごいやー。みんな魔法出しまくってる。豪快ごうかいに。

 さて、わたしはドロップ品拾いを頑張ろうかなー。


 拾いながら、どんどん前に進んでいく。出てくる魔物も、ちょっと変化。

 大木並みの太さのへび(また色がさまざまで。隠れる気が最初からなさそうな)とか、恐竜みたいな…なんだっけ?ティラノサウルス?みたいなのが、悠々ゆうゆうと歩いてる。他にも恐竜みたいなゴツイのが、草を食べてたりする。

 空は雀から、羽は綺麗な色をしているのに、鳴き声は綺麗とは言い難い、なんとも残念な巨大なはと?に変わってた。

 

 みんなそんな相手でも容赦ない。楽しいが止まらない!って感じです。

 蛇なんて動きめっちゃ早いのに、遊ぶように相手をするリン。

 ドロップは皮と肉。蛇の肉…美味しいんだって。期待しよう(塩味オンリーだけども)皮も色とりどりで、綺麗です。

 

 恐竜の相手はパールが。風が魔物を取り巻いて、血が出てる。ウィンドカッターってやつでしょうか?ワクワク!

 何匹も同時に攻撃しているパール。しかも、竜巻なので、浮く恐竜…しばらくして竜巻が止んで、ドンッッと落ちる恐竜。

 ゴツそうな皮と、肉(巨大)と、これまた謎の瓶もドロップ。肉がたくさん手に入って、わたしは嬉しい。

 「パールすごーい」と言ったら、

 「ふふっ」と笑ってた。こんな時でも可愛いなぁ。


 キースは、飛んでる。見上げると、巨大鳩に向かって、炎を吐いている。

 合間で恐竜たちにもブレス喰らわせてる。ブオーーーーーっと広範囲に拡がる炎。

 そして、どんどん燃える巨大鳩。数が多いから、キリがなさそう。巨大鳩は羽が燃えたら飛べないから、自然と落ちる。


 うわっと。目の前に落ちてきたよ!

 手を構えて…「ウォーターガン!」と叫ぶ。なんせ的が広いので当たってくれる。貫通して、ジュワっと音の後に肉に変わった。

 鳩の肉は高級品ではなかったか?!万歳!


 ドロップ品を拾いつつ、落ちてきた鳩は、ウォーターガンで仕留めるわたし。ただ消えるだけの魔物もいるけど、大軍なんで、そこそこ拾えています。嬉しいねー。

  しばらくすると、キースが降りてきて、

 「ウズキ、よくやったな。我とウズキの連携、とても楽しいぞ」

 すごく優しい笑顔(人型だったら、威力もとんでもないだろう、きっと)翼で包んでくれた。

 「わたしも楽しいよ!ワクワクする!

 でも、みんな魔法しか使わないんだね」


 実は、なにか魔法以外も見られるのかと思っていたけど、ずーっと魔法だ。

 いろんな魔法が見られて、圧巻だけどね。

 「なにを言う?

 ダンジョンでは魔法以外、魔物は倒せんぞ?」

 「え?」

 「だから我らも、魔法を使っている。強い魔法は、外では使えなかったりもするしな。我のブレスなど、森を焼き尽くす。それこそ本望ほんもうではない。

 ダンジョンは思い切り使えて楽しい。ウズキの水魔法も、頼りにしている」

 それだけ話して、また飛び立つキース。


 え?そうなの??魔法だけ?

 …ダンジョンってそういうものなのか。水魔法できるようになってて、良かった。

 水袋に水を入れ忘れていたからこその、怪我けが功名こうみょうでしょうか…。

 

 「まぁ、わたしも強くなれるかもー。いっぱいドロップ品を拾うのと、宝箱もあるといいなー。お約束だよね」

 ひとり言いつつ、せっせと拾う。忙しい忙しいっ。

 


 


 

 


 

 

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