第18話 魔法できたー!!

 さぁ!異世界もの定番ですよ、冒険と魔法の世界だーーっ!


 キースとパールが見つけたという自然に出来てたダンジョン。

 早く行きたくてウズウズの3人。リンはどうやって戦うのかな?

 …いや、わたしみんなが戦っているところ見たことないな。そういえば。


 そう遠くないらしく、フェンリル姿になったパールの背中にわたしとキースが乗り、リンは本来の姿、ヒトゥリーディアになりパールの後ろを追いかけることに。

 リンは「パール速いから、ついて行くのキツイんだよなー」って愚痴っている。

 分かるよ、リン。この加速、凄まじいもんね…。

 そう言いつつも、そこまで時間差なくついて来れるリンも凄いよ。


 「じゃあ行こうー!パール、よろしくね」

 「オッケー!しっかり捕まってて」

 「我が支えているから心配ない」

 「ほどほどのスピードで頼む…」

 パールが走り出す。リンもついてきている…多分。早すぎて見れない、相変わらず怖いよぅぅぅ。

 ぎゅうっとパールに捕まる。後ろからキースが腕を腰に回して、耳元で「安心しろ」って言ってくる。

 わぁ!耳元でイケボ!ちょっとびっくりして、パールから手を離しちゃうところだったわ。

 パールもキースもわたしを落とすとか、ありえないから、そこは心配してないけど。けど!スピード早くて怖いいいいいぃぃぃぃ!!!

 

 「着いたわよ」

 「はぁ、はぁ。怖かった…ありがとうパール」

 「大丈夫か?」

 先に降りたキースが手を貸してくれる。助かる…今回は腰が抜けることはなかったけど、前の世界では絶叫系と縁がなかったのでね…ふぅ。

 「リンはまだかしら?あ、来た来た」

 「リーーンーー!!」

 手を振る。ゼェゼェ言いながらリンが到着。

 「パール、はぇぇよ…。疲れたー」

 「あれでも遅いわ。ウズキ乗せてるのよ?全力なわけないわ」

 …パール、気を遣ってくれてありがとう。あれ以上は無理。キースが支えてくれてても落ちる自信あるよ。

 

 「今日はこの辺で野宿して、明日からダンジョン入ろうか?夜ご飯もまだだもんね」

 「では、少し移動しよう」

 「飯!スープ作ってくれよ!」

 「作るの初めてだよ…頑張るっ」

 キースの誘導で移動したら、少しひらけた場所に。ここならご飯も、野宿も安心だねー。

 「よーし!作るよー!」

 アイテムボックスから、テーブルを出す。コンロ3つ並べて、そのうち2つはフライパン。ひとつはお鍋。

 鍋には水…あ!宿からお水持ってくるの忘れた…!どうしよう…。


 自分のやらかしに凹んでいると、パールが「どうしたの?」と聞いてくる。

 「いや、お水をね…忘れちゃってね」これは困る。ダンジョン入ってからの料理も困る。

 「ウズキ、水魔法できるじゃない」

 「水魔法?」

 「…知らなかったの?」

 んん??

 それは初耳!驚いていると、パールだけじゃなくて、キースとリンも『今更』的な感じで見てる。…さては、リンも鑑定スキル持ってるな。


 なぜかわたしだけ、鑑定スキルがない。生活は特に困らないけど、定番のラノベ冒険系に入ると、さっぱり分からない。

 自分のステータスすら見れないからねぇ…言葉もキースとパールの力で話せるけど、文字は読めないもんなぁ。

 

 しかし!こんなことで、めげるわたしではない!前世では何もできなかったんだもの。

 できることは頑張るんだー!!魔法できるって教えてくれたし、ダンジョンのためにも、冒険と魔法の世界に来れたことも含めて、必須スキル!

 できるようになりたい!

 いや。なる!


 「…魔法って、どうすればいいの?」

 「水をどうしたいのか、イメージしたらいい。集中して明確にするといい。そうすると慣れてくる」

 キースが教えてくれる。


 目を閉じる。水のイメージ…水は湧き出る。静かに、でも確実に。

 そう、例えるならわたしがキース、パール、リンに対する気持ちのように、あふれてくる。そしてそれは、わたしの心の内側から、どんどん溢れ出てくる。途切れることはない、この気持ち。

 ぽわぽわ胸が熱くなる。この胸の温かさ好きだな。

 

 コポコポ…うわ!水出てる。手から水が!冷たい…じゃない!鍋に入れなきゃ!!

 鍋に水を入れていく。

 これで、野菜スープが作れるよー。良かったぁ。

 「やったな」

 「すごいわ、ウズキ」

 「スープ食えるな!ウズキ、すげぇじゃん」

 みんなからの「おめでとう」の声に、魔法使えてたと気付いた。ご飯優先だったから…でも、ほんと魔法が使えて良かった。

 水もずーっと宿や外の水場で見つけた時に水袋に入れて、まとめてアイテムボックスに入れて、持ち歩いてたので、水の残りとか心配しなくていいのは、嬉しい。

 だけど念のため水袋に水入れて、持ち歩くけど。保険があった方が安心だもんね。


 さて、ご飯できる。肉を焼こう!先にお米を精米して、水にひたしておこう。

 お鍋も沸かそう。

 水が出たことで、ご機嫌なわたし。3人がのぞきにきてる。

 今日は、猪です。でっかーい!!お肉に手を添えて「おいしくなーれー」とお祈り。

 でっかい肉の塊を、わたしでも切ることができるのは、柔らかくなっているからなのかも。


 2つのフライパンで、ずっと焼く。キースとパールは「美味い」「こんなに柔らかくなるの?」と嬉しそうに食べている。

 毎度お馴染み塩味なのに。優しい2人だよ。泣けちゃう。

 多めに焼いて、タッパーもどきの入れ物に入れておこうかな…お米もストック欲しいな。念のため、は、困りません。きっとね。


 「スープまだか?」リンが待ちきれない様子。時間がかかるから、焼き野菜を渡している。

 スープの具材は、玉ねぎ、にんじん、ブロッコリー。

 キースとパールにも食べてもらいたいから、たくさん作った。美味しくあっておくれ!

 どうぞー。と出す。3人の反応が気になる。

 「美味い」「おいしいわ」「うめぇ!」ほぼ同じタイミングで感想もらえた。嬉しいー!!ありがとう。たんと食べておくれ。

 …なんか、母みたい。わたし。3人見てると、美味しいものを食べてもらいたいのに、わたしの料理スキルの無さと、調味料不足でなかなかね…。あ、お米、蒸らしも大丈夫かな?おむすびしよう。

 

 途中で、キースやパールが肉を分けてくれて(自分のもあるのだけどね)優しさにほろり。

 猪肉でかー!って思ってたけど、結果的に2匹とオークも焼いたり。お肉をギルドでたくさんもらえてて良かった。

 お米を炊いてストック。2つある鍋ごとアイテムボックスへ。スープ鍋でお水沸かして、とうもろこしを茹でる。ストック用だったけど、リンが食べたそうだったから、一本あげる。「うめぇ!」って嬉しそう。


 片付けてたら、キースが来る。まだお肉足らなかった?

 「明日はウズキにとっては、はじめてのダンジョンだ。守るから安心しろ」

 真っ直ぐな目。嘘のない目。安心できる。

 「うん、信じてるよ。楽しみだね!」

 「ウズキは弱いのに強いな」

 笑ってるキース。一緒に笑う。みんなと一緒だから、強くなれるんだけど、みんなは気付いてくれてるのかな?

 

 キースもパールも、リンも。元の姿になった。キースが結界を張り、そのなかでみんなでくっついて眠る。キースの翼に包まれると、この世界に来た時の事を思い出す。あの時の安心感と同じ。


 明日のことを考えながら、眠りについた。



 

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