第17話 いざ、ダンジョンへゴー!

 「無理だな」

 外に住みたい案は、キッパリとバッサリ斬られた。

 「宿が嫌なら…そうだな。例えばザンビアを拠点にすると決めたなら、家を借りたらいい。その時は俺も口添くちぞえしてやるよ。

 でも、お前たち、ダンジョンも行くんだろ?いろいろ取ってきて金貯めな。

 まぁキースが黒龍になるのは、外でだけにしてくれ。騒ぎになる」

 ティムさんはサラッと言う。

 「えー。そんなの可哀想じゃないですかー!」

 横暴おうぼうだー!と対抗してみたけど、キースはわたしを抱きしめたまま離さない。

 ?どうしたんだろう。


 「むぅ。じゃあ、先にダンジョンに行く?」

 抱きしめられたまま、みんなに聞くと楽しそうな顔。

 「あぁ」「楽しそうね」「行こうぜー」

 「だそうです。行ってきます。お肉欲しいから、魔物いろいろ買ってください」

 「…お前、簡単に言うけど。お前さんの出してくるものは、どれも高いんだよ…。まぁ、ウチの売上も高くなるから、可能な限り。買い取りたいんだけどな」

 ギルドマスターはいろいろ考えることが多いみたい。うーん、と腕組みしてる。

 

 とりあえず

 ・異世界人が、この世界にいる(冒険者で戦争に駆り出されている可能性あり)

 ・外に家は建てることは無理

 

 って事がわかった。外に住めないのは残念…たまにキャンプ的な感じで外で眠れば、少しは違うかもしれないな。

 狩りもできるからストレス発散になるだろうし、遠出も可能だし。

 みんながいれば、夜の野外も怖くないからね!


 異世界人は気になる。会ってみたい。話してみたい。

 が、戦争に巻き込まれるのはゴメンだ。みんなを巻き込むことだけは嫌だし。

 頑張れ、勇者様。わたしはみんなと、のんびりしたいんです。


 とりあえずの話は終わり、さばいてもらったお肉だけもらう。猪5匹とホースバス3匹もらえた。

 猪はジビエみたいな感じなのかな?楽しみー!

 …どの魔物もジビエっちゃジビエか?見た目、硬そうなしっかりした肉質だけど、お祈りしたらさらに美味しくなるしねっ!


 魔石もたくさんもらえた!(さすがSランク魔物たち)

 オークの時より大きいし色も綺麗だな。魔物によって違うのかぁ。

 

それにしても、いっぱいお肉!ありがとうございますー!追加で置いていきますね、って引っ張り出したら、ティムさんもトムさんも他の解体職人?さんからもまた引かれた。


 でも、気にしなーい!

 猪と、なんかこれはどうかな?と首が分かれてる、これまたでっかい色鮮やかな狼みたいなのを出したら、それは断られた…『高すぎる!』だって。

 キースたちは『美味しい』って言うから、食べてみたかったんだけどな。残念。

 代わりに、ビックバードを3匹引っ張り出す。大きい魔物は食べるところがたくさんで助かりますからねー。

 素材のお金の計算にまた時間がかかるってことで、3日後に来る約束をする。


 ギルドを出て、市場にまた訪れて塩も大量に買う。キノコ気にしたことなかったけど、あればラッキーかと思ったし、キョロキョロしてみる。

 キノコはなかった。やっぱり珍しいのかもしれない。

 だけど、また穀物系が増えていた。麦もある!!麦ご飯ー!!お米も麦も、そして野菜も大人買い。

 またストックが増えた!嬉しい!お店の方もホクホク顔。わたしこそ、ホクホク顔。


 お店の方が「これ、傷んでいるところがあるから売れないけど、そこ以外は食べられるから」と笑顔で野菜をくれる。

 わぁ!これは玉ねぎとアスパラ!!助かります!いくらあっても困らない野菜。

 草食のリンが嬉しそうに

 「これ、美味いよな!」と言う。

 キラキラの笑顔。

 その笑顔にやられたのか、店主さんは「これもあげる。特別よ」とリンにとうもろこしを5、6本渡す。

 「これ!俺好き!ありがとな」…眩しすぎるよ、リン。店主の奥さんメロメロじゃんか。

 

 この世界の女性はよく働く。市場はだいたい女性が売り子。男性は、冒険者だったり、畑で働いているらしい。

 「お父さん、お母さんに似てて、いい男ね」

 ですって。

 リンはとうもろこしに夢中だ。

 店主さんの中ではきっと、リンのお父さんはキースで、お母さんはパール。…わたしの立ち位置はどこなんだろう?

 まぁ、39歳だと成人の子供がいてもおかしくないみたいなので、仕方ない…。

 とうもろこしまでくれたから、気持ちは複雑だけど嬉しいです。


 お礼を伝えると「また来てねー」

 美男美女、さらに加わった美少年。

 このビジュアルは強すぎる。わたしの存在を忘れられるくらいには。

 

 帰り道、キースが「ダンジョンに行くか?」と聞いてくる。

 「うん、みんなも行きたいでしょ?わたしとみんなとなら行きたいよ」

 「じゃあこれから行こう」

 …隣の街でしょ?もっとお肉欲しいんだよね。厳しいんじゃないかしら?と思っていたら

 パールが「見つけたの、小さいけどダンジョン」と付け加えた。

 2人が狩りをしている時に、自然にできたのダンジョンを見つけたらしい。

 わぁ!わくわくする!!

 「じゃあ宿に行って、3日間くらいキャンセルする?あと、ギルドにも行って伝えようね。お肉保管してもらおう」

 

 善は急げ!思い立ったが吉日!よーし、楽しみー。


 宿で伝えた後にギルドへ。夕方という時間は混むのか、ごった返してる。

 が、美男美女、美少年3人が入ると、また自然と道ができる。すごいな、ほんと…。

 「あれが例のおばさんか?」

 「すげぇよ、あのおばさん」

 …すごいのはわたしなのか?ていうか、またおばさんに戻ってる。くそぅ。ムカつく。

順番を譲ってくれたから許すけどー。


 受付まできてくれたティムさんに「ダンジョン行ってきまーす!」と伝えた途端、周りがざわつく。

 「おばさん、マジ強いな」…聞こえてるよ。

 ?でも変なの。冒険者なら行くんじゃないの??


 ティムさんが「バルナーにか?」と聞いてきた。そっちじゃないのです。

 「いえ、なんか自然にできてるダンジョンがあるみたいで。

 キースとパールが見つけたんですよ。だから行ってきます!」

 笑って答えるわたし。

 さらにどよめく周囲。温度差がすごい。なんならティムさんまで驚いている。

 「ダンジョン?!本当か?」

 「あぁ。あったぞ。まだ小さいだろうがな」

 キースが答えると、ティムさんはかなり興奮気味に「帰ったらきっちり聞かせろ!」って。

 「はぁ…それは構いませんよ。

 なので、お肉解体できてたらください」

 「…お前さんはブレないよ」

 呆れられた…けど、ギルドに寄った甲斐ありです!

 ビックバードの肉もらえました!

 素材のお金たちは、帰ってからまとめてということで。

 ダンジョンを詳しく報告すること、という宿題は出たけど、なんとかなると思う。…魔物の名前は覚えられないけど。どれも名前が長いんだもん…無理無理。

 

 「行ってきまーす」

 「おばさん、頑張れよー」とか言われてしまった。

 キースたちは正体バレてるけど、なんせ人型の造形が良すぎて「気をつけてくださいねー」「怪我に気をつけて」とかそれぞれ言われている。

 すごいな、みんな。仲良くなれるのはいいことだけども。


 ほのぼの見ていたら、キースと目が合う。

 近づいてくるキース。なんだろう?忘れ物?

 「キース?」と声をかけてみると、笑顔で「ウズキ、心配するな、我が守る」と頬にキス!!!

 「きゃー!」「ぎゃー」とかいっぱい声がする。人だかりの距離は近いはずなのに、その声はまるで遠くから聞こえる感覚。


 何事?!キスされた!(頬だけど)

 わたしキスされたことない!!ファーストキスか!?(頬だけど)

 真っ赤になるわたし。

 追い打ちをかけるように覗き込むキース。めっちゃ優しい笑顔。

 さらにうるさくなる外野。「おばさんよりわたしの方がいいでしょー」「羨ましい、おばさん変わってよー」

 …もう、おばさんって言われても反応できない。

 どうしたのさ!なにがあった!?キース!!


 恥ずかしい!早く離れよう!早くダンジョン行こう!!

 

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