第16話 異世界人!いたーー!!

 森の中です。キースとパールの狩りの成果が目の前にドーーーンとね。

  

 「これまたすごいね…お疲れ様、2人とも」

 「本当にお前ら、すげぇ」

 ドドーンと魔物の山が3つほど。さーて!頑張って回収。そして、売る!!(肉はもらうよ!)

 ひとつのギルドで難しいなら、他の街に行くのもありなのかしら?異世界ものの定番だよね、冒険。

 せっせとアイテムボックスに魔物たちを入れつつ(どんな色でも形でも、サイズでも驚かなくなってきてる自分がいる)考えてみる。

 みんなと相談して、ティムさんにも根回ししてもらって…かなぁ?

 

 「あ、この辺は俺の飯があるぜ」リンが楽しそう。

 「ちょっとだけ、食うわ」

 なんだろう?と見ると、トウキビや、キノコの群生地だった。マジか!キノコ!!

 あれは椎茸しいたけ舞茸まいたけに…しめじー!!でっかいな。あと、色が鮮やか。水玉模様とか…毒キノコではないはず。リンが食べてるわけだしね。

 信じてるよ、リン!!


 トウキビや、キノコに喜んでいると、横に文字。

 んんー?


[きゅうり:苗][大根:苗][白菜:苗][トマト:苗]


 なんということでしょう!!

 小さすぎる草が野菜の苗とは。欲しい!しかし根っこから綺麗に抜けるか。

 キノコを収納する手を止めて地面を見つめるわたしにリンが「なんだ?」と声をかけてくる。

 「いやー、…苗だけ欲しくてねぇ」

 欲しい種類を、これとこれと…伝える。もちろん根から欲しい。いろいろ生い茂っていて難しそう。

 突然、フワーと風が吹く。欲しい苗だけ、綺麗に根元から抜けて、浮遊している。

 「すごい!リン、すごい!ありがとう!」

 「このくらいで大袈裟だっ!俺らはこうして好きなの分けて食うんだよっ」

 …顔がニヤついてる。ツンデレ発動。可愛いやつめ。

 

 リンよおかげで苗ゲット。いつか植えたい。

 キースとパールの頑張りで大量の魔物もゲット。早速ギルドに持ち込もう。

 

 「終わりっ!さて、街に戻ろう」


 やっとギルドに到着。結構、時間かかっちゃった。

 受付でティムさんを待っている間に、リンの従魔登録を。


 「戻ったか」いつもいいタイミングで現れるティムさん。リンも紹介できる。

 「改めてこちらリンです。

 【ヒトゥリーディア】です」

 「…はぁ???」

 ティムさんがまた、驚きとも呆れともなんとも微妙な返事。

 それを不服に感じたのかリンが突然、元の姿に戻る。ざわつく周囲。

 すぐに人型に戻って「わかったか!」とティムさんに言っている。

 「リンってなんだかキースやパールとは違う、空気感があるよね。かっこいいー」

 「当たり前だ!」

 デレが前面にでてる。くそっ!可愛い!


 ティムさんが「まぁ移動しようや」と言う。周りもざわついてるし、それがいい。魔物たちも渡したいし…

 実は、いろいろ聞きたいこともある。

 ちょっと話は長くなりそうだなぁ。みんなは暇かも。

 魔物の解体時間だと思えば。まぁいいか。トムさんに頑張ってもらおうっと!


 「とりあえずこれ、依頼分です」

 よっ、っとと。よろけるわたしを支えるキース。ナチュラルイケメンよ。王子様か、キミは。

 キースに手伝ってもらって、ホースバス全部出したら引かれた。解体担当トムさん以外の元冒険者って感じの方々からも、引かれた。

 でもまだある!今日のわたしは強気だぞっ!

 パールがとってくれた、でっかい黒い長毛の猪も10匹と、前からアイテムボックスに寝かしてたワニみたいなヘビみたいな。2匹ずるずる引っ張り出す。

 ずーっとキースが横で手伝ってくれる。怖くないけど、重いから本当に助かるよ。この世界の魔物って、基本でっかいから大変。出しながら「これ美味しい?」と聞いたら笑って頷いてたから、楽しみ!あとは食べるところが多いと思えば嬉しい。

 これだけあれば、しばらくはお肉は困らないぞ!と顔を上げたら、みんなドン引き。

 …本当はまだあるのに。これでも遠慮したんだよー。

 

 魔物の名前に興味がないわたしなので、覚えてないけど、どれもこれもSランクだった。素材も冒険者だけでなく、商人の間でも人気だとか。

 「ギルドマスターの手腕しゅわんが試されるなぁ」なんて悪い顔して笑ってるティムさん。

 頑張って売ってください。そしてまた、買取をお願いします。

 量も量なので、買取価格の計算は時間がかかるので明後日に。

 今日はもらえるだけ、お肉もらうことに。トムさん頑張って!


 ギルドマスターの部屋に移動する。さすがに解体倉庫は、持ち込み魔物でいっぱいだし。わたしも落ち着いて話したい。

 「ヒトゥリーディアも初めて見たぜ。『神の使い』だろう?次々とまぁ…すげぇなぁ」

 「そうなの?」リンを見る。

 「あぁ、まあな。だからこそ希少種なんだぜ!」

 なるほど。確かにリンは、キースたちとはまた違う空気感をまとっている。

 

 「これ、ウズキの冒険者カードだ。Bランクだが…もうSでもいい気がするわ…。

 一応、実績がいるからな。ダンジョンとか行けばまたすぐ上がるぜ?」


 ダンジョン?!キター!!

 やっぱりあった!ワクワクするんですけど!!前のめりなわたし。詳しく聞くと、隣街『バルナー』に大きめのダンジョンがあるらしい。

 初ダンジョンなので、規模にピンとこないけど、響きがワクワク。

 「ダンジョンね、少しは遊べるかしら?」楽しそうなパール。笑顔かわいいっ。

 「ウズキは我が守るから安心しろ」笑顔を向けるキース。眩しいですっ!

 「ダンジョンかぁ。うまい草、ドロップ品であるといいんだけどな」リンの食事を考えて野菜も大量だね。


 「かなり行きたいです!みんなも行きたそうだし。

 食料たくさん持っていきたいから、魔物たくさん買ってください。お肉はください!」

 「まぁ、ウチも頑張るが、ダンジョン前にバルナーのギルドで売るのもアリだな」

 なるほど。そうしよう。キースに乗って行けばすぐ着くよね!キースをチラッと見ると目が合う。


 「…キースに乗って行くつもりなら先に言えよ。バルナーに伝えとかねぇと、騒ぎになる」

 ここにエスパーが!バレてる!思いが顔に出ていたのか、ティムさんが「そのくらい分かる」とサラリと言う。

 自分がそんなに分かりやすいのか、ティムさんができる男なのか。


 そんなできる男、ティムさんに聞きたいことがある。微妙に引っかかってたこと。

 「ティムさん、街のお店で思ったんですけど…なんだか急にすごく便利なものとか混ざってるんです。蓋付きの鍋とか、蓋付きの入れ物も…なんていうか、元の世界の物に近い…」

 「「ウズキ!!!」」

 キースとパールが止めに入る。


 あ、言っちゃった。思わず口に手を当てる。首を横に張る。

 2人はティムさんの様子を見ている。少しだけ怖い感じで。

 「…あのな、あんな無限のアイテムボックスに、従魔たちは伝説の魔物が3匹。おかしいと思うだろう。

 …ウズキは、どう見ても『伝説の勇者』じゃないけどな。

 安心しろ、言わねぇよ。

 最初に気をつけろって言っただろ?」

 「確かに言われた気もする…。ありがとうございます、ティムさん!」

 ペコリとお辞儀。目から怖さが抜けた、キースとパール。

 そんなわたしたちの横で、リンが

 「??お前、隠してたのか?でも勇者召喚はされてるぜ?遠い国だけどな。

 ウズキの言ってたのは、そいつらが言って作らせたんじゃねぇの??」


 !!リン、今なんて?!勇者召喚!テンプレじゃんー!ちょっとテンションあがる。

 全員がリンに振り向く。

 「どういうことだ?!」

 「面倒だわ…」

 「勇者だと?」

 ティムさんがリンに詰め寄る。一方でパール、キースは興味なさそう。

 「…詳しくは知らねぇよ。国が違うと、つかえる神が違うんだ。ただ、異世界人が来てることだけは知ってたさ」

 さらりと答えるリン。

 しかしなるほど。これで少し納得。古いものの中に、急に近代的で便利な物があるんだもん。


 「勇者召喚、ってことは、なにか戦争とかしてるの?」

 「知らね。人間の小競こぜり合いには興味ねぇから」

 「わたしも、どうでもいいわ」

 「人間は愚かなのは、いつも同じだ。ウズキの事は守るから安心しろ」

 わたしは興味ある話題だったけど、リンもパールもキースも興味なさそう。温度差すごいな。

 「戦争はあちこちでしてるからな…どこの国かは分からんが。しかし耳が痛いな」

 ティムさんは苦笑してる。

 そんなに戦争?と聞いたら、領土拡大したいところはたくさんあるらしい。

 巻き添えになるのは市民。

 なんだか、異世界も元の世界も、そこのやるせなさは変わらない。

 勇者召喚された人も大変だなぁ…。


 「お前、そういう国には近づくなよ?利用したい奴らは多い。

 ウチの国は隣国と共和同盟結んでるから、とりあえずその辺までにしとけ」

 真剣な顔のティムさん。

 その後、ふっと優しい顔になって

 「黒龍とフェンリル、ヒトゥリーディアと一緒にいるお前さんだ。

 手を出そうもんなら、下手したら逆に自国を潰されかねないがな」

 あはは、と笑ってる。


 異世界あるあるで言うなら、そうですね。本気出せば、この3人いれば潰せるでしょうね。しかも圧倒的に。

 そんな怖いことに参加させるつもりは全くないけど。

 美味しく、楽しく、平和に!がモットーなのです!!


 「あの、…山の中に家って建てていいんですか?」

 「は??なんだって?」

 「街の中では、どうしてもキースやパールが自由に元の姿になれないし…外でもいいかなと思ってるんですよね。

 わたしは基本的に、みんなと一緒ならどこでもいいし…山の一部が買えるなら家を建てるとか。

 みんなに窮屈きゅうくつな思いをさせたいわけではないし…ダメですかね??」

 むぎゅ!とキースに抱きしめられる。「ウズキ…」と感動してるっぽい。

パールも、負けずにむぎゅっと。


 嬉しい、苦しい。嬉しいけど苦しいよぅ。同時にわたしの胸は、ぽわぽわ暖かい。

 衣食住は生きる基本!!

 なんとかなるといいなー。

 

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