第15話 頑張って、稼ぎましょう!!

 さてご飯!

 テーブル出して、コンロもふたつ、フライパンもふたつ!これで昨日より待たせないで済むね。うん。

 今日はでっかい鶏肉だよー!


「美味しくなれー」

 触れて願う。


 リンっていう仲間も増えたし、美味しく食べてもらいたい。

 相変わらずの塩味ですが、そこはもう少し我慢してほしい。ごめんなさい。


「美味しそうね」

 パールが手元を覗き込む。


「肉しかないのか?」

 と、リンが言う。


「…おれ、肉食わねぇんだよ。草食なんだ」


「えぇっっ!!!!」


 マジか!魔物とはみな肉を食べるのだと思ってた!!意外な事実に大声が出る。


「なんだよ、失礼な奴だな」

 リンが不満そう。


「そうだよね。ごめんなさい。

 魔物って肉を食べるものだと思い込んでいたから、驚いちゃって。

 あ、野菜あるよ?焼くからちょっと待ってね」


 先に焼けた鶏肉をキースとパールに渡して、リンのために玉ねぎやにんじん、ピーマン、とうもろこしを焼く。

 ちょっと、わたしが知ってる色と違うものあるけど。


「なぁ、なぁ。まだか?」

 待ちきれない様子で、覗き込むリン。


 ちなみにもうひとつのフライパンでは、鶏肉を焼いている。


「はい、塩味だけだけど。どうぞー」

「やっと飯!あっちぃ!もぐもぐ…うめぇな、これ!」


 リンは熱そうにしながら、とうもろこしを食べている。すごく気に入ったご様子。こんな顔見ると嬉しくなる。

 また買おう。芯は捨てずに持っておこう。この世界で何かに使えるかもしれないし。


 次々と焼いては渡していく。動いたあとだし、よく食べてくれるみんな。

 ビッグバードもオークも、野菜も焼く。コンロ増えてて良かったぁ。


 キースやパールがよく食べるのは知ってるけど、リンもよく食べてる。

 ピーマン、アスパラ(的な野菜)も気に入ったようで、催促された。

 これからは野菜の買い溜めも、しっかりしないといけないね!!


 でっかい鳥、丸二匹を食べきって、オークもモリモリ食べる2人。

 まだ持ってるビッグバードもオークも、ギルドで解体をお願いしよう。今日の魔物たちも早く解体お願いしよう。


 いびつで、またもや大きめなおむすび3つ、ひとつずつ渡す。

 リンは草食だけど、米は平気なんだろうか?食べるかな??と思いつつ手渡すと

「穀物だろ?」

 と、パクッと食べる。


 途端にぱぁっと明るい顔になり、ガツガツ食べてくれてる。

 嬉しい!ぽわぽわ。あ、また温かいや。


 …お米もいつも切らさないようにしよう!


 食品は、まとめて持っておきたい、肉も野菜も。

 お金も食事も、わたしの責任だ!街に戻ったら、ティムさんに相談しよう。

 リンのことも伝えないといけないしね。


 みんなそれなりに満足してくれた様子。わたしも鶏肉を食べたけど、街のお店でひと口もらった時より、柔らかくなってる。格段に美味しい。

 不思議だよなぁ…。

 美味しくなってくれるのは、純粋に嬉しい事だから、深く考えるのはやめて、感謝しよう。


「さて!街に戻って、昨日のお店に行こう!スープの作り方を習いたいからねっ!」


 レパートリーが増えると助かるから!絶対に習いたい。


「分かった。では、我に乗っていくか。すぐ着くぞ」

「うん、もう正体バラしてるから平気だよね。よろしく、キース」


 人型になったみんなと一緒に、黒龍のキースに乗る。リンが少し戸惑ってた。リンには言えないけど、なんだか微笑ましい。


 キースに乗って街の入り口そばに着地。ちょっとした騒動になっていました…。

 冒険者たちが武器持って、わんさか。


 私たちが降りると、静かになる。キースが人型になると「おぉ!」と声が上がる。


 その場にいたティムさんが大股で、わたしに近付く。

「あ、ティムさん!」

 ちょうど良い、リンも紹介できる、と思っていたら


「……ウズキ!」

 ペシッィ!!!と、デコピンされた。


「いてっっ!」

この世界にもデコピンあるんだね。

 なんか怒ってるんだか、力が抜けたようにも見えるし…。


 あ。もしかして。キース…黒龍姿を初めて見たみなさんが、パニックになったんですか?それでティムさんまでここにいるの?


「すみませんでした…」


 でもこれで次からは平気よね?気を取り直して、リンを紹介しよう。


「ティムさん!紹介します!リンです。新しい仲間ですっ」


 じゃじゃーん、とお披露目。あれ?頭抱えられた…。なんで?

 周りにいた冒険者たちも、一歩、後ろにさがった。なんだよ、リンはまた違う魅力でしょ?カッコ可愛いでしょー!!


「ギルドに行くか…」

 力なくティムさんに言われたけど、先に料理を習いに行きたい!


「ギルドは後でいいですか??実は、スープ作りを習う約束してて。野菜もお米も買いたいし。

 お米用のの鍋も!

 できればコンロももうひとつ!!!」


 ティムさんに、捲し立てるようにお願いをする。

 みんなの喜ぶ顔が見たい!そのためにスープ作れるようになりたいです!!

 やっぱりわたしも、欲望に忠実です。


「お前…金あるのか?あるなら行ってこい」

「お金っ!念のため依頼達成のお金だけでもください、すいません」


 …優しい上に、できる男だ。ティムさん。ちょっと、いやかなり呆れた顔されたけど。


 依頼達成は、本来、現物を渡してチェックしてから、お金をもらうのが正規の方法だけど。


「キースとパールが仕留められないわけないしな」

と、先に達成金として金貨300枚もらった!!

 大金!!ありがとうございます、また後で来ますからー。


「スープ習うの楽しみ!頑張って覚えようー!」


 そう言って街に入ろうとすると、パールが

「わたし、狩りに行ってこようかしら?お金になるしね」


 ウィンクも付けてくれるパール。すごく絵になる。お金の心配かけてしまって、ごめんね。すごく助かります。


「我も行こう。パール、乗れ」

 黒龍姿のキースがパールに声をかける。


「楽しみに待っていろ、ウズキ」

「じゃあ、あとでね」


「行ってらっしゃーい」

と大きく手を振って、見送る。門番さんも2人の姿見たし、大丈夫でしょう。


「じゃあリン、行こう!」

「めんどくせぇなぁ。オレも狩りがいいぜ」

「…野菜スープ習うから」

「美味いの頼む」


 リンのこういう素直なところ。可愛くて思わず笑ってしまう。うん、美味いスープ習おうねー!


 3人のため、頑張るぞー!!


「ここで、この香草こうそうを入れるのよ。臭みがとれるの。安く売ってるから、必ず入れたほうがいいわよ」


 奥さんから習っている最中。なるほど!

…これはローリエ?忘れずに買おう。

 お肉にも使えるかも、と思っていたらご主人は、お肉に違う香草を使っていた。こちらは香付かおりづけのためだって。


 野菜スープを味見させてもらう。変わらず美味しい。リンも味見。

「美味いな!」

 と、笑顔のリン。


 わたしが作る時も、上手にできますように。お鍋に向かって、思わず真剣にお祈り。


 そんなわたしの姿を見て、

「なにやってんだ?それよりまだ食わせろ」

 とおかわりを求めるリン。


「夜、宿でわたしが作るからねっ!今は作れるように習ってるの」

 そう答えたら、リンは微妙そうな顔をした。そりゃ、わたしもスープはこの世界で初挑戦だけど、頑張るもん!


 ひと通り教わって、ご夫婦にお礼を伝えて、お店を出る。お土産に、と少しハーブを分けてくれた。

 昨日このお店を選んだのはキースとパールの直感だけど、本当に良いお店だったなぁ。

 ありがとうございます!頑張ってお料理します!!


「野菜、買っていこうぜ」

 

 市場に入るなり、リンからの催促。さっき習ったハーブとかも買いたいし。野菜もまとめて買おう。野菜はわたしも好きだしね。


 とうもろこしが特に気に入ったリン。茹でても美味しい、と伝えたら

「たくさん買おうぜ!」

 と、嬉しそう。


 キースたちにも食べてもらいたいから、大人買い。他の方に迷惑かな?と思ったけど

「他のお店にもあるから、平気だよ」

 と言われたので、安心して買い占めさせてもらいました。


 リンが喜んでいて、その姿が奥様方の心をくすぐったのか。どの店でも、なにかしらオマケもしてもらえた。

 リン、すごい。会話も楽しそうにしてて、コミュ力高い!!


 ハーブ系も分からずともまとめ買い。お米も全部。トウキビも同じく。


 あとは、コンロ(3つめ!)蓋付き鍋と…持ち手付き鍋まである!不思議だ。

 これも買おう。フライパン、お皿もこの際と思って数種類5枚ずつ追加。


「あれ?これ、なんか…蓋付きの入れ物ある。シリコンならタッパーじゃん!

 なんだか、ちょいちょい元の世界のもの風があるんだよね。不思議…」


 高いけど大きいサイズを5つ購入。気になって、見てしまう。便利だから買うけど。変なの…。


「おい、ボーッとしてないで、そろそろ行こうぜ」

「あ、うん。ギルドに行こうか」


 リンに引っ張られて会計を済ませ、冒険者ギルドに向かう。


 道の途中でリンが立ち止まった。なんだか空気が清浄になったような。


「呼んでるぜ、こっちだ」

 腕を引っ張られる。

「待ってー!リンもうちょい力緩めてー」

 リンは意外と力が強いんだよね。加減してもらわなきゃ。


 リンは、街の入り口に向かってた。

「もしかしてキースたちが戻ってきたの?なんで分かるの?」

 …まだ街はざわついてないのに。


「俺はそういうの得意なんだ。神託しんたくも受けられる…空気が変わるのが分かる」


「え?神託?!リンの能力すごい!!神様の使いみたい」

「みたいじゃなくて、そう言われてるんだ、オレは!」


 そっかー。何も知らなかったけど、リンもすごい力を持ってるね。さすが強い魔物だ。


 街の入り口でしばらく待ってると、明るかった空が影に覆われる。


「帰ってきた…リンすごい」

「だろ?」

 呟くと、ドヤっとしたリンの声が横からする。


「ウズキー!」

「早く乗れ、行こう」


 こっちも、ドヤっている2人。

 狩りが楽しかったんだね。魔物を引き取りにまた、森へ戻る。

 今度はリンも一緒にキースの背に乗る。


「おいおい…。やっぱ楽しそうじゃん、次はオレも狩りに出るぜ」


 リンの言葉を聞いて、まんざらでもない様子のキースとパール。

 そりゃこの魔物のどでかい山を見れば、短い時間でも楽しめたんだと想像がつく。


 ひたすら無になり、せっせとアイテムボックスに魔物を収納するんです。

 例えば、首が二股であろうが、足が4本あろうが、巨大でも、小さくても。変な色でも。表面がぬめっても。デコボコでも。気にしない。


「だって全てお金!それに肉!」


 一仕事終えたら冒険者ギルドで、リンのことも登録してもらって。

 みんなと一緒に楽しく笑って平和に過ごしたい。

 それがわたしの求める、最高の幸せだからっ!




 


 

 

 

 

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