第21話 続・続・ダンジョン

 くそぅ。我ながら、キースからの

 おでこにチュ。

 の威力に負けている。恥ずかしい。


「39歳はデコチューは漫画の世界なんだよっ!照れるってば!!キースはイケメンで絵になるけどっ」


 みんなは、あんなにブレずにダンジョンを楽しんでいるのに。

 わたしだけが、未だに照れている。


 あ、魚たち来た!いいぞ、来い来い。そしてわたしを冷静にしておくれ!!


 「ウォーターカッター!」

 集中して腕をブンッと振り切り、即座に切り返し!

 二足歩行の魚がちょっと増えてきたなぁ。

 見た目がアレだが、今は良き!むしろカモン。


 あ、なにかドロップ出来るかな?

 二足歩行の魚たちは、サーモンとマグロ、そして秋刀魚さんま!骨と麻袋(これも中身はうろこでした)に変わりました。


 なぜ秋刀魚もマグロたちと同じサイズで大きいんだろうか。いや。考えても意味ないわ。秋刀魚だもん、どう見ても。ありがたや。


「お魚の在庫も増えてきて、嬉しいなぁ。みんな、魚食べられるといいんだけど」

 回収しつつ、みんなを見る。相変わらず楽しそう。


 黒龍のキースは飛行中。

 今は、恐竜…なんだっけ、プテラノドンみたいなのと対峙たいじしている。


 なぜかダンジョン内の魔物たちは、大勢で襲いかかって来る。そして、デカイ。

 いや、元のサイズを知らないけど、デカイと思うのよ。


 その大きさで攻撃もしてくるのに、動じることなく、キースは口から炎を吐き出す。

 グォーーーーーーー!!!

 っと広範囲に広がって放たれるドラゴンブレス。

 炎に包まれて落ちていくプテラノドンたち。ドラゴンブレスは、何度見ても迫力。圧巻!って感じ。


「ウズキ。上から落ちていく。当たることはないが、少し気をつけておいてくれ」

「分かった、ありがとう。キースも頑張ってねー!」


 キースから心配された。心配してくれる誰かがいるのは、嬉しい。


 おっと、プテラノドンのドロップアイテムは…肉と皮と、謎の瓶。さあ、どんどん拾うぞ。


「しかし、謎の瓶が多い。いろんな魔物が瓶を落とすよね。瓶の色や形がちょっとずつ違うんだなー」


 中身が分からなくても、みんなが戦った戦利品だからね!回収するよっ!


 …気恥ずかしいことを平気でやるけど、キースはイケメンドラゴンなので、戦ってる姿もかっこいい。くそぅ。


 フェンリルのパールは、今はこれまた立派な牛とバトル中。よく見ると豚っぽい魔物も混ざってる様子。


 パールは風魔法で竜巻を起こして、その風がするどやいばとなる。

 土魔法では、大量の岩?が一斉に飛んで貫通。もしくは地面から串刺し。

 ドロップ品で肉祭りになってる!少しゴワついた毛がついた皮(これは牛)豚はザラついた皮。そして瓶も落ちてる。


 回収してたら、パールと目が合う。

「ウズキも楽しんでるー?」

 パールは笑っている気配。超余裕。

 

「宝箱あるぞー」

 と、ヒトゥリーディアのリンが教えてくれる。

「ありがとうー」

 と、伝えて取りに行く。


 宝箱にたどり着くまでに、リンが倒したであろう魔物のドロップ品が、これでもかって程ある。拾いながら進む。

 

「これはカエルか…こっちはカラフルトカゲのだね」

 巨大サイズなのに動きが早い魔物相手でも、リンは負けない。むしろリンの方がひょいひょいと身軽で素早い。遊んでいるみたいに、戦い、その立派なツノからバチバチッと火花が出るほどのいかづちで倒す。


「魔法じゃないと倒せないなんて。ダンジョンって大変ね…それで前に進んでるんだから。みんな強いわ。…良し!宝箱ゲットー!

リン、ありがとー」

 と声をかけたら「おぅ!」って返事してくれた。


「ウズキー!こっちよ」

 パールが立ち止まって、呼んでいる。どうしたんだろう?回収しながらの合流は、少し時間がかかる。


「お待たせっ。どうしたの?」


 立ち止まっていても、戦いをやめない。いや、正確には、魔物が向かって来るから『やめられない』の方か。パールの周りはドロップ品が積み上がってる。


「ウズキ、宝箱。大きいわよ、開けてみたら?」


 巨大牛やらが巨大豚は、すごいスピードで突進して来るのに、全くどうじてないパール。ちょっとパールの後ろに行かせてもらって…って大きいな、この宝箱!何が入ってるんだろ?


 ここまでで、何個か教えてもらった宝箱は、その場で開けるひまが無くて、そのままアイテムボックスに入れてるけど、これは開けたい。

 ギィっと開ける。


「なにこれ??」


 古い本が数冊。そして、ひたすら麻袋や小瓶がぎっしりと。

 

 …よく分からない。本にいたっては、わたし文字読めないからね…。だけど全部回収しておこう。いつか字も読めるようになるハズ!


 せっせとアイテムボックスに詰め込んでいく。小さいのがたくさんって、これはこれで大変だなっ!

 なんとか全部詰めて、教えてくれたパールにお礼を。


 すると、体を擦り寄せてくれた。

 ふわふわな毛並みに癒される…目の前の光景が、ガァーーと鳴く巨大牛じゃなかったらもっと良いのに。はぁ、情緒がないよ。


「わたし、あっちにも行ってくるわ。じゃああとでねー」

 と告げて優雅に去っていく。


 辺り一面、パールが倒しまくった魔物のドロップアイテム。さぁ、拾おう。こういう地道な作業は嫌いじゃないしね。


「そろそろ日が暮れる。今日はこの辺にしよう」

 突然のキースの声に頭を上げた。


「わぁ、びっくりした!ダンジョンでも日が暮れる?…こんなに明るいのに?!」

 とりあえず、ドロップ品を拾いながら、みんなのところに向かうとしよう。


 夜ご飯、魚焼いてみようかな。魚なら、塩味でも大丈夫だし。

 リンには野菜を焼いて、とうもろこしも焼こう。あとは好きなスープとおむすび。


 んー、野菜たくさん買ってきたけど足りるかな?野菜もドロップ品で出たらいいのになぁ。

 次からもっともっと、野菜をストックしておこう。


「みんな、お疲れ様。凄かったね!ご飯作るね」

 合流した時は、みんなすでに人型になっていて、結界も張ってあるから安心してご飯作れる。


「あぁ、ダンジョンは楽しい。ウズキの食事も楽しみだ」

 キースが笑顔。


「規模が小さいダンジョンの割に、数が多いわ。ウズキ疲れてない?」

 パールがいたわわってくれる。

「腹が減った、飯くれー」

 リンは自由。


「みんなのおかげで、たくさんドロップアイテムがゲットできたよ!ありがとう。それで夜ご飯なんだけど…みんなお魚は食べられる?」


 確認しておかないと。みんなが食べないなら、少しはギルドに売ってもいいかもだし。


「食べるぞ。ウズキが戦っていた魔物たちだろう?」

「わたしも、もちろん食べるわよ」

 キースとパールは食べてくれる!良かった。


 リンは?と思ったら、

「うーーん」

 と腕組みしてる。やっぱり草食だから難しいかな?


「無理しなくていいんだよ?野菜あるから大丈夫だしね」

「まぁそうなんだけど…ウズキが狩ったやつだもんなぁ」


 そこ?!そこで悩んでくれてるの?

 リン…この子のこういうところだよっ!!この子もキースみたいな、いい男になりそうだ。

 いや、リンは十分、男前なんだけどね。


 ということで、魚です。

 マグロを焼く。おいしくなぁれー。


 マグロステーキ。そんなに焼きすぎない方が美味しいだろうな。すぐにキースたちに出せそう。

 リンには焼き野菜。とうもろこしも焼く。昼の残りの野菜スープを先に出したら、喜んでる。


「マグロだよ、どうぞー」

 キースとパールに出す。2人とも焼いてる魚を食べるのは初めてだって。ちょっとドキドキ。


 パクッとと食べたパールの顔が、ほころんでいく。

「おいしーーー」

 と、箸が止まらない勢いで食べるパール。キースも喜んでくれてるけど、どうやらパールは魚を相当気に入ったみたい。


「おかわり!」

 笑顔が可愛い。クスッと笑って、またマグロを焼く。もうひとつのフライパンはサーモンを焼いている。


 リンには焼き野菜を渡す。焼きとうもろこしを「あちっ」って言いながら頬張ってる。

 時間の関係で、おむすびは握れずに、ご飯を渡す。みんなおかずと一緒に食べてる。

 …お米も買おう。わたしもお米好きだし。


 手を動かしつつも、眺めていたら

「ウズキも食べろ」

 と、キースが目の前に差し出した。そのまま、あーん、とマグロをパクッと食べる。


「うん、魚、美味しいよ!たまには魚も焼こうっと。キース、ありがとう」


 パールも喜んでくれるし。魚の魔物を頑張って倒しておこう。

 それからサーモンも出したらパールが

「こっちも美味しい!」って。


 巨大牛も焼いてみました。牛も大変美味しかったです。すごく高い和牛!って感じ(予想)

 キースは牛を美味しそうに食べていて、やっぱり食は大切だなーって。

 料理本をもっと活かせるようになりたいよ。



「ウズキ、まだ休まないのか?」

 キースの声。人型になっている。起こしちゃったかな?

 

「キース。ごめん、もう少しだけ。ご飯炊いちゃいたいんだ。

 あと野菜スープもそろそろいいかなぁ?」

「ここは明るいが、外は夜だぞ?たくさん戦って疲れているのだ。早く休め」

 

 キースの声が心配の色を帯びている。ほんと、優しいなぁ。でも、ご飯作りは、わたしのやりたい事でもあるの。


「気遣ってくれて、ありがとう。あと少しだけ。ごめんね」

「…ウズキは変わらない」

 優しく微笑むキース。

「何のこと?」

 問いかけても、微笑んで髪を撫でられた。


「ここで見ているから。あと少ししたら休もう」

「分かった」

 そう約束したら、キースは少し距離を取る。横だとわたしが、やりにくいと思ったのかな?…そんなところも紳士だわ。


「ご飯、ご飯ー。

 うん、蒸らしもこのくらいで大丈夫かなー」


 アイテムボックスに鍋ごと入れる。

 先に出来上がった野菜スープも、鍋ごと入れました。便利だ…。

 この能力が、異世界転生あるあるスキルなのがよく分かるよ。


「キース、終わったよ。寝よっか?」

 そうだな。明日は下に降りるぞ。このダンジョンは出来てそんなに経っていないから、次の階で終わりだな」


 そうなのか。そんなことも分かるとか、すごいなぁ。


「次の階も楽しみだね!」

 言うと、少し驚いたような表情。…変なこと言った?


「そうだな」と頭を撫でられ、

「行こう」と2人の元へうながされる。


 元の姿になっている2人は寝ている。パールのモフモフに触れる。疲れているのに、明るくて眠れない。

 疲れすぎてるのかな?


「んー」

 とゴソゴソしてたからか、キースが大きな翼で視界を光からさえぎるように包んでくれた。


「ありがとうキース。…みんな、おやすみ」

「ゆっくり休め、ウズキ」

 下の階は、さらに強い魔物が出るのかな?怖いけど楽しみ。

 


「……ふぁぁぁ、おはよー」


 結界の外は一晩中、魔物がギャーギャードンドンしてくれて。まぁ騒がしかったです。

 その割に、眠れたのは、やっぱりみんなと一緒の安心感だよね。


 明るさの問題は、視界をキースが翼でおおってくれたから、感謝しかない。


「さて!今日は下に降りるし、楽しみだねっ」

 ご飯の支度をしながら伝えると、みんなも


「そうだなーっ!」

「楽しめると良いのだが」

「ワクワクするわね」

 と返してくれた。


 朝ごはんは、キースとリンは巨大豚肉と、ダンジョンに入る前にギルドでもらってたビッグバード。

 リンは、焼き野菜と野菜スープ。とうもろこしも。


 わたしは、おむすびをいただきました。みんなが食べている間に、茹でとうもろこしを作ることができて、満足。これでリンの好物がいつでも出せるね。


「では行くか」

 キースが言うと、みんな元の姿に戻る。やる気満々なのが伝わる。

 魔物の姿でも、感情が分かるようにはなっているのだよ。えへん。

 

「さぁ!次の階を目指してレッツゴー!!」


 みんな飛び出していく。と、キースが戻ってきた。どうしたんだろう?


「結界を張っているから心配するな。無理もするなよ、困ったら我を呼べ」

 と言って、きびすを返す。


「ありがとー!!」

 手を大きく振って、キースを見送る。


 みんな今日も楽しむだろう。ドロップ品払い、頑張ろうっと。

 


 

 

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