第13話 ご飯が美味しい!!

 ギルドのお勧め宿に到着!

 話の続きは明日ということになった。

 「明日、絶対ギルドに来いよ」とティムさんから念押しもされてしまったよ。


 宿ってどうなってるんだろ。

 2人は人間扱いか、はたまた従魔扱いか。従魔だったら外で寝ろとかになるんだろうか…悩んでいたらティムさんが『従魔と一緒で良い部屋』を押さえていてくれた。ちょっと変な顔されたけど…次はパールにお願いしてフェンリル姿になってもらうべき?

 ティムさんの紹介状がお役立ち。ちなみに安くなって素泊まりで銀貨8枚。

 …ほんとできる男だよ。何から何まで!今日は迷惑かけっぱなしだったし、なにかお礼をしたい。魔物をあげたら喜ぶのかな。それともギルドに難しい討伐依頼があるなら、キースとパールにお願いしてみるとか?

 ふむ。キースとパールにも相談しなきゃ。


 「ウズキ、お腹すいたわ」

 「我もだ」

 催促さいそくが。お昼が遅かったといえ、いろいろあったし、わたしもお腹すいた。でも、外食より前にチャレンジ!オーク肉を焼いてみようと思います。コンロ買ったし、魔石もある!!

 焼くだけなら、わたしにもできるはず。塩も買ったし。塩味続きで申し訳ないけど。

 部屋の中には簡素なシンク。なんと便利な。早速、コンロを出して魔石セット。フライパン。まな板と包丁に、メインのオーク肉の塊をドンっと取り出す。

 「美味しくできますようにっっ」

 肉に願いを。手で触れて言葉に出しつつ祈ってた。ほら、言霊ことだまって言うし。

 

 「そろそろ、焼けたかな…」

 「美味そうだ」

 「ウズキの手料理ね」

 2人が覗き込んで言う。

 「どうぞ召し上がれ。お昼と同じオーク肉だけど。明日はビックバードもらって焼こうね」

 「「同じ肉?」」

 「うん、飽きちゃった?今日は我慢してね」

 次の肉を焼きながら、答える。

 「昼間より美味いぞ」「同じと思えないわ」2人が言う。

 お世辞?いや、本気っぽい。そして、この2人はお世辞とかわたし相手でも言いそうにない。

 キースに呼ばれて、ひと口もらう。

 あれ?確かに美味しいよ!なぜ?昼間より柔らかいし、肉汁もジュワッと。

 オークだよね?何が違うんだろ??

 

 よく分からないまま次々焼く。

 2人は塩味だけの、わたしの焼いた肉を「美味しい」と食べ続ける。オーク肉の塊を5匹ぶん食べきっても、まだ食べる様子。相変わらずよく食べる2人。

 「美味しくなりますように」6つ目の肉の塊を引っ張り出してまたお願い。


 料理レパートリー増やしたいなぁ。料理本が欲しい…動けるうちに料理女子になってれば良かった。悔やまれる!いやいや、諦めるのは早いね!2人のために頑張ろう。

 

 どさっ!バサバサ!


 「うわぁ!!!」

 なんの音?!食事中の2人も立ち上がって振り向くき、わたしの元へ。

 「大丈夫か?」

 うん、何もない…いや、なくはない。足元に落ちてる。


 …本が。

 拾ってみると『初めての料理』『15分!メイン肉料理』『かんたん料理レシピ集』『誰でもできる!ラクチンご飯』


 「嘘…叶っちゃった…。やったーーー!!!

 うわーーーい!神様がくれたの?ありがとうございますーーーー!!」


 突然叫んだわたしに、ちょっとびっくりした様子の2人。

 「ウズキ、なにそれ?」

 「これ、料理の本だよ!これで2人に作って…あ、調味料なかった…」

 がっくり。喜んだと思ったら、凹むわたしを見て、背中を撫でてくれるパール。

 「この文字、読めんな。ウズキのいた世界のものか?しかし何故…」

 わたしを見つめるキース。

 「ウズキ、ステータスを見てみろ」

 「え?…ステータスオープン。あっ!」

 見えるところが少しだけ増えた!


 えっと…ここだ、

 【恩恵ギフト:想いの具現化】


 …また抽象的な。想いってなに?具現化って本のこと??

 2人に伝えるけど、2人とも見たことないと言ってる。


 「なんだろうね?

 2人に美味しい料理作れるようになりたいから、初心者用の料理本が欲しいとは思っていたけど。それを神様が叶えてくれたの?」

 「それだけで神が叶えていたら、キリがないぞ。他に何か思い当たることはないか?」

 キースの問いかけに、うーーーん、と考えてみる。


 「あ!そういえば、胸がぽわっと温かくなった。それって関係ある?」

 たどたどしい説明を。感覚だから難しい。


 「つまり、ウズキはわたしたちの事を考えてたらそれが起こったのね…それが何度か続いた。それこそが【想い】じゃない?」

 「嬉しいわ」とハグしてくるパール。

 「我々に対する想いの強さが神に伝わる。それこそウズキの恩恵ギフトなのだろう。自分に向けてのことでは発動しないのだな…ウズキは変わっているな」笑いながら頭を撫でるキース。

 「そうかな?そうだと良いな!でも、調味料が問題なのよ…でも諦めないよー!」

 笑って、頭をポンポンする2人。わたしは本気だよっ!!


 さぁ!2人のために肉を焼くぞー!

 明日はスープを習いに行く。野菜もほしい!

 明日も忙しくなる予感。わたしもお肉食べよーっと。


 その日の夜は、ベットから布団を下ろして床で3人で寝た。パールはフェンリルに。キースはサイズ的に黒龍にはなれず、ちょっと残念そう。…なんとかならないかなぁ。むぅ。

 パールにもたれかかり、ふわふわに包まれる。キースもパールにもたれている(パールは嫌そうだったけど)

 そしてわたしの真横で腕枕…。

 …恥ずかしいんですけど。イケメンからの腕枕。これ寝れる?恥ずかしくて眠れないんじゃないの??

 「「おやすみ、ウズキ」」

 2人に言われると、魔法にかかったように途端に眠くなる。やっぱり疲れてたんだなぁ。2人の温もりに抗えない。

 「おやすみなさい、また明日ね」

 また明日、と言える幸せ。本も神様からもらえたし、ご飯作り頑張るねっ…。


 朝。目を開けたら、飛び込んできたのは、キースの笑顔の破壊力!(飛び起きました)


 さて、ご飯の支度。

 といっても、オークしかない。んー、申し訳ないけど我慢してもらうか。

 本当はお味噌汁とか欲しいよね。

 ご飯も…そういえば、お米あったな。買ったな。作れたら、おむすびできるね。食べてもらいたいけど…料理本にご飯の炊き方あるのかね?


 パラパラめくる。あった、あったよ。ご飯の炊き方。鍋でも簡単に炊けるのね。あ、蓋がない。…やってみる?思い立ったら、やってみるべき??

 なんかやったことないくせに作りたい気持ちがムクムクと湧き上がる。おむすびが思い浮かぶ。ゴソゴソと昨日買ったお米と、オーク肉の塊を取り出す。

 お米…色違うね。白くないよ。なんだっけ?ぬかだっけ?緑だけど。中身は白いお米と信じたい。どうやったら別々になるのかな。


 「お米と糠、別にならないものか。うーん」

 フワッとお米が浮遊する。え?何事??

 フワッとしたままクルクルっと回転するお米。呆然と見てたら、白いお米が出てきた!

 「なにこれ?異世界もののチート能力か!」

 キースとパールも見ていて、

 「ウズキのいた世界ではこうなっているのか」

 と聞かれた。いやいやいや、魔法ない世界なんで!これは魔法!

 緑の糠もまとめてある。捨てやすいなー、と。


 んん?

 [糠:糠床ぬかどこ

 おおっ!糠床!お漬物まで作れちゃう!!捨てるところ無し!

 これも2人に食べてもらいたい!野菜がいるよっ。絶対買おう!!

 …どうやったら糠床になるのかな?毎日混ぜるのはいいとしても…これじゃただの糠。

 「美味しい糠床になれーー!!」とお椀に入れた糠に言う。…何も起こらない。現実は甘くなかったです。まぁいいか。仕方ないね。


 それより、お米の炊き方…目分量頼り。蓋もない。なんとかならないかしら?チート能力発動しないものか。

 心配だけど、やるっきゃないでしょ!2人から「美味しい」が聞きたいの!

 …平皿で蓋にならないものか。ダメかな。


 お米を水につけてる間にお肉を焼く。ジェネラルの方。「おいしくなれー」と念じて焼く。2人とも朝からもりもり食べてくれた。嬉しい嬉しい。

 さて、お米ー。えっと、米と水で強火…沸騰して弱火…弱火ってこんなもの?

 「混ぜて蒸らす!蓋を取る…あっち!」

 当然熱かった。むー、あと少しなんだけどな。横からフワッと浮く蓋。キースが魔法で持ち上げてくれた。

 「わー!ありがとう!助かるー」

 「なにが出来るの?」

 パールも覗き込む。

 「上手くできれば…おむすび、かなぁ」

 混ぜて蒸らす、っと。

 「美味しくできますようにっ!お願い」


 「どうかな」ドキドキしながら覗き込む。見た目はお米!フォークで少しすくって、モグモグ。

 「お米じゃん!わー!ご飯ー!」

 ちょっと硬い…実力が欲しいっ!けど、紛れもないご飯!

 「できたのか?」

 「うん!待っててね」

 熱さと格闘。そしてできた大きくていびつなおむすび2個。ひとつずつ渡す。

 「穀物か?うまいな」

 「ほんと。ウズキが作るとなんでも美味しいわ」


 オーク肉も美味しくなるとか、料理本とか、作る力は自分次第だけど便利になった!なにより2人が喜んでる!!!

 これは頑張るしかないでしょ!

 また、ぽわっと温かい感情が湧き上がる。この胸の温かさはずっと続きそうな予感。


 コンロもお米も。買い物リスト増える一方。お金の優先順位をきっちりしないと!!

 今日も頑張ろー!!

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