第7話 ギルマスは男前!

 ギルドマスターのティムさん、魔物解体の責任者?トムさんは腰を抜かしているけど。


 パールがフェンリル、キースが黒龍こくりゅう(黒龍って実はわたしは初めて知った)

 と、即見抜きパニックしつつも、理解しようとしている。

 さすが。絶対に冒険者時代は高ランクだったと推察。ラノベでは高ランク冒険者は見抜く力が抜群だものね。


 「俺が見たものは…いやでも。見ちまったしな。おまえさん…テイマーって限度があるだろ。何者だよ…」

 「ウズキです。テイマーです。わたしの大切な仲間を紹介しました!」

 「いや、だから…」

 「ギルマス、俺、初めて見ました。フェンリルも、黒龍も…」

 「…俺もだよ…」

 よっと、とよろけつつ立ち上がるティムさん。


 わたしに近づこうとしたティムさんを見て、サッとキースとパールがわたしを守るように前に出た。

 2人とも…どこまでも心強い。うぅ、泣いちゃいそう。


 「そう警戒しないでくれ。おまえさんたちを前に何ができる?

 喧嘩ふっかけるほど、こっちもバカじゃねぇ」

 「ティムさん…ありがとうございますっ!」

 ガバっとお辞儀。話がわかる人で良かった…本当に。


 あ、でも。

 「あの…さっきは、キースやパールの本来の姿を知らなかったから言ってしまったとは思うんですが、オークの集落を殲滅せんめつしたのはパールです。

 ティムさんが疑ってしまったのは仕方ないです。

 けど、それはパールのプライドを傷つけた。キースに対しても同じです。この2人は気高い。

 その気高さをわたしは尊敬しています。…2人に謝ってもらえませんか?」


 2人が振り返る。

 「「ウズキ…」」

 ガバっと抱きしめられた。むぎゅう。苦しい…嬉しい、けど苦しいー。

 ギブギブっと手でペチペチ訴える。

 2人が気付いて抱きしめる力が弱まる。

 「我がウズキを選んだことは、間違っていなかったな」

 「ウズキやっぱりサイコーだわ。ウズキだから、わたしも決めたのよ」

 「2人とも…ありがとう!」


 「そうだな。知らないからって全部チャラにはならない。疑ってすまなかった!」

 頭を下げてくれた。そんなティムさんに顔だけ向けて

 「ま、分かったならいいわ。ウズキがいなかったら許してないけどね」

 「怖いよパール!絶対ダメだよっ。わたしはみんなで平和に暮らしたいのー!」

 「そうだな」


 「ふむ。本当にお前さんの言うことは、よく聞くようだ。あの伝説級の黒龍とフェンリルがなぁ。

 さて、ウズキ。お前さんの信頼にこたえようじゃないか。

 どこから始めるか…冒険者登録をしに来たんだったな。

 いますぐしよう。Bランクだ。

 トム、悪いが受付でカードや書類をもらってきてくれるか?

 もちろん、ここで見たことは極秘だぞ」

 「分かってますよ。じゃあ少しお待ちを」

 いつのまにか立ち直ったトムさんが走るのを見送る。


 ていうか…あれ?あれあれ??


 「えっっ?Bランクって聞こえたんですけど…システムもよく分かってないけど、それってかなり上なんじゃ…?」

 「ん?上からS、A、Bで一番下がFだな。

 普通はFからなんだが。黒龍とフェンリルだぞ?通常で判断すること自体が間違っている。

 それにある程度、上にしておいた方が、他所よそからも手出ししにくいしな」

 「なるほど…」


 「それと、オークの集落の殲滅の件だが。規模を教えてくれるか?

 さっきジェネラルもいたが、キングもいたのか?」

 「あ、えと…その差が分からないんですが、全部で235匹でした。

 全部回収してますよ。素材?とかなるものは買取お願いできますか?できるならぜひ。わたしお金持ってなくて。

 あ、でもお肉はわけてください。2人を養う責任もありますしっ!!」

 「全部回収だと?…おまえさん、まさか…」


 え、やばっ。迂闊うかつなこと言っちゃった?

 キースとパールの目つきが変わる。

 「そう睨むな。分かってる。聞かなかったことにする。

 でも、ごまかす手段は持っておけ。アイテムボックスだけじゃなくて、そうだな…マジックバックみたいなものを掛けておくとかな」

 「なるほど…」

 いいこと聞いた。この世界にもあったわ、マジックバックが。

 布の斜めがけ鞄でいいのかな?用意しなきゃなー。

 しかし、テキパキ話が進むな。ティムさんできる男だ!すごいなギルマス!!


 その日のうちに、冒険者手続きをして。カード発行はさすがに明後日になるってことで、仮カード?をくれた。

 冒険者の証明証みたいな。通行証も兼ねているらしい。毎回お金がかかるのはキツイから、ありがたい。

 オーク全部を一度に買い取りは予算オーバーらしいけど、オークの肉は需要があるから売れるたびに、わたしがその分のオークの補充をしすることに。

 肉もいるけど、お金もいるからね!


 そしてそして!目の前には、念願のお金っ!!お金ですよっ!!わーい!わーい!!

 これはオーク討伐依頼の報酬金。

 「これでとりあえず生きていけるー!!」


 金貨170枚。

 相場がわからないけど、とにかくありがたい そもそもこの世界のお金の水準もまだ分かってないけど、大金の予感がする。

 今回はオークの集落の場所が街からほど近い、大きな街道に沿った所だったために、放置していたら冒険者も商人も動けない。

 街の経済が回らないという困ったことになったそう。

 その分上乗せじゃないけど、オークの解体料金をタダにしてくれるって!

 早速オークを数匹トムさんが手早く解体してくれてお肉もゲット!


 そして、やっぱりといえば、やっぱりなんだけど。

 キースとパールのことは秘密にできないって。

 「こんなのおとぎ話レベルだがな…」

 と言いつつも「現実だからな」「仕事が増える」とブツブツ言いつつ。

 ティムさんの頭の回転は早い。


 わたしが平和に暮らしたいと連呼してたから、この国の街、全てのギルマス、副ギルマス、とトップ数人にのみ伝えてくれるって。

 他国に行く時は念押しのため、それも一筆書き添えてくれるように依頼もしてくれるそうだ。

 もしろん極秘として。

 ただ各街への出入りの手続きもあるから最低限は伝わるぞ。許せよ。だって。


 ほんとーっに!できる男だよ、ティムさん!!

 初めて来た街が偶然ここ、ザンビアだったわけだけど。良かったなぁ。

 「ウズキ、おまえさんしばらくは滞在しろよ。

 宿はギルド推薦のところに俺が一筆書いてやるよ。その間、その金持って装備やら整えろ。

 ザンビアはこの国じゃ、規模もそれなりだし、いろいろと揃う。


 言いにくいが…その服、かなり目立つぞ?」


 はっっ!そうだった!わたしはピンク!そしてフリル!!

 パジャマでずっといたんだ!そりゃ目立つ。悪い方の意味で!!

 悪目立ちのおばさんが美男美女連れて歩いてた…怖すぎるっっ。


 「ティムさん!この街でのいい洋服店と武器と防具のお店、教えてください!!」

 「ん?あぁ。ちょっと待て。メモしてやるよ。

 ついでに俺の推薦も書いとくわ。ぼったくられることもないだろ」

 ティムさん!何から何まで。痒い所に手が届く!


 「あら、じゃあわたし服をが見立ててあげるわよ?」

 「今でもウズキに似合ってはいるが…目立つのはよくないな。行こう」

 2人に手を引っ張られる。


 「ゆっくり行ってこいやー」とティムさんの声。

 ティムさんになら、キースが穫ってきた名前も知らない魔物たち(高レベル魔物?レアっぽいやつ)売れないかな?

 うまくやってくれそうだしな。あとで聞いてみよう。

 

 ひとつ難関クリア!さて、買い物だー!!ピンクとお別れだよー!!

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