■遭遇_道路/11/12/03:57■

 対峙するバッタとの距離は10歩程。


 ギザギザの緑色の脚が凄まじい勢いで迫るが俺は微動だにできないでいた。


 嘘だろ?こんな終わり方ってないだろ、せめて少女か少年かくらい白黒ハッキリさせたかった。


 バッタの脚が喉を切り裂く瞬間、恐怖から目を閉じた。


 …こんな悪夢は認めないッ!


 真っ暗な世界がまぶた越しに急激に明るくなる。


 何だろう?死の直前に見るという走馬灯か?

 もしくは夢オチという事で朝日あたりだろうか?


 この理不尽な終わりから抜け出せるなら何でも良い。悪魔にでも魂を売ってやる。


「…少女かどうか確かめるまでは死ねない!」


 気がつくとそう叫んでいた。


「…起きてるなら目を開けたら?」

「あ、れ?」

「おはよう」


 目を開けると少女?がいた。あの喪服の子だ。


「あれ?ここは?」

「あなたの家」

「え?き、きみは?」

「ヤタロ」


 きょとんとした顔で応えられた。かわいい小動物を彷彿とさせる。


「…え?」

 

 いやいやいや、やたろう?


 何だ、どこからが夢で、どこからが現実なんだ?


―――――――

――――


 次回、第二章「加速する違和感」


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