第3話「おっぱい触れるならまぁ、いっか」


 それからというものの俺は奇天烈美少女島崎さんの話を淡々を聞くことに決めた。

 一体、何が宇宙人なのかは分からなかったし、もちろんどっからどう見ても人間だったので信じることはなかったがこういうときは優しく話を聞くことに限る。


 多分、島崎さんは前の私立高校でも嫌な思い出だとか、家族との間に亀裂が入っていたりとかそういう触れてはいけない記憶があるに違いない。


「ふぅ……」


 そう、息を吐いて呼吸を整えながら彼女がつらつら話す奇想天外、奇天烈な空想物語を聞いていた。


 まず、彼女の名前は島崎カエデというものではないらしい。島崎カエデはたまたま拾ったバンドのポスターに書いてあったミュージシャンの名前らしい。どこかで聞いた事があるなとは思ったがシンガーソングライターの名前だったとは思わなんだ。


 あの胸に釣られて名前どころじゃなかったしな。本当、綺麗で美しい美貌が故に騙されたぜ。


 じゃあ、いったい何が彼女の名前なのか。

 彼女の名前は——エルナ・リーニア・ファイナリーゼ。

 さっきも言っていた彼女の故郷である星『ファイナリーゼ』のお姫様だったらしい。いや、現在進行形でお姫様か。でもまぁ、この美貌でお姫様なら納得だ。


 正直、そこだけは異論はなし!

 いつの時代も姫は巨乳って相場が決まっているしな~~。


 んで、その故郷、地球から約10光年先にあるらしいファイナリーゼ星では長年種族間の戦争があったらしい。


 ファイナリーゼ族とエンジェリーナ族のに種族による世界戦争だ。

 

 ファイナリーゼ族は彼女——エルナの種族のことで、見た目はこの世界で言うエルフのようなものに近い。長命種であり、約250~350年、俺たち人間の2倍から3倍の時を生きるらしく、そのこともあってかエルナの年齢は45歳らしい。


 45歳って言えば俺の親と同じくらいだが……うん、そう考えるとなんだか萎えてくる。高校二年生に熟女趣味はないな。


 とにかく、綺麗で聡明で勤勉でもの凄い種族らしい。軽くエルフだと思えばいいかな。


 それでいて、対戦相手のエンジェリーナ族は名前から察する通りエンジェル、天使に近い種族のことで、この世界で最も清らかな心を持ち、頭には天使のわっか、背中からは美しき真っ白な翼、そして誰もが憧れる美貌を持つとにかく圧倒的な信仰深さを持った種族のようだ。


 しかし、その信仰深さが仇となった。

 異世界からきた闇の軍勢により神を愚弄され怒り狂ったことに戦争を仕掛けるも失敗し、敗走。さらにその流れで同じ星に住んでいたファイナリーゼ族にも戦争を開始した。


 最高の叡智である弐つの種族が戦争をしたことによって結果的にはファイナリーゼ族が勝利したが王家も軍隊も機能しなくなり、クーデターや革命が発生。


 そんな中、王様でもあるエルナの父は娘でも――と長年温め続けた地球に難民という形で送り込んだそうだ。


 ——うん。

 なんかすっごく泣ける物語だけど、虚構にしては出来過ぎだろ。できすぎ君よりもできてるし、いっそそれだけで一本の小説が出来そうな勢いまである。


 そんで非難した来たわけだが最初は服も大気圏中で解けてなくなったらしく、残った魔力で魔術を発動させ、この国の戸籍を改ざんさせ「島崎カエデ」という名前で生きることにしたらしいのだが……。


「それでね、わたしを追いかけるのよ。青くて変な帽子を被った集団が裸で家もない女の子を追いかけるってもう、紳士じゃないわよね? そう思わない?」


「国家機関にしてはやることがもう前時代的って言うか……まぁ、この国って色々と発展してないけれど」


 と同情を誘ってくる島崎さん。

 うん、それは国家機関だけど……警察官だよな。


 ほんと、交番の警官もお疲れ様ですって話だ。

 そりゃ誰もが深夜に真っ裸で走り回る美少女見たら追いかけるでしょ。公然わいせつ罪とかあるんだし。


 45歳じゃ普通に有罪だろうし、話だけ聞いたらただの痴女だからな!


「そ、それはまぁ……災難でしたね」


 とはいえ、これも奇想天外少女島崎カエデの虚構に過ぎないだろうけど。


「あ、あの……それで結局、俺はどうしろと?」

「だから、あの青い人たちから私を匿ってほしいのよ。いい?」

「……まぁ、大丈夫ですけど」


 なんか、嫌なことに巻き込まれたくないなぁ。

 絶対にありえないけど嫌だよ、そんな宇宙規模のお話に巻き込まれるのは。


 でもまぁ、一日くらいはいいよな。

 ふつうに、こんな美少女と話せるわけもない陰キャと一緒に寝てくれるって言うんだからさ。


 今日は文句も言わず寝るとしよう。


「どうせ、明日には疲れて家に帰るだろうしなっ……」









「ねぇ、何一人こと言ってるのよ?」

「え、あぁ――なんでもないですよ」

「そ……それじゃ、お風呂入りたいんだけど」

「お風呂? いいですよ、使ってください」

「使ってください? 君も一緒に入るのだけれども?」

「え?」

「おいで」

「あ、ちょっ、いやぁん! ぁぁぁあああああああああんんん!!!!!」




♡♡♡


「えぇ、知っていますよ。この国に宇宙人がいるんですよね。私が捉えて見せましょう」


 


 

 

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