第17話 サル達に異変

 握った石で、ボク殺する狩り、そんな狩り方では、素早く逃げる獲物は滅多に狩れなかった。

 自然に主食の食料は木の実になる。

 木の実や果物では、大量に摂取しないと、生命維持出来なかった。

 従って彼等は皆小柄だ。


 身体に合う、短目の弓矢を作ってやり、狩りのやり方をサル達に指導してやった。

 彼等は、サル真似は上手い、弓に矢も自作する様になった。

 矢尻には、薄い石を取り付けた本格的な矢だ。

 いつの間にか、素焼きの土器も自作してる。

 見た感じはサルだが、本質的にはヤマト族と大差は無い人達だと気付いた。

 ヤマト族も私が教えるまでは、火を利用する事も無く、生肉を喰う原始人とも言えない動物的暮らしをしてた。

 唯一の違いは、石を加工した打製石器の利用位だった。


 肉を分け与えなくても、自分達で野兔やネズミ等の小動物が狩れる様になり、食料の心配が無くなり、安全な暮らしが保証されたサル達、半年程経つとベビーラッシュが訪れた。


 ジャワ酋長が、妻のジョワとやって来た。

 ジョワは赤子を抱いてる。

「大酋長様!コノ子ニ、名ヲ授ケテ頂ケナイダロウカ?」

「ジャワの子か?」

「10日前、無事出産致シマシタ」

 ジョワが笑顔で答えた。


 私は赤ちゃんの顔を覗き込んだ。

「ん?顔が!!」

 新生児はしわくちゃのサル顔だが、10日も育つと顔はふっくらして来て可愛い。

 って事じゃ無くて!ジャワとジョワの子供は、サルじゃ無い!

 頭髪は金毛で身体は無毛、人間の赤ちゃんだよ!


 ピテカ族だけで無く、他部族の新生児も見て回った。

 驚いた事に、凡そ7割りの新生児が、人の赤ちゃんになっていた。


 この異常事態をユックリ考えたい為、ジャワの息子にアダムと命名し大急ぎヤマト族集落に帰った。

「「アダム!良イ名ヲアリガトウゴザイマス!!」」

 ジャワとジョワが最敬礼して喜んでた。

 落ち着いて考えられる場所、大地の裂け目に立っている。


「あの神域、ヤッパ何か有る!進化を促すウイルス?遺伝子を書き換える何か…ヤマト族が族長試練で必ず行く所、サルだったのは何百年も昔じゃ無い気がする」


(その『進化の素』と仮に名付けた物が、猿人達に影響を与えた?)


「想像だけど、間違って居ないでしょう」



「大酋長!焚き火の跡に、こんな物が有った、何だろ?」

 シルクが持って来た物は、銅鉱石から銅が溶け出し固まった物だった。

「銅?の色じゃ無い…金?」

 偶然銅と錫の合金青銅が出来て居たが、アミの知識では青銅は風化した緑色と思って居た。

 出来立ての青銅は、綺麗な金色をしてるが、その知識の有る人は少ない、アミも当然知らない。


「金かも知れない」

「キン?」


「シルク!金はこれだけ?」

「焚き火の跡、一面に有る」


 焚き火の跡に行ったアミは大喜び「大金持ちになった!!」

 アミは、金より、この時代には有り難い、青銅に気付く事は無かった。

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