第11話 神殿を漁る

 アンティックな、東京タワーの様な塔の近く、鳥居としか思えない、つる草が巻き付いた門を潜り、予想して居た通りショッピングセンター街に着いた。


「成る程!この取り合わせ、神殿と思えばそう見える」

 かつて住んでいた町に似た場所だが、つる草に覆われ荒れ果てた様子は、恐竜の森より不気味だった。


 まず目に着いたのは、無数に散らかった、使い捨てライターだった物。

 カチカチ試し、使える物20個程袋に入れた。

「これで、試練はクリアーだけど、鍋が欲しい」


 珍しく、全く無傷で建つビルがあった。

 半開きの自動ドアも、ガラスが無傷。

「ここが、サムソン族長の言ってた神殿だね」

 入り口近くは、外からの日差しで見えるけど、奥は真っ暗だよ。


「火災報知器にスプリンクラー生きて無いよね?」

 準備した松明に火を着けた。

 拾ったライターが役に立った。


「ラッキー!キャンプ用品コーナーだ!」

 コッフェルにハンゴウ、サバイバルナイフまで、ガラスショウケースに入ってたお陰?良い状態の物があった。

 サバイバルナイフも嬉しいが、十徳ナイフはもっと嬉しい!!

「ナタに斧も貰っちゃお、おぅ!調理ハサミ多数ゲット!!」


 まな板が無い現状、調理ハサミは包丁より有り難い。

 ステンレスの包丁に果物ナイフ、着火剤まだ使えるかは不明だが、一応持って帰る。

 簡易バーベキューセット、欲しいけど持ち帰れない、一番長い鉄串を持てるだけ持って行こう。

 グイグイ握って発電させる、ハンドライトを3個見付け躍り狂った。


「今日はこれ位で、許してやる!今度来た時は、根刮ぎかっさらう」悔し紛れの棄て台詞。

 これ以上は、恐竜の森通過がある帰り道、持ち帰り困難と諦めた。

 化繊の毛布を、風呂敷代わりにして包み込み、首に結んだ。


 こんな有意義な道具が無傷、荒らされて居ないのは、先人達おっかなびっくり入って来て、入り口付近に有った物を引っ掴んで逃げ帰ったからだよね。

 知らないと、この暗闇の中、何を見ても化け物に見えた事でしょう。

 特に、突然マネキンなんて見たら、おちっこチビるよね。



 後は来た道を、駆け抜けて帰るだけ。

 結構な重量運搬してるが、流石原始人の身体、苦もなく運べてる。

 恐竜も、戦い仕掛けないと襲って来ない、記憶が戻る前のアミなら、見付けると喜んで食べただろうヘビ、恐竜の森に居なくて助かった!毒蛇で無くても怖いよね。


 断崖の階段を登って無事帰還した。


 無事帰還を、皆は喜んでくれた。

 神から力と知識を授かったと、思われてる私の統率に皆が期待してくれてる。

 笑顔に取り囲まれて、ふと思った。

 つる草と、ネジくれた灌木かんぼく以外生物が居ない死の世界、放射能か有毒ガスの充満もしくは、感染率の高いウイルスが存在して居たのでは?

 でも、今まで探索した族長達、私にも異常は無い……よね?


 ……気にしてもしょうが無いか、原始人身体丈夫!!



 **********


 第1部終了です。

 第2部は、族長となったアミの改革、他部属の襲撃等を経て、アミが大族長になるまでです。

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