第10話 神域を行く

 予想して居た通り、神域とは荒廃した近代都市だった。

 鉄筋建造物は、殆ど瓦礫に変わっている。

 完全な瓦礫で無く、基礎の1階辺りが崩れず残って居てビルが建ってたのが確り分かる、ゴーストタウン化がリアル過ぎ!不気味だよ。


 化学の先生が言ってた、コンクリートは100年掛けて硬化し、100年掛けて劣化するって。

 200年経過したビルが、一気に崩壊するとは思えない、こんな状態は無人になって都市が死んで、何百年経てば起こるのか、もしかすると1000年以上?


 ガラガラッドスン!!

 直ぐ近くの物音に、ビクリと身体が硬直する。

 音の方向を見ると、自然崩壊の様だ。

 事情を知らない先人達、こんなの見たらさぞ驚いた事だろう。

 食べ物も無く、崩壊に捲き込まれる危険な場所を住処すみかにする物は居ないだろう。

 事情を知ってる私に取っては、安全な場所と言える。


 崩壊に気を付けながら、速度を上げて進む。


「この状態は、何故起こったの?紙の情報媒体、新聞などは残って居ないだろう、かと言って電子媒体は電気が無くては読む事は出来ない」

 文明崩壊の原因は、知りようが無い。


「ホームセンターっぽい建物見っけ!!」

 硬化ガラス製の、自動ドアだっただろう割れ残ったガラスに気を付けながら、中に入った。

 壊れた屋根から、日が射し込む内部はハッキリ見透す事が出来た。


 寝具のコーナーか、掴むと崩れる布団の様な物、唯一無事に残ってた、薄い安物っぽい化繊の毛布を引っ張り出す。

 瓦礫に埋もれた所には、使える物が有るかも知れないが、掘り出そうとして瓦礫が崩れ埋もれたなら、助けが来る事の無いこの地、絶体無理はしないよ。


 安物毛布でも今は貴重品、大風呂敷の代わりにも使える。


 次の一画には、鍋やフライパンなどの残骸が転がってた。

 特にアルミの鍋は悲惨な状態、酸性雨でも振り込んだ?

 白い泡の様な物が吹き出て、腐ってる。

 ステンレス製品も、条件が調えば錆びる、穴さえ空いて居なければ、磨けば使えたのに。


 ステンレス包丁でも有れば良かったが、刃物コーナーは見つけられなかった。

 瓦礫に埋もれて、探せる範囲は狭い、残念ながら、ここには使える物が無かった。


 毛布を腰に蒔き付け、瓦礫の街を進む。

 安全に、夜を過ごせる場所を探さないと、後1時間位で暗くなる。


 崩れ残ったコーナーに、アクリル板を持たれさせ、狭い空間に潜り込んだ。

 毛布にくるまり、干し肉をガシガシ噛み、水筒の水で流し込む。


 持つと崩れたが、兎の人形が転がってたこの廃墟、元の住民の暮らしを想像しながら、眠りに着いた。

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