第9話 大地の裂け目

 弓矢や投石器の考案製作、それに美味しい食事の供給の功績で、族長候補に私は昇格した。


 族長補佐は、族長指名でなれるが、族長候補は族長になる為、神の領域に行き神器を持ち帰る必要がある。

 大地の裂け目を降りて、魔物の森を抜け、神の領域に行き神器を持ち帰ると言うのは、それだけの力と勇気それに知恵を示すと言う事らしい。


 探険するのは、必ず単独で行う事って、ご丁寧に注約まで着いてる。


 シルクのお父さんが、現族長でお爺ちゃんが先々代族長、では先代族長は誰?って思うよね、それは先々代シルクのお爺ちゃんの弟が、族長候補になり試練を受けに行き帰って来なかった。

 族長候補が試練を受けている間は、前族長が、族長代理となって、一族を纏める。


 私が、族長候補になった時点で、サムソン族長は族長代理になっている。


 持参武器は、石槍二本、投石器、石の短刀にした。

 持ち物は、老眼鏡から外したレンズ1個、塩水に浸けて干し直した、マンモスの干し肉を袋一杯、小さい皮袋の水筒と言った、食べ物に飲み水。


 旅支度を調え、私は大地の裂け目を眺めてる。

 大切なメガネを落とさないよう、フレームの耳に掛かる前の所を、左右首から回した細い革紐で縛ってる。

 そのメガネで、初めてまともに大地の裂け目を見る事が出来た。


 何代も続いた試練、裂け目の始まりと、森を抜け遥か向こうに見える裂け目の終わり、どちらも上がり降りする為の階段が着いてる。


「何だ、思ったよりは楽な旅に成りそう」

 サムソン族長が教えてくれた、魔物の森改め『恐竜の森』は、「戦いは避けて通過する事のみを考え、恐竜から身を隠し速やかに駆け抜ける事」

 それを聞いて、靴擬くつもどきの予備を持って行く事にした。


 断崖の階段をユックリ降りて行く。

 降りきるまではユックリ、向こうの階段の方向を、確り見ながら降りる。

 降りきると、森林が邪魔して向こうの階段が見えなくなる、階段の方向を確り見据え、太陽を見て方向を確認する。

 東西南北を、誰も知らない様だけど、方向は真北だ。


 恐竜は強者、毒持ちとか姑息な種類は居ないし、蛇もこの森には居ない。

 夜は行き先の印を付けて、木に登り寝る。


 代々この注意事項は、申し送りだそう、これ程親切指導受けて試練達成出来ないのは、余程不注意か突発的事故に会うか以外考えられない。


 様子を見ながら、早歩きはじめた。

 恐竜の森なら、巨大な羊歯類しだるいか、イラストで良く見た、鱗が生えた様な木が有ると思うよね、所が繁ってる木はドングリの木ナラや松それに杉、後は知らないけど、普通の日本の山で見られる、ありふれた木だった。


 松は木肌がデコボコ、手足が掛け易くて、木登りが楽に出来た。

 心配してた恐竜は、確かにデカクて恐ろしい姿をしてる、でもお互い勝手に争い、小さな私なんか眼中に無く、見向きもされなかった。


 私達も、地べたを這いずる蟻んこ、あえて食べようとしないよね。

 3日で森を抜け、対岸の階段を登ってる、予想外にここまでは順調だった。

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