第1話-2 明日は

産まれて生きて死んでいく。

それはあっという間の出来事で。本当は待っている暇もないくらい貴重な時間。それに気づくのはお湯が溢れる間際のこと。




明日は特別な日だからね。今夜だけはゆっくりとお風呂に浸かるんだ。

あなたと私のお気に入りの入浴剤。何処かへ置いたままだったとっておきの入浴剤を持ち出して、最後のさいごを染めるんだ。




一粒の赤い球をお湯に沈める。お湯は真っ赤に染まっていく。

真っ赤に、真っ赤に、染まっていく。




あなたと最後に会った日からもう四十八日が経ってしまった。明日、私はあなたに会いに行く。

この体ひとつで、あなたに会いに行く。




ゆっくりと真っ赤に染まったお風呂へ体を沈める。綺麗にした体を、赤いお湯が包み込む。

あなたの好きだったガーネット。私も好きになったガーネット。この色で、さいごを彩らせてほしいの。

思い出の詰まった赤いガーネット。私の記憶を、最後にそれで塗り潰してほしいの。




もうすぐ日付が明日に変わる。

目の前が真っ赤に染まっていく。




とても綺麗なガーネット。赤に揺られて、私は眠る。

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