第5話
西川口駅で降りるて、駅前通りから陸橋通りに入って、陸橋とは逆方向に5、6分行った、中山道に近い辺りに、小川のヤサはあった。
1階が布団屋で2階から上が1Rアパートになっている。
誰も居ない部屋に入ると、玄関脇のキッチンの冷蔵庫からペプシを取ってきて、居室に入った。
机に腰掛けると、引き出しからアイコスを取り出して、タバコステックを差し込むと、すーっと吸い込んではーっと吐き出す。
吐き出された煙はエアロゾルですぐに霧散した。
とりあえずコーラを飲みながら一本吸い尽くす。
吸い殻は、薬瓶に入れてギュッと蓋を締めた。
さて、小川はベッドに移動すると、造り付けのクローゼットを開けて、ダンボールを出した。「自分が死んだら開けずに捨てて下さい」とマジックで書かれている。それを開けると数々の大人のおもちゃが入っていた。みちのくディルド、アナルプラグ、アネロスなどの中から、アナルビーズ(8連。先端のビーズは1センチ、根元のは2.8センチ)を取り出した。
とじ紐を3本つなぎ合わせて、アナルビーズのコックリングに結びつけた。
机の中にあったコンドームを取り出すと、アナルビーズにかぶせた。
(こういうことをするのはこれが初めてじゃない)と小川は思った。
(そもそも最初から、精通の時から、俺はおかしかった。
精通したのは中二だったが、あの頃は性に関しては全くの無知で、俺のペニスは、包皮がカリんところに溜まった恥垢にひっかかって剥けないでいたのだが、あれを無理に剥くと、えんどう豆の様に脱落するんじゃないかと思っていた。
それでも入浴の度に、少しずつ溶かしていって、そしてとうとうある晩剥け切った。
生後十四年にして、とうとう外気に触れた自分の亀頭。
最初は皮を剥いて突っ張らせて膨張させることだけで快楽を得ていた。
ただ、あの頃から 肛門の疼きはあって、自然とアナルをいじるようになった。
それがエスカレートして、ペンやらドライバーやらリコーダーを枕元に並べておいて、夜な夜なアナルへの挿入を楽しむ。
そうしてとうとう或る晩射精したのだが、それは包皮を強く剥く事と肛門への刺激のみによる精通だった。
だからって別にホモじゃない。
じゃあどういうプレイがいいのか、というと…)
追憶から目を覚ます様に頭を振ると、小川は、アナルビーズを持って、ベッドに移動した。
ベッドの向こう側の真ん中へんにクローゼットの取手あるのだが、そこに紐を縛り付けた。
ペペのローションをアナルビーズにたらすと、指先で入念に塗りつけた。
(これで準備オッケーだ)
ベッドに横になって、仰向けに寝て両足を開いてみたり、左横向きに寝て左手でハンケツを掴んで右手で挿入をこころみたり、結局、左横向きに寝て金玉鷲掴み、右手の人差し指でアナルビーズの一個目を肛門に押し付けた。
括約筋がビーズを押し戻そうとするが、力を入れると、ヌルッっと吸い込まれていった。二個目以降は、アナルビーズを引っ張れば括約筋が吸い込もうとするので、その勢いで吸い込む様にする。そうやって、とうとう8連の全部を直腸に入れる。
両手を前に回して、右手でペニス、左手で睾丸を握った。
そういう状態で、腰の動きだけで、アナルビーズを抜こうとしては、括約筋を締めて肛門内に吸い戻す。
アナルビーズの丸みが括約筋を刺激するたびにペニスがびくびくするのを更に手で揉む。
そして小川は妄想の中へ沈んでいった。
(ここはどこだ。
ここは京浜東北線の駅の医務室か。
俺は丹古母鬼馬二に切られた背中の傷の為にここにいるのか。
いや違う。
ここは警察病院だ。
俺は、京浜東北線で瀕死の重傷を負ったが、そこで、殉死する筈だったが、奇跡的に助かったのだ。
薄暗い警察病院のカーテンの向こうから、ナイチンゲールの格好をした関根惠子が現れた。
惠子はかがみ込んで俺の顔を覗いた。男前な顔が間近に見える。
「包帯の交換にきました」
ピンセットやガーゼの乗ったトレイをもったまま惠子は背後に回った。
それから、かちゃかちゃ音を立てて準備をしていたが、やがて、傷口に詰め込んであるガーゼを取り出す。
「いたッ」
「我慢して」言うと、惠子は背中で処置を続ける。
それが終わると、こっちの二の腕に手を乗せて耳元で
「まだまだ肉が盛り上がってくるまでには時間がかかりそうだわ」とささやいた。
「じゃあ体を拭きます」
惠子に背中を拭かれる。腰のあたりから、尻の膨らみのあたりまで拭かれる。
「あ、お尻の刃物の傷跡も消毒しないと。でも、大量の出血で肛門に血が流れ込んでいる。これだけ入っているとお湯で拭いただけでは無理ね。捲綿子で取り除かないと」
惠子はまず、尻のほっぺを広げて肛門を露出させて、大雑把に肛門周囲をタオルで拭いた。
それから、親指と人差し指で、ぐーっと肛門を広げると、捲綿子を挿入してくる。
血で汚れた捲綿子は鉄の皿に捨てられた。
惠子は更に指に力を入れて思いっきり肛門を開くと、二本目の捲綿子を突っ込んでくる。ぐりぐりぐり。
そして、汚れた捲綿子を捨てる。
やがて血は綺麗に取り除かれて、ピンクの直腸粘膜が現れた。
丸で十四年ぶりに恥垢が取り除かれた亀頭の様に綺麗なピンク色をしている。
「ほら、こんなに綺麗になった」惠子はこっちの二の腕に手を乗せると俺の顔を覗き込んだ。
「それじゃあ肛門の内側にクリームを塗っておきますからね。必要な処置ですからくすぐったがらないで」
言うと惠子は、クリームを乗せた指2本を肛門に滑り込ませてきた。
ずぶずぶずぶ。
「ああーっ」
「我慢して」
クリーム擦り込ませるために、肛門の内側にぐるり一周指を這わせた。
ぬるぬるぬる。
「あっ」
更にもう一周、ぬるぬるぬる。
「あーーーッ」
「はい終わりましたよ。今度は奥の前立腺の方にも塗りますからね。これは、治療上必要なことだから恥ずかしがらないで」
言うと指2本を付け根まで挿入させると、前立腺側を、ぐりぐりぐり。
「あーーーー」
「もう少し我慢して」ぐりぐりぐり~。
「おおーーーー」)
そしてリアルの小川は大量の射精をした。
ぴゅっぴゅっ、とペニスが痙攣する度に括約筋が閉まって、アナルビーズがギューッと吸い込まれる。
しかし既にそれは性的な快楽ではなくて、排便の際の肛門の感覚に成り果てていた。
はぁーと小川はため息をついた。
ティッシュの上に放射線状に撒き散らされた精液からは、かすかな栗の花の匂いが立ち上ってくる。
肛門からアナルビーズを取り出してコンドームを外した。便はついていなかった。
机のところに戻ると、丸で一仕事終えたみたいに、又タバコに火をつけた。
スーッと一吸い。
PCを立ち上げたるとyoutubeを開いた。
射精の後は何故か、プロラクチンが分泌されるからか、賢者タイムで、芸術的な気分になった。
(音楽でも再生しようか。でも今日は…)
再生したのは、「ロボコップ」一場面「Movie CLIP - Sayonara, RoboCop!」。
何時もこういうタイミングで見るのは、女の為に殉死するという類のものが多い。例えば「タイタニック」でローズの身代わりになって冷たい海に沈んでいくディカプリオとか。「砲艦サンパブロ」で揚子江の上流にキャンディス・バーゲンを助けにいって中国の兵隊に狙撃されて死ぬスティーブ・マックイーンとか。
しかし今日はより血なまぐさいのが見たくて「ロボコップ」の廃工場のシーンを再生した。
廃工場の水たまりにアン・ルイス隊員がケガをして尻餅をついている。
そこに銃をもった悪党のボス、クラレンスが迫る。
「バイバイベイビー」と銃口を向けるが…。
しかし、ロボコップ参上「クラレンス!」
と思いきや、子分のレオンが高所で、クレーンの操作室へ走って行くではないか。
アン・ルイスは対戦車砲バレット82に近付くが、
クラレンスは銃を捨ててニヤつく。「OK、ギブアップだ」
「もう逮捕したりはしない、処刑だ」
しかし、クラレンスはロボコップをおびき寄せていたのだった。
「まあまあ、ちょっと待て」
何も知らないロボコップは近付いて行く。
操作室のレオンが、モノレバーを操作して、UFOキャッチャーのクレーンみたいなのに掴まれている鉄骨をロボコップの頭上に移動させる。
「まあまあ、ちょっと待て」と更におびき寄せる。
ちょうどクレーンがロボコップの頭上に。
操作室でモノレバーを引くレオン。
大量の重量鉄骨がロボコップを直撃する。
「やったぞ、クラレンス、ロボコップをやった」
しかし、操作室のレオンはアン・ルイス隊員の放った対戦車砲で木っ端みじんに。
クラレンスは驚くが、とがった鉄パイプをもつと鉄骨の下敷きになっているロボコップを襲いにくる。
鉄パイプを振り下ろすクラレンス。
最初の2発3発は腕で跳ねのけるが、クラレンスは両手で握って振りかぶると、とどめを刺す様に胸部にぶっさしてて、ぐりぐりぐり。
「うぉーーーーー」と絶叫するロボコップ。
「さよならロボコップ」
ロボコップ絶命か。
しかし、ロボコップはデータアクセス用ニードルを手の甲から突き出すとクラレンスの頸動脈をぶっ刺す。
血しぶきがぷしゅー。
クラレンスはのたうち回って絶命。
あのままロボコップは殉職するのだろうか。アン・ルイスの見ている目の前で。
(俺も、関根惠子、或いはナンシー・アレンの見ている目の前で、絶命したい)
小川はスマホを出すと、トラニーのアリスにショートメールを送った。
>貸してくれた「ロボコップ」返さないと。
>youtubeでロボコップが、廃工場でクレーンで、
>鉄骨を落とされてぶっ潰れるシーンを見付けた。
>繰り返し見ている。
>そういえば、勤務先のマンションに崩れそうな足場がある。
>あれの下敷きになれば同じ様に死ねるのか。
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