何もしてないのに定期預金通帳の残高が減っていく!!
らんた
何もしてないのに定期預金通帳の残高が減っていく!!
「マイナス金利です」
「は?」
「ですからお客様、マイナス金利です」
なんとこの国は普通預金のみならず定期預金にもマイナスが付いていたのだ。当然当座預金にも。ATM手数料は付くし、通帳代まで取るのですさまじくマイナスである。人様のお金を集めて企業に融資するという銀行業という仕事の意味を忘れているのだろう。思わず日本ユニバーサル銀行R支店の窓口係に突っかかってしまった。
もう一回通帳を見てみる。
「マイナス金利 -0.3%分」
なんだ、これは……。
通帳を見て愕然とする。何もしてないのに残高がどんどん減っているのだ。逆に法人としてお金を借りるとゼロ金利となる。それでも設備投資意欲などこの国にはない。人口減・高齢化のオワコン国家なのだ。
そうだ、国債にしよう。10年国債ならこの国の役に立つしプラスだろう。安全な投資先だ。が、その希望が無残にも打ち砕かれる。「日本国債10年 -0.5%」とある。この国は事実上のデフォルト、つまり債務不履行を実施してるのだ。貸し手側の国民から金を巻き上げる政府って俺は初めて見た。
恐怖で汗がにじむ。
皆我も我もと金庫を買って自分で保管するようになった。銀行は倒産こそ免れたがもう世の中に必要とすらされなくなった。というか金庫に預ける人が嫌な人専用バンク、つまり「貸金庫業」に落ちたのだ。ゆえに銀行には「
認知症になった高齢者へのオレオレ詐欺はますます増えた。
デイトレやFXで資産を溶かすものが激増した。ブラックホールのように金がFX業者やデイトレ業者に吸い寄せられていく。デイトレ・FXというものが資産を溶かすギャンブルに過ぎないと気が付いたのか日本国民は一斉に株式市場から資金を引き揚げた。おかげで上場企業の筆頭株主はあちこちに「1位日本国営銀行 2位日本年金庁」という名前が付く。もう買い手が日本国政府しかいないのだ。つまり国有化である。それは事実上の社会主義を意味していた。もっともソ連よりもディストピアな労働地獄の社会主義国家の誕生だが。事実上の日本社会主義国だ。
やがて日本の別名は「東朝鮮民主主義人民共和国」、略称「東朝鮮」という不名誉なあだ名まで付いた。
資本主義とは金利で稼ぐのが原則である。
つまりこの国は資本主義ではない何かに堕ちたのだ。
西欧中世は表向き金利を禁止していたから中世封建主義社会に落ちた可能性が高い。暗黒の中世が再来したのだ。
ある日、朝刊の一面を目にやる。
『日本国政府 事実上のデフォルト マイナス金利1%へ』とあった。つまり-0.3%どころではない。-1%となったのだ。
その日の朝、国民は恐怖のあまり絶叫した。
冷静になれ、落ち着くんだ……。
コンビニに行くと缶コーヒーが450円・消費税別で売っている!
どうなってるんだ、この国は!?
慌ててコンビニを出る。
TVの字幕を見て驚く。
「1ドル325円」とあったのだ。円がゴミになっていた。よその国は金利を引き上げるのだ。こうなるのは必然だった。
「325円!?」
それは「輸入品由来の商品は庶民ではもう気軽に買えない」という意味であった。
輸出産業が儲かる?しかし日本企業はもう産業が空洞化して久しい。
日本が、終わった瞬間だった。
経済面を見る。「貿易赤字 半期で10兆5000億に達する」とある。
TVの画面が消える……。
電気が付かない!!
――ピーンポーンパーンポーン♪ コチラは防災R市デース 燃料費高騰のためただいま火力発電所が稼働しておりません。このため輪番停電中です。お手数ですが太陽光を設置して電気を自給してください ピーンポーンパーンポーン♪
携帯も通じない!! 信号が付かずあちこちで交通事故が起きる!!
「この国から出して!!」
◆◆◆◆
あれから20年……日本は発展途上国まで転落し、主要な産業は農林水産業と観光業と出稼ぎで得た給料の送金となった。
俺はベトナムのホーチミンで「おい! ポンニチ! 実習生だったときの恨みを思い知れ!」&「仕事おせーんだよ! ポンニチ!」と罵声を浴びながら外国人技能実習生として働いて日本に住む子供や孫へ送金している。
因果応報
何もしてないのに定期預金通帳の残高が減っていく!! らんた @lantan2024
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