第3話 大フィーバーで大混乱!?凛とみんなの夏休み!(3)




心配して下さるのは嬉しいですが、毎回、乱射事件には巻き込まれませんよ。




「油断はすんなよ、凛。あんまり・・・俺の側から離れるな。」


「え?」




ため息交じりに言うと、私の手を取る瑞希お兄ちゃん。




「あ、お、お兄ちゃん!?」


「会場は混むから、迷子になるなよ?絶対に、1人で行動するんじゃないぞ?」


「あ・・・は、はい。」




そう言いながら、私の手を握りしめる好きな人。


彼が私に触れてくれることが嬉しい。


嬉しいけど・・・




(・・・・・・・どうしたんだろう・・・・?)




最近の瑞希お兄ちゃんは、ちょっと様子がおかしい。


優しいのは変わらないけど・・・・






(やっぱり、あの時から・・・・)





―陽翔の時は助けなかったくせに!!―





(あの女が原因だよね・・・?)




心当たりが胸をよぎる。





(・・・・九條アキナ・・・・・・)





龍星軍2代目総長・伊吹陽翔さんの彼女で、なぜか瑞希お兄ちゃん達を恨んでいる人。


初代龍星軍メンバーに迷惑をかけることを目標にしてる危険な相手。


瑞希お兄ちゃんに大事にされているということで、私を焼き殺そうとした過激な女性。




(まさか、陽翔さんのお墓にお供えしてあったお花が、アキナさんからのメッセージだったなんて・・・・)




後になって可児君から聞かされ、ゾッとした。


前回のファーストコンタクトで、良い印象はなかったけどそこまで恨まれる意味がわからない。


おそらく、伊吹陽翔さんの死が関係しているとは思うけど・・・




(考えて見れば、私は伊吹陽翔さんがどんな風に死んだのかも知らない・・・)




瑞希お兄ちゃん達は自分達のせいで死んだとしか言わないけど、詳しくは聞いていない。


聞くべきなんだろうけど・・・





―凛・・・わがままな俺を許さないでくれ・・・!―



(あんなことを聞いちゃったからな・・・・・・)




聞きづらくて、未だに質問できないでいる。


何でも教えてくれる瑞希お兄ちゃん達が、話さない話題だからこそ聞きにくい。




「凛の準備が出来たなら、行こうぜ!」


「って、あたしがまだよ!」




私がモヤモヤ考えてるうちに、周りの時間は進む。


瑞希お兄ちゃんの言葉で、私の側にいた和装じゃない人が叫ぶ。





「モニカちゃん。」


「あたしが着替えるまで、待ってよぉ!」


「なんだよ、その格好で行くんじゃないのか?」


「馬鹿言わないでよ、みーちゃん!凛ちゃんのお着替えを優先して、自分のことは後回しにしてただけよ!」


「別に、そのままでいいじゃんか、モニカ?」


「絶対いやよ!!せっかくの花火大会よ!?夏のイベントよ!?こんなノーメークの部屋着で行くわけないでしょ!?」


「はあ?化粧まですんのかよー?」


「当たり前でしょ、みーちゃん!?」


「え・・・?モニカちゃん、お化粧しなくても綺麗じゃないですか?」


「あん♪凛ちゃんてば、上手いこと言うんだから~!!」


「わっ!?」




私の言葉に、満面の笑みでハグしてくるオネェさん。




「モ、モニカちゃん、苦しいです~!」


「あたしが美少女なんて、べた褒めしてぇ~!!」


「凛はそこまで言ってねぇ!」


「なによぉ、焼きもち~?」


「いいから離れろ!」


「いやぁーん!」




モニカちゃんにギューとされる私を、あきれ顔で引き離してくれる瑞希お兄ちゃん。




「あーら、ら。こりゃあ、まだ待たせる気かぁ~」


「ただでさえ、モニカは時間がかかるというのに・・・・これだから『女子』は・・・」


「わはははは!顔に無駄な抵抗するってかぁ~!?」


「なんですってぇー!?」


「お、落ち着いてください、みなさん!モニカちゃん、僕につきっきりだったから、自分のことが後回しになったわけで~!」


「あらん、凛ちゃんが気にすることないのよ~!モニカちゃんが、好きでしたことだからぁ~!」


「だからオメーは、凛にベタベタしないで、さっさと着替えろってんだよ!」


「今日のみーちゃん怖ーい!言われなくても、手早く用意しますよぉ~だ!待っててね、凛ちゃん♪」


「は、はい・・・」




私にウィンクすると、いそいそと着替え始めるモニカちゃん。


そんな彼女を残して、部屋から出て行く烈司さん達。


私も、瑞希お兄ちゃんに手を引かれて部屋の外へと向かう。


その後、モニカちゃんの着がえが終わるまで、1時間ほど待たされることになった。




〔★オネェさんの支度は時間がかかる★〕









和装ということもあって、会場までは車で向かった。


モニカちゃんが運転する真っ赤なオープンカーに乗せてもらった。


助手席に獅子島さんが乗る。


その後ろに私が乗り、両脇に瑞希お兄ちゃんの烈司さんが座った。


サイズのデカい百鬼は一番後ろ。


冷房の代わりに、風圧が私達へ涼しさを提供してくれた。




「間に合いますかね、花火?」


「モニカちゃんの腕を信じてよ、凛ちゃん。」


「お前のせいで、遅れたわけだがな。」


「円城寺達は、もうついてるみてぇだぜ?」


「大河達が場所取りしてくれてるんだよな?」


「わはははは!瑞希のためなら頑張るだろうぜ!」




2週間前、みんなで花火を見に行こうという話が出た。


言い出しっぺは円城寺君だったけど、それに瑞希お兄ちゃんが答えてくれた。


話は進み、今年最後の花火大会に新旧龍星軍全員で参加するということになった。


2人きりではないとはいえ、瑞希お兄ちゃんと花火を見に行けることに私はウキウキでした。




「凛は、花火好きか?」


「好きです。」


「今度はうちの庭で花火するか?」


「しますっ!」


「よし!打ち上げしような?ねずみ花火もな?」


「うん!」




瑞希お兄ちゃんと約束して楽しくなる。


良いことが待つ未来が、待ち遠しくなる。


こんな風にして彼は、私を幸せにしてくれるのだ。




「みーちゃんばっかり、ズルいわよ~凛ちゃん、モニカちゃんに言うことなーい?」




運転席のモニカちゃんが問いかけてくる。




「今年は凛ちゃんがいるから、頑張っておめかししちゃったぁ♪」


「浴衣姿、とても可愛いですね。」


「ホントに!?嬉し~♪」




モニカちゃんは本当にすごかった。







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