【頭出し】戦姫(バトル・アイドル)は今日も踊る(仮題)【プロローグ】
『残り10秒! これが最後のアタックになるかー!?』
場内のアナウンスと共に、会場のボルテージは一気に上がる。
左手に剣を抱えるように持ち、天地逆で空をくるくると舞うあたしは、着地の位置と
全身の筋肉が悲鳴を上げていて、そのまま倒れ込みそうなくらい苦しいけれど。
でも。最後はキメる。
絶対に――!
「奥義! ギガ・エアリアル
着地と共に深く屈みこみ、一瞬だけ溜めを作ると、目の前の
カウンター気味に入った
『終了ー! まさに圧巻の
円形になった会場の中心にいるあたしは、ゆっくりと立ち上がると、地鳴りのような歓声を浴び続ける。
心地よい疲労と相まって、それはどうしようもなく幸せで、まるで夢の中に居るようで――……。
「はっ?!」
目を開くと、そこはよく見慣れた自室の光景だった。
天井の照明は暗く、左右を見ると本棚やクローゼット、机などがいつもと変わらない日常を示している。
「夢……夢オチかあ」
思わず笑いがこみ上げてくる。
こことは違う世界で、今より小さい頃のあたしが、戦っていた。
いや、戦うというよりは、まるで戦いの踊りを舞うゲームをしているような、そんな感じだった。
「ふふふ、変なの」
運動神経皆無、中学高校と体育の通知表は進学出来るスレスレのあたしが、あんな凄い動き、出来るはずがない。
「もうちょっと見ていたかったなあ……」
と、春が近くなったとはいえ、まだ肌寒い朝の冷え込みを感じながら、毛布を目深に被ると再び眠りに就く。
デジタル時計をちらりと見ると、時刻は3:58、日付は4月2日。
エイプリル・フールは、もう終わりを告げていた。
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