【リハビリ】推してたVtuberがNTR結婚報告しまして、最後に面見せてきたら小学校の時結婚の約束をした幼馴染でした(仮題)【プロローグ】

 いずれこういう時が来るのは、わかっていた。

 目の前の配信タイトルは【だいじなおしらせ】。

 映っているのは、俺の推しである、人気Vtuberの【うたゆたう めりる】だ。


「りるばんわー、めりるだよ。突然ですが、大好きなピたちにご報告だよー」

『!!』

『!?!!!』

「りるばんわー」

『りるば』

『待ってた』

『すこすこ侍』

『コラボ案件の話なら”ex”でみた』

『すこ過ぎるので死んでいいですか』


 この短いフレーズだけで、大量のコメントが投下されていく。

 俺も、息をするようにスパチャを投げ、アピールをする。

 ただ、今日に関しては声色からして少し違うのを感じていた。


「ふへへ、実はですなー、ボク、結婚することになりました!」

『は?』

『!??』

『ありえん』

『設定年齢的に無理やろ』

『俺とか……ついに来たな』

『めりるなら俺の横で寝ているが』

「……いやマジか、マジ?」


 ディスプレイの前の俺は、コメント通りの言葉を発しつつ、目の前が一瞬暗くなるのを感じた。


「お相手もゆっちゃうね、ボクの本ピは、昨年コラボってたyoutuberの【ろきぷP】だ! いぇーい、いわゆる、たまのこしー?」

『いやいやいや、めりるの方がもう格上じゃね』

『ねーわ』

『ねーよ』

『ゆるして』

『つか、くそぷPじゃん、あいつこの前アイドルと寝てただろ』

「おっと、残念だけどこれマジだからねー、■■ちゃむよりボクの方が良かったということなのだよ、いろいろと……たとえば、カラダの相性とか?」


 阿鼻叫喚で滝のように流れていくコメント欄に横目で見ながら、俺はコメントを打つ気力もなくなり、だらんと手を両ひざの間におろした。


 いや、嘘だろ……。


 めりるとの出会いは偶然だった。

 Vtuberは初回配信前に”ex”などで事前宣伝するのが基本デフォだ。

 そこで、たまたま流れてくるそれを見かけて、見に行ったのが始まりだ。

 初めての配信で、少し上ずったような声が新鮮で、どことなく知っている声によく似ていたのもあり、すぐにチャンネル登録し、気が付いたら毎回追いかけるようになっていた。

 それから、すぐにビビッて置きにいくのに変なところでウケが良く、テンポも距離感も絶妙で、自爆地味な性格も相まって、すぐに人気VTuberへの道を駆け上がっていった。

 そんな彼女に俺は、ずっとスパチャを送り続け、固定ハンドルネームコテハンだったのもあって拾ってもらえる回数も多く、何か特別なものをずっと感じていた。


 けれど、その結果がこれだ。


「さぁて、実は本題はこれじゃなくて、もっとサプライズがあるんだぞ、おまえら」

『信じてる』

『ここは、夢オチだろ』

『もしかしてあれじゃね、ろきぷPが漏れというオチでは』

『しゅき』

『もっと来いよ』

『あたしは全裸待機してます』

「いいねえ。じゃあ、テロップどどん【面、晒します!】」

『?!』

『!!!?』

『いや、ブス』

『知らんけどこわ』

『待ってた』

『待ってました』

『その顔を見たものは死ぬという』

「いや、やめとこうず、悪いこと言わんから」


 思わず、手が動いてコメントする。


 さすがにリスクがありすぎる……!


 VTuberの外側、いわゆる皮は当然だが、リアルの人間よりデフォルメされた、だが、二次元ではいわゆる美少女、と呼ばれるものが使われている。

 それに比べて、生は普通に考えればどうしても見劣りする。


「おっと、”まんざらよしと”くん、やっとコメ来た。心配してくれてありがと。でももう遅いず? ふふー、いくよん」


 アバターが解除され、生身の女の子が映る。

 そこに居たのは。


『うおおおおおお』

『くそぷP氏ね』

『顔面偏差値エグ』

『永久保存しますた』

『マジか』

『一妻多夫させろや』

「おい、嘘だろ……やめてくれよ……」


 周りのコメントと、俺は明確に違っていた。

 なぜなら、俺はその顔を、そしてその声も、知っていたから。


「ね、よしと。あたしだったんだよ、めりるは」


 めりるの中の人は、小学校の頃まで一緒だった、将来を誓い合った相手、花井りる本人だったのだから――。

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