ミカエル
「いったい俺をどこへ連れて行くつもりですか? 」
ミカエルは俺の手を掴み離そうとしない。
俺はそんな彼女につき従ってただ歩いている。
「場所ですか? それは私達の秘密の場所ですよ。」
ミカエルはふふふっと俺の事をペットでも見るかの様な目で見て笑った。
そんな彼女を見て俺はゾッとした。
これではどっちが悪魔だか分からないじゃないか?
俺は少しでも気を紛らわそうと話題をかえた。
「ミカエルはなんで俺なんかの執事なんか勤める事になったの? 」
「『武様が世界の大魔王となる筈だから仕えなさい。』と天からの指令があり、それに従いました。」
「ナルホド、俺は大魔王になるんだね? 」
「それは分かりません。私はそう成れる様に武様をお手伝いするだけです。その為に着々と準備をしてきました。」
・・・準備ってなんだ?
まさか悪魔の人体実験とか・・・?
なんだか不安で一杯になるが・・・
オイ! 悪魔の俺がビビってどうする?
俺は顔に出ない様に注意しながらミカエルを見下ろした。
「今までは俺の為に苦労かけたね。これからはもっと忙しくなるだろうけどヨロシク頼むよ。」
ミカエルは嬉しそうに俺を見て微笑んだ。
「モチロンですわ。武様が復活されて私もこれからが楽しみですから・・・」
しばらく歩き、ミカエルは俺を倉庫の様な工場の様な場所に連れて来た。
ミカエルはまるで自宅に入るかの様に鍵を回し入れ扉を開けた。
内には新聞社の様な印刷機械らしいモノが置かれインクの匂いが工場内に漂っていた。
「ミカエル、ココで俺達は何をするんだい? 」
ミカエルは俺の目を見つめてニコッと微笑む。
「ココが武様の夢を叶える場所ですわ! ココにある輪転機でお札を刷ればいくらでもお金が手に入ります。どうぞご自由にお使いください。」
「輪転機でお札を刷る? つまり、偽札を作るって事? ・・・それって犯罪だよね? 」
「ニセ札ではありませんわ。ホンモノのお札を刷るのですから。こちらをご覧ください。」
ミカエルは俺に1万円札を一枚手渡してきた。
紙の質感や印刷の正確さ、透かしもありオマケにホログラムまである。
インクのニオイもお札の匂いだった。
見た目はまさにホンモノだった。
「これ、自動販売機も普通に通るの?」
「えぇ、ホンモノと同じ磁性インクを使っていますので問題なく通過します。」
このお札を作る凄い技術に俺は言葉を失った。
「ところでコレ一枚作るのにいくら位かかったの? 」
ミカエルは少しだけニタッとして答えた。
「ハイ、これ一枚だけでしたら三億円位ですかね? 」
三億か?
一般人なら三億円使ってこんなバカな事するヤツは居ないだろうな?
普通なら一発で捕まりそうな気がするし・・・
「本当にコレ使って大丈夫なんだろうな? 」
「心配ですか? 実は既に審査はパスしています。」
「えっ、審査って何? 」
「私の知り合いで造幣局で最終検査をしている人が居るんです。その人に『コレ偽札じゃないよね?』って見せたんです。そしたらその人は『偽札じゃないよ』って言ってくれました。」
「いつも一万円札を検査している人にお墨付き貰ったという事だね、スゴイ。」
辺りも薄暗くなり始めている。
俺はこんな非合法な工場の灯りを点けてあまり目立ちたくなかった。
そんな理由から今日俺はとりあえずその一枚だけを預かって帰る事にした。
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