幕間2

「大方、上手くいったようですね」

 白髪の妖怪がちゃんと命令通り、私の下に帰ってこようとしている様子を確認して、そう呟く。

 ここまで上手くいくとは思わなかった。

 最初の方は順調だった。

 私が夜烏を裏切って、初めて会った妖怪があの白髪の妖怪だったことを含めて、本当に順調だった。

 夜烏の時に得た監視カメラの位置などの情報から、誰にもバレることなく、妖力の多い一般人を連れてくることで、妖力は徐々に集まってきた。

 白髪の妖怪はもちろん、影の妖怪も中級であるとはいえ、相手に気配を察知されにくく、結界を張る技術も高いといった連れ去るのに有用な存在がいたことも運が良かったと言えるだろう。

 五人目までは。

 そこで、八咫烏第五烏の中嶋景虎に見られたのが想定外だった。

 まあ、いつでもあの妖怪を切ることができるように事件現場から近くで監視カメラに映るようにしていたので、予防線を張っていてよかったとは思った。

 だが、それにより裏で糸を引いている人間がいることが、夜烏側に明らかとなってしまった。

 そこで、たまたま知ったこの朝陽市に住んでいる西条正人に目を付けた。

 西条正人は京都事変の英雄と呼ばれた男だが、それ以降、蓬莱を辞めて姿を眩ませていた。

 夜烏とも蓬莱とも今は繋がりがなく、祓い屋の中でも有名な実力者で、妖怪を操っていてもおかしくない妖術師。

 これほど、うってつけの偽の黒幕はいないだろう。

 白髪の妖怪に、西条正人のことを吹き込み、西条正人に接触させた。

 正直、西条正人のことについて詳しくなかったため、接触していたという事実以外は何も期待していなかった。

 しかし、西条正人はあの白髪の妖怪のために積極的に動いてくれた。そのおかげで夜烏の戦力は西条正人と白髪の妖怪に注意がいった。

 最終的には、面倒だと思っていた景虎も西条正人によって倒された。

 私の計画完遂まで、後数時間といった時にだ。

 そして、予想通りに白髪の裏切りに対応できず、あの白髪がこちらに戻ってくることを許している。

 ここまで順調に事が進んだことに私は笑みを隠せない。

「ハハハ! ここから私が負けることは流石にもうありえないでしょう」

 いくら、西条正人が動こうとも、八咫烏はもう散り散りになっており、私を止めに来れない。

 十席を動かすとしても、動かせてせいぜい三人だろう。それでは、私の計画が終わるまでに止めることはできない。

「西条正人も、思ったより大したことなかったですしね」

 京都事変の英雄、そう言われていたのはやはり、契約妖怪であった九尾のおかげなのだろう。

 妖力も大したことないし、御符術も景虎を倒したとはいえ、長期戦には向かず、今敵として現れても、すぐに倒せるだろう。

「思ったより問題ないようでありがたかったです」

 目の前にある装置を見上げる。

 装置の横に付いた妖力量を表した目盛りはもうすぐ満タンとなる。

「さあ、新時代の開幕はもうすぐです!」

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