幕間

「ははっ! ここまで上手くいくとは思いませんでした!」

 思わず今の状況に笑いが込み上げてくる。

 現在、夜烏のほとんどは東京での捜査に駆り出され、残りの者は神隠し事件の調査に動いているが、その矛先はあの白髪の妖怪と西条正人に向いている。

「それにしても、あの白髪がここまでよくやってくれるとは……。本当にうれしい誤算です」

 本来の計画では、少しの間白髪に夜烏の注意を引いてもらうつもりだった。八咫烏も出てきている中、五日も逃げ続けることができるのは予想外だった。

 だが、そのおかげでこの計画は成功しそうだ。

「神隠し事件を追っている夜烏は裏で動いているのは西条正人だと誤認している。西条正人は京都事変の英雄と聞いて警戒しましたが、思っていたより大したことないですね」

 あの白髪が西条正人と接触してからの行動はたしかに最善といえる手を打っているかもしれない。ただ一点を除いては……。

「私の計画を狂わせる可能性があるとすれば彼だったのですが、どうやらその心配はないようです。最期の最期になるまで西条正人はこの神隠し事件の真実に気付けないのですから」

 ここからどうやってもこの状況を覆せる者など存在しない。

 私の障害となりうる全ての祓い屋の動向も常に確認している。万に一つも負けはない。

「では、そろそろ動いてもらいましょうか」

 連れ去ってきた人以外誰もいない部屋の中、そう呟いた。

 辺りの暗闇からそっと影だけが現れる。そして、私の命令に従い、外に出て行った。

「これで詰みですね」

 そろそろ、西条正人と夜烏が動く頃だ。

 最後の罠はもう張った。

 後は、彼らが罠にかかり、目的が終わるまで誰も邪魔させないだけだ。

「もう少しなのですから、誰も邪魔をしないで欲しいものです」

 横にある巨大な装置とその近くにいる鎖で繋がれた六人を見ながらそう呟いた。



 

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