二章 十の席に選ばれし者➆
「ここが資料室だよ」
「わあ、すごいなの」
「俺がいた時よりだいぶ綺麗になっているな」
資料室に着いた俺とハクは感嘆の声を上げた。
資料室は現代の図書館のような造りになっていて、俺がいた頃のような和風で古いさびれたような部屋の印象も全くなくなっていた。
「京都事変の後、夜烏と協力することも多くなって、それに伴って資料も多くなっていったからね。増築を兼ねて改築したのさ」
「すごい。パソコンも置いてあるんだな」
「そのパソコンから全国の防犯カメラの映像を見ることもできるよ」
「妖怪も対応したやつか?」
「妖怪に対応したやつだよ。一般にも知れ渡ったから、妖怪対応の防犯カメラの設置も捗ったんだよね」
妖怪対応の防犯カメラは、妖怪も見えるようにした防犯カメラのことだ。
普通の防犯カメラでは、実体のない妖怪までは写すことができなかった。
妖怪の動向を追う際、妖怪も見える防犯カメラがあれば便利ということで作られた。
昔は、その防犯カメラを見るために、わざわざパソコンを買ったが、今では資料室でも見れるらしい。
「防犯カメラの映像も見たいが、まずは概要を見た方が良いか」
「あれだったら、俺が取ってこようか。神隠し事件の資料」
「いいのか?」
「どうせ、正人がいる間は資料室から離れることはできないしね。ハクを借りていくよ」
そう言って、ハクを連れて、奥の書棚に姿を消していった。
資料室に蓬莱以外の者を入れる時は、十席の許可と監視下でしかできないと決まっている。そのため、俺がいる間、許可を出した風真は俺の監視を行う必要がある。
今回の行動はある意味では駄目なのだが……。
「なんだかんだ、協力してくれるのはありがたいな」
俺はパソコンの防犯カメラをチェックし始めた。
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