二章 十の席に選ばれし者➂
「それじゃあ、今度こそ依頼の話を……と行きたい所だが、先に晩飯を食わせてくれ」
早めにハクの話を聞いておきたいが、時計の針はもうすぐ九時を指す所だ。
お腹ももう限界らしく、ぐー、と鳴っていた。
「分かったの」
立ち上がって台所に向かって、足を運ぶ。
本当は買ってきた食材で料理を作るつもりだったが、あまりハクを待たせるのもどうかと思うので、簡単にカップ麺にするか。
そう考えながら、台所に向かっていたが、ハクはそれに着いてきた。
「どうした?」
「ご飯がどんななのか気になるの」
「……ああ、お前ら妖怪はご飯を食べなくても生きていけるからな」
妖怪は、ご飯を食べなくても生きていける。だから、食への興味が薄くご飯を食べるということもしない。
食べるとしても、人や妖怪を食らうことで力をつけるための手段としか考えていない妖怪も多い。
妖怪にとっては食自体珍しかったりする。
「じゃあ、ハクも食べてみるか? ちょっと時間はかかるが、作れるぞ」
一人暮らしだが、たまに陽が急に遊びに来たりするので、二、三人分くらいは作れるようにしてある。
「お願いするの」
「ちょっと待ってろよ」
さて、何を作るか……。
とりあえず、ご飯を早炊きするとして、おかずは何にしよう?
今日買ってきたばかりだし、鮭でも焼くか。後は、味噌汁も作って……。
横でじっとハクに見られながらも、手際よく調理を進めて、数十分後。
「これで完成だな」
お盆に料理を載せて、テーブルに置いた。
ハクはご飯を食べたことがないようだから、箸の代わりにフォークにしておいた。
時間もなかったため、普通の焼き鮭と豆腐の味噌汁、ご飯、そして付け合わせの沢庵を添えたこれぞ和食といえる品だ。
「……これが、人が食べている物」
興味津々にお盆に載った品々を見つめるハク。
あまり顔に出ないため分かりにくいが、食べたくてうずうずしているように見える。
「じゃあ、冷める前に食べるとするか。いただきます」
「い、いただきます」
慎重にフォークを手に取り、それを鮭に刺して口に運ぶ。
「お、美味しいの~」
「そりゃ良かった」
余程美味しかったようで、味噌汁やご飯も椀を持って一気に口を運ぶ。
先ほどまで泣いていたため、元気になって良かった。
「さて、俺も食べますか」
まだ何も進んでいないが、これからのことを考えると、ゆっくり食事などする時間はなさそうだ。
今の内に味わって食べておくか。
そう思いながら、鮭を口に運んだ。
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