第34話 「コウ、さっきから私のこと放置しすぎ。私は放置で成長するゲームのキャラじゃない」

「お、虹くんや。今日も別の美少女連れて仲良く登校ですかい? いやはや、罪深い男ですなぁ」

「橙弥、そのノリやめてくれないか?」


 登校するなり、俺は橙弥にダル絡みされる。最近ではこんなことばっかりだし、いい加減慣れてきたが、まぁめんどくさいのは変わらないので、橙弥には自重してもらいたいところではある。


「あ、そうだ。最近は、学校全体がお前のうわさで持ち切りだぜ。『5大美少女全員を侍らせてる男がいる!』ってな」

「言い方に悪意しかないんだよなぁ。まぁ、周りからしてみればそう見えるのも当然か」


 ただまぁ、こういう噂は気にしていたところでキリがないので、気にするだけ無駄だ。そのうち、その噂もなくなることだろう。


「コウ、さっきから私のこと放置しすぎ。私は放置で成長するゲームのキャラじゃない」


 ふくれっ面で俺の腕を掴んでくる白亜。どうやら完全にお怒りの様子。あんまりひどくなる前に宥めてやらないと。


「そうだな。今日の主役は白亜だもんな。許してくれ」


 そういって優しく頭を撫でてやると、白亜は「ん‥‥それでいい」と満足げな様子。俺の幼馴染5人は、多少機嫌を損ねても、こうして頭を撫でてやればもとに戻るので、扱いには慣れたのだが、どうにもチョロすぎて心配にはなる。


「ん‥‥満足した。今日のコウは、定期的に私の頭を撫でるべき」

「はいはい。仰せのままに」

「お前ら‥‥イチャつくのは構わねぇんだけどよ‥‥もう少し場所をわきまえたらどうだ‥‥?」


 橙弥にそう言われ、俺は慌ててハッとする。そして、周りの様子を確認して、思わず「ヒッ」と小さく声を上げる。


 クラスメイトの男子からは「アイツ‥‥殺す」「5大美少女とイチャつくなんて‥‥ギルティ」など怨嗟の声が聞こえてくるし、女子は好奇の視線を向けてきている。


 そして一番怖いのが

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

「ひぇっ」

 ニコニコと笑顔で、けれど無言の圧を放ちながらこちらを見つめている、白亜以外の4人の幼馴染。

 もう、すごい。とにかく怖い。とても5大美少女とは思えない、負のオーラを放っている。


「うん、時間ピッタリ。作戦通り」

 白亜は白亜でなんか不穏なこと呟いてるし、橙弥は呆れた様子でため息をついている。


 誰か助けて‥‥殺されちゃう‥‥


「こーうーくん?」

「はいぃぃぃぃぃ!?」


 いつの間にか近づいてきていた朱莉に、俺は思わず背筋を伸ばす。

 圧。とにかく圧を放ちながら近づいてきている。俺に向けられる笑顔は、目が全く笑っていない、偽りの笑顔なのは、容易に分かった。


「また今度、詳しくお話聞かせてね」

「もちろん、私たちにもですよ?」


 朱莉の言葉に続いて、翠も有無を言わせぬ雰囲気で迫ってくる。蒼も紫夕も、その後ろでウンウンとうなずいている。


「はい‥‥わかりました」


 俺は幼馴染4人の圧に屈して、そう素直にうなずくしかなかった。

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