特別編『バレンタインSS』 翠編

「虹ちゃん、ハッピーバレンタインです。これは私からの愛を込めたチョコレートですよ」

「ありがとう翠。さっそく中身を見てもいいかな?」

「もちろんですよ」

俺はさっそく、翠から受け取った小さな紙袋の中を覗いてみる。緑色を基調とした小さな紙袋だ。

「これは‥‥プリンか?」

「ええ。ですが、ただのプリンではありませんよ。これはマシュマロチョコプリンです」

紙袋の中には、チョコの風味を漂わせるプリンが詰められた小さなビンが、4つ入っていた。

「これ、かなり手間がかかったんじゃないのか?」

「そんなことはありませんよ。端的に言えば、レンジで温める、混ぜる、冷やすで終わりなので。ビンに詰めるときは少し緊張しましたけどね」

苦笑する翠は、いつもよりも楽しそうにしている。本人はそんなつもりはないのだろうが、微妙に綻んでいる口元から、翠がいつもより楽しそうにしてるのは間違いないと思う。どうやら相当プリン作りが楽しかったようだ。

「あ、大事なことを伝え忘れていました。このプリン、長持ちはしないので出来れば明日中、遅くても4日以内には食べるようにしてくださいね。彩さんと2人で分けて食べてください」

こちらに気を遣って、注意点を教えてくれる翠には、本当に頭が上がらない。

そんな翠のありがたい気遣いを無駄にしないよう、俺は、母さんと明日中には食べようと決意をした。

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