第30話 「嘘はつかなくて大丈夫ですよ」

翠に誤解を与えてしまった昼休みが終わり、午後の授業も乗り越え、放課後がやってくる。(ちなみにちゃんと弁明して誤解は解いておいた。)

「虹ちゃん、一緒に帰りましょう」

俺のところへやってきた翠は開口一番そう声をかけてくる。

「あぁ、いいぞ」

翠にそう返事をし、俺も席を立ちあがる。

こう会話をしている今も周りから視線は集めているし、ひそひそと話している声も聞こえる。まぁ、会話の内容は聞き取れないし俺たちに関係のない話をしている可能性もあるのだが‥‥。

まぁ、そんなに気にすることでもないか。いい加減陰口とかにも慣れないといけないしな。


「蒼ちゃんや朱莉ちゃんの時は、どういう風に放課後を過ごしていましたか?」

「うーん、2人ともそんなに大したことはしてないかな。朱莉の時はショッピングモールまで行ったけど」

あまり2人とのことを赤裸々に話すわけにもいかないし、何より地雷を踏むことが怖かったので真実を交えつつ、ちょいちょい嘘も混ぜた返事をしておいた。これなら大丈夫だろうと思っていたのだが、

「嘘はつかなくて大丈夫ですよ」

「‥‥え?」

あっさりと切り捨てられてしまった。


「嘘ってどういうことだ?」

とぼけながら聞いてみる。確かにちょっと嘘は混ぜてはいたが、ほとんどが真実だし、朱莉とショッピングモールに行ったというのもモデルの件で翠は知っているはず。そういった真実も交えながら話しているから嘘だと見分けがつく要素なんてないはずだ。

「朱莉と一緒にいた日に私たちが言っていたことを忘れたんですか?」

あの日翠たちが言っていたこと?なんだ、それは。

あの日のことはモデルの話が強烈過ぎたのと、長時間正座させられていたせいで足がずっと痺れていたせいで大したこと覚えていないんだけど。


「‥‥なんか大事なこと言っていたっけ?」

恐る恐る翠に聞いてみると、翠は「はぁ」と困ったようにため息をつきながら口を開く。

「『登校から下校までしっかりと監視していた。放課後に関しては桐谷君に止められて観察できなかった』といったはずですよ。つまり登校から下校まで監視していますし、放課後も桐谷くんにとめられさえしなければ私たちは虹ちゃんの行動を把握できるんですよ」

あ、そういうことか。つまり蒼の時は放課後みられていたということだから、さっきのやつも嘘をついているとバレたみたいだ。


「まぁ、嘘をついたことはあまり咎めませんけど。虹ちゃんのことですから何か考えがあったのでしょうし。それよりも蒼ちゃんと虹ちゃんの家で何をやっていたのかを教えてほしいです」

さっきまでの話を聞く限りここで嘘をつく意味はないし、正直に答えておくか。

「特に何もなかったよ。一緒にスーパーに買い物に行って、蒼にご飯を作ってもらってそれを一緒に食べたって感じかな」

「結構なことやってるじゃないですか‥‥」

真実を包み隠さず話せば翠は呆れたような声を出す。

一緒にご飯を食べることはそんなに重要なことだろうか?今までも同じようなことをやっていたわけだし、そんなに大事なことでもない気がするが。


「いいですか虹ちゃん。料理をふるまってきたということは虹ちゃんの胃袋を掴みに来ているということです。だから胃袋を掴まれたらその人がだいぶ有利になってしまうんです!」

「お、おう‥‥」

前のめりになって説明してくる翠に若干戸惑いつつ返事をする。ここまで必死になられるとは思ってなかったから、なんとなく申し訳なさを覚える。


「しょうがないですから今日は私がご飯を作ってあげます」

何が『しょうがない』のかはわからないが、翠の提案はとても魅力的なものではある。

「それはありがたいけど、さすがに全部をやってもらうのも申し訳ないし、俺も何かしらは手伝うよ」

「じゃー、共同作業としましょうか。結婚式に新郎新婦がケーキに包丁を入れるやつです」

翠からちょっと重い発言も出てきたが、無視しておこう。こういう発言は無視するのが得策だと今までの人生で学んできたからだ。


「それじゃあ、さくっとスーパーで買い物を済ませようか」














―――――――――――――――――――――――

今日は若干短めです。冬休み前でちょっとだけ忙しいんですけどね(言い訳でしかない)。

できるだけ毎日投稿していこうとは思いますが、もしかしたらできないかもしれませんし、今回みたいに短めになるかもしれませんが、ご了承お願いします。


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もしまだやっていない方がいましたらよろしくお願いします!!

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