第29話 「使える武器は使っていかないといけませんからね」

「膝枕させてください。今度は虹ちゃんが私を満足させる番ですよ」

どうやら翠も朱莉と同じで膝枕をご所望のようだ。ただ、勘違いしてほしくないのは、翠は膝枕をのではなくのだ。

まぁ、俺からしてみれば膝枕してもらうことに損はないから全然いいんだけど。別にしてもらいたいわけじゃないから。翠がやらせてくれって言うからやってもらうだけだから。


「じゃー膝、失礼します」

「ふふ、どうぞ」

一言断りを入れて翠の太ももあたりに頭あをのせる。毎回思うんだけど、『膝枕』って名前なのに頭をのせるのって太ももなんだよな。これ、ずっと不思議に思ってる。


「虹ちゃん、私の膝枕の感触はいかがですか?」

「‥‥すごく柔らかいです」

返事に少し間があったのは許してほしい。朱莉にも膝枕はしてもらったし、関係ないことも考えてたから、余裕で乗り越えられると思っていたんだけど全然そんなことなかった。全体的に若干ふくっらしている翠の膝枕は朱莉以上に柔らかく、俺の想像をゆうに超えてきた。


「ふふ、本当に気持ちよさそうにしてくれますね。でも、これで終わりじゃ朱莉ちゃんと全く同じになってしまいますからね。覚悟しておいてください」

「え?」

翠が意味深なことを言った瞬間、俺の頭の上に何か柔らかくて温かいものが乗せられる。そしてそのまま髪を梳かれるように動かされる。

‥‥これは翠の手か?

「翠、なんで頭を撫でてるんだ?」

「今言ったじゃないですか。朱莉ちゃんと全く同じになってしまうのは嫌だと。だからこうしてちょっと手を加えているんですよ」

翠に質問を投げかけると、さっきとほぼ変わらない言葉が返ってきた。まぁ、翠たちはアピールの一環としてやってもらっているわけだから、翠のようにほかの人と違うことをするのも不思議ではないのか。


「どうですか?気持ちいいですか?」

「あぁ、気持ちいいよ。翠は髪を梳くのが上手いな」

翠の言葉に返事をしつつ、翠の手によってやってくる快感に身をゆだねる。今まではあまり人に髪を梳かれるという経験はしたことがなかったし、自分で髪を梳いたところでこんな感じで快感を得られることもできないので、この快感は癖になってしまいそうだ。


「いい感じですね。でも頭を撫でるだけじゃ終わりませんよ。使える武器は使っていかないといけませんからね」

またなにか翠が言っているが、何かをやるにしても、今のように頭を撫でるような軽いものだろうし、特段気にすることはないだろう。

そう思っていたのだが――――

「えいっ」

「ふわぁっ?!」

突如、頭に柔らかいものが乗せられる。さっき、手を置かれた時も柔らかいと感じたが、今回のはさっき以上の柔らかさだ。それにこの柔らかさは、ここ最近毎日のように感じているものだ。


「えっとぉ、翠?聞きたくはないけど、一応聞くぞ?今俺の頭に乗っている柔らかいものはなんだ?」

「私の胸ですよ」

デスヨネ。

もう聞く前からなんとなくわかってたよ。だって朱莉や蒼に押し付けられたものとほとんど同じ感触がしたし、それに手よりも柔らかいものなんてもう胸しかないだろう。

あ、胸の感触覚えてるからって通報はしないでくれよ?長い間押し付けられてから覚えていただけで、感触を堪能していたとかそんなのではないからな?


「どうですか?感触は。自慢しておくと、私って5人の中だと一番大きいんですよ。何がとは言わないでもわかりますよね?」

はい、それはもうはっきりとわかっておりますとも。それに一番大きいというのもなんとなくわかりますよ。朱莉や蒼よりは大きい感じがしておりますし。

翠がさっき言っていた『使える武器』というのは、このことだろう。確かに女性専用の武器だし、5人の中で一番大きいというのなら、翠が使わない理由はないだろう。


「どうやらかなりの効果が出ているようですね。やはり女性の胸というのはかなりの武器になるのでしょうか」

「まぁ、世の男性の好みを1人1人全員把握しているわけではないが、胸が嫌いな人はあんまりいないだろうな。一応、胸派と尻派の間で論争が起きているらしいけど」

「虹ちゃん、私の前なので何も言いませんが、普通女性の前でそういう話はしない方が良いと思いますよ」

あ、やべ。ついつい話しすぎてしまった。翠も言った通りこういう話ってあんまり女性の前でやることではないよな。次回からは肝に銘じておこう。次こんなことを話す機会があるのかは知らないが。


「まぁいいです。虹ちゃんには胸を押し付けておけばアピールできるというのは今回で十分わかりました。これは次からのアピールに活かせそうですね」

「その言い方は悪意しかないだろ‥‥」

翠にかなりの誤解を与えたまま、昼休み終了のチャイムが鳴ってしまった。この誤解どう解こうか‥‥。












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この前宣言した『2022年までに達成したい目標』のうち、❤1000を突破することができました!

このまま、ほかの目標も達成できるように最後まで走り抜けていきますので、これからも応援のほどよろしくお願いします!!

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