第23話 「やあやあ女たらしくん?」
ガラガラガラ――――
教室の後ろのドアを開けて中へと入る。昇降口からここに来るまでの間でかなりの視線を感じたが、耐性が付いてきているのだろう。ほとんど何も感じなくなってきていた。今もそうだ。先日は朱莉、そして今日は蒼と腕を組みながら教室に入ってきたんだ。視線を集めないわけがない。
まぁ、さっき言ったみたいに、俺は気づかないうちに視線に対する耐性が付いてきているみたいだし、蒼もこういう視線には慣れっこのようで全く気にした様子を見せない。むしろふにゃけた笑みを浮かべて俺の腕に抱き着いてきている。
「やあやあ女たらしくん?今日は別の女の子を連れているのかい?」
教室に入り、席に着こうとしたタイミングで、後ろから声をかけられる。こんな調子で声をかけてくるのは1人しかいない。
「橙弥、誤解を招くような言い方はやめろ」
「だって事実じゃねーか。この前は湯原さん、今日は空凪さんだろ?普通の人からしてみれば5大美少女をとっかえひっかえしているようにしか見えないぞ?」
「うぐぅ‥‥」
一応橙弥の軽口にツッコみを入れておくが、正論で返されて何も言い返せなかった。
確かにそうだよな。俺や橙弥は事情を把握しているから、1日ごとに5人の誰かと一緒に行動していても違和感は感じないが、周りの人からしてみれば、俺が5大美少女をローテーションさせて遊んでいるようにしか見えないんだよな。
‥‥いやまぁ、あながち間違ってはいないんだけど。俺が5人をローテーションしてるんじゃなくて、俺が5人にローテーションさせられているんだけどな。
「虹、お前近いうちに後ろから刺されるんじゃねーの?」
「あ、バカお前。そんなこと言ったら蒼が――――」
「ガルルル‥‥」
「こうなってしまうだろ」
「そういえば、うちの5大美少女はそろいもそろって虹のことが大好きなんだった‥‥」
橙弥としては軽い冗談なんだろうし、俺も冗談として受け流すことができるのだが、幼馴染5人はそうはいかない。今の橙弥の言葉のように俺に関する悪口やイジリを5人が聞けば、今の蒼のようにたちまち
「蒼、そんな怖い顔すんなって。蒼は笑顔が一番似合ってるぞ?」
「ふへぇ‥‥////」
とまぁ、こんな感じで慰めてやれば簡単に機嫌を直してくれる。
5人を手玉に取っているような気がして罪悪感がものすごいことになるけど‥‥。
「え、空凪さんチョロ‥‥」
「言うな。またバーサーカーになるぞ」
橙弥がとんでもないことを口走ったので、速攻で口止めしておいた。
こいつの方が近いうちに刺されそうな気がするな。
「んじゃ、俺は4人の5大美少女と駄弁ってきまーす」
なんとなくややこしいことを言いながら、橙弥は登校してきたばかりの4人のもとへ向かっていった。
「虹、お弁当一緒に食べましょ?私、用意してきたの」
「そうなのか。わざわざありがとうな」
昼休み。各々の生徒が学食へ行ったり、机をくっつけてお弁当を食べ始める中、俺のもとへ蒼が近づいてきた。手には2つの包みを持っているし、あれが蒼の用意してくれたお弁当なのだろう。
「いいえ。これくらい大したことないわ。それより私から誘っておいてなんだけど、少し待ってくれるかしら?」
「あぁ、まあいいけど」
俺の返事を聞いた蒼は、そのままの足で橙弥と4人が集まっている場所へと歩いて行った。そしてその5人と二言三言話した後、なぜか5人を引き連れて帰ってきた。
「虹、お昼休みはこの5人も一緒に過ごすわ」
蒼は帰ってくるなり、俺にそう告げてきた。俺としては断る理由もないし別に全然かまわないのだが、蒼はいいのだろうか。俺が言うのも変だけど、せっかくローテーションで俺を独占する日を得ているというのに。まぁ、蒼は蒼でもしかしたら何か考えているのかもしれないし、あまり深くは聞かないでおこう。面倒見のいい蒼のことだし、もしかしたら4人に申し訳なさを感じているのかもしれないしな。
「というか、橙弥も一緒なのか?」
「あぁ。俺の直感が『なにか面白いことが起きる』って告げてるんだ。ついていかないという選択肢は俺には存在しない」
わけのわからないことを言っている橙弥だが、蒼たちが何も言わないのだし橙弥が付いてきたところで問題ないのだろう。橙弥の直感の話もよく分からんし。
この時の俺はそんな風に考えていたのだが、後々気づくことになる。
橙弥の直感が『悪い方向』で当たっていることに‥‥
―――――――――――――――――――――――――――
彩:「さあさあ、面白くなってまいりましたー!」
美紅:「蒼ちゃん、何するのかしら?」
瑠璃:「私、なんとなくわかっちゃったかも。あの子、とんでもないこと考えてるわね‥‥」
朱莉たちを誘った蒼の真意とは!?
次回は、蒼がとんでもないアピールを魅せる?!
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