2-2章 ギャップ萌えの蒼?!

第22話 「私たちみんなEはあるんだよ?」

スリスリ―――――

「‥‥‥‥」

ムギュムギュ――――

「‥‥‥‥‥‥」

スリスリ―――ムギュムギュ――――

「‥‥あの蒼さん?ちょっとくっつき過ぎじゃないですかね?」

さすがに耐えきれなくなって蒼に聞いてみる。

さっきから俺の腕に抱き着いた状態で、頬ずりをしてきたり、柔らかい胸がずっと俺の腕に当たってきて登校どころではないのだ。

‥‥あと胸の感触、朱莉と似てるな。


「虹、今ほかの子のこと考えてたでしょ」

「べべべ、別に?」

はい。一瞬でバレました。エスパーですか、あなたは。

「嘘つかなくていいから。どうせ『朱莉と胸の感触が似てるなぁ』とか思ってたんでしょ?」

「なんでわかるの?!」

ほんとに怖いんだけど?!考えてたことそっくりそのまま当てられたんだけど!

女の子こえぇ‥‥。


「別にいいもん!朱莉の感触を忘れてしまうくらいに上書きしちゃうんだから!」

ムギュムギュ

そう言って再度俺の腕に抱き着いてくる蒼。そしてその身に宿した豊満な胸を無遠慮に押し付けてくる。相変わらずすごい感触だ。すごく柔らかいし、押し付けてくるたびに形がクニクニと変わっている。


「ねぇ、虹?」

「な、なに?」

(私たちみんなEはあるんだよ?)

「ぶふっ!!」

耳元で急にそんなことを言われて思わず吹き出してしまう。急になんてことを言ってきているんだ、この幼馴染は。

‥‥Eってあれだよな。胸のサイズだよな‥‥?

『私たちは』ってことは5人全員E以上あるんだろうし、しかも『Eは』ってことはもしかしたらそれ以上ある人もいるってことなのか?


「あら?虹、何かやらしいこと考えてない?」

だからなんでさっきからピンポイントで俺の考えてることを当ててくるんだよ?!

蒼のことが若干怖くなってきたわ!

「黙るってことは肯定するってことね」

エッチ‥‥

小声でそう言った蒼は、体を自分の手で隠すように抱いている。

いや、そんな風にするならあんなこと言わなければいいのに。自分からそう仕向けてきたんだから誤解を生むような反応をするのは間違っているだろ。俺がセクハラで訴えたいくらいだぞ?


「お、おい見ろよ」

「『氷結女王』が男と一緒に‥‥?!」

「しかもあれって少し前に『太陽嬢』と2人きりで歩いてたやつじゃないか?」

「本当だ。あの野郎、太陽嬢だけにとどまらず氷結女王までも!」

「弱みでも握られているのか?」

おうおう、お前ら。好き放題言ってくれるじゃねーか。弱みを握っているだって?むしろ生殺与奪の権を握られてるのは俺の方だわ。

と、言い返してやりたいところだが、そんな風に言ったところで意味がないことはわかっている。こういうのは無視が一番だ。


「蒼、どこまで腕を組んだ状態で――――ヒィィ!?」

周りで好き放題言っているやつを無視しつつ、蒼に話題を振ろうとして俺は戦慄した。

俺が振り向いた先にいたのは、さっきまで「ぎゅー」とか言って甘えてきていた蒼ではなく、火神さんにも少し見せた猛獣状態の蒼だったからだ。原型がなくなるほどに顔を歪ませ、全身から怒りのオーラを放ちながら全力で威嚇している。視線の向いている先にいるのは、さっきまで俺に対して好き勝手言っていた男子生徒たちだ。


(マズイ!このままだと蒼がアイツらを天に召してしまう!)

そう判断した俺はすぐさま蒼の怒りを鎮めるために、ありったけの知恵を振り絞りある1つの解決策を見出す。

「蒼?あんまり怖い顔で威嚇したらだめだぞ。可愛い顔が台無しになってしまうからな」

俺が諭すようにそう言うと、蒼はすぐさま放っていた怒りを収め、いつもの可愛い笑みを浮かべる。

「ほんと‥‥?私、可愛い?」

「お、おう。もちろん」

どこかの妖怪のようなセリフで聞いてくる蒼に、俺は若干ビビりつつも返事をする。

「やった!虹が可愛いって言ってくれた‥‥!」

どうやら俺の対応は間違っていなかったらしい。機嫌を直してくれた蒼は、嬉しそうに朗らかな笑みを浮かべている。なんだか一仕事終えた気分だ。


「ふへぇ。今日は朝から良いことしかないなー。虹に抱き着いて頬ずりもできたし、可愛いって言ってくれたし。幸せだぁ」

とりあえず、なんとか機嫌を直してくれたようだ。

朝からどっと疲れた気もするが、気合でどうにかするしかないな。


決意を固めて、俺は教室へ向かった。













――――――――――――――――――――――――――――――――

作:「全員E以上ってマジ?」

朱:「変態」

紫:「しね」

翠:「気持ち悪いです」

白:「キモッ」

作:「俺に対しての当たりが毎回酷すぎない?!」

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