特別編SS 『いい夫婦の日』 朱莉ver.

「ふんふふーん♪」

私———才川 朱莉————は鼻歌交じりに晩ご飯の準備をしている。社会人になりたてな私だけど、実はもう結婚していて愛する旦那さんがいます。今はもうすぐお仕事から帰ってくるであろう旦那さんのことを想いながら、美味しいご飯を準備しているところです。


———ガチャ

玄関のドアが開く音がした。どうやら私の愛しの旦那さんが帰ってきたみたい。私はそれを認識した瞬間にパタパタとスリッパを鳴らしながら玄関に旦那さんの出迎えにいきます。

「おかえりなさい、虹くん!」

「あぁ、ただいま」

顔に笑みを浮かべながらそう言っているのは私の旦那さんの才川 虹くんです。彼は公務員として働いていて、職場ではエリートと言われているらしい。職場に行ったことはないからわかんないけど。


「ふふーん。そんなお疲れな虹くんに究極の選択をさせてあげましょう。

———ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?」

「うーん、それじゃ朱莉で」

「ふぇぇ?」

虹くんの答えにびっくりする私。自分で言っといて変ですがまさか私を選ぶとは思っていなかったのですごくびっくりしています。や、やっぱりあれですかね・・・?

「え、えっと虹くん?その心の準備をさせてほしいかなぁって。あ、あとお風呂も———」

「うん。今日も朱莉は可愛いなぁ。ヨシヨシ」

そう言って私の頭を撫でてくる虹くん。・・・あれ?私が思っていたのと全然違うんだけど


「って違うよ、虹くん!」

「え?何が?」

「なんで私を指名したのに私の頭を撫でてるの!?」

「嫌だったかな?」

泣きそうな顔で聞いてくる虹くんに私は「ウッ」と言葉を詰まらせるがここは引くわけにはいかない。じゃないと、ほかの4人と争ってまで夫婦になった意味がないし、ほかの4人い馬鹿にされてしまう。それだけは避けないと。

「私が求めているのはなでなでなんてかわいいものじゃなくてね、もっと別のことだよ!いや、なでなでも嬉しいけど!」

「別のこと?」


虹くんは私が言いたいことが心からわかっていない感じだ。むぅぅ。これを口にするのはかなり恥ずかしいんだけど、虹くんに意識してもらうためだし仕方ない。

「そりゃあその、あれだよ。夫婦の営みだよ・・・・・・」

———何を言っているんだあ、私はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

すぐに顔を手で隠す。死ぬほど恥ずかしい。自分でも顔が真っ赤になっていくのを感じる。穴があったら入りたいよぉ。・・・そうだ!虹くんは?

そう思って虹くんの方を見ると、彼は口元を手で押さえて肩を震わせて笑っていた。


「~~~~~~////。もう虹くん!なんで笑っているの!?」

私は彼に怒っていることが伝わるように頬を膨らませる。すると彼はついに手を口元から離して声を出して笑いだした。

「アハハ!ごめんごめん。朱莉が可愛いこと言うからつい、さ。でもそうだなぁ」

彼は私に軽く謝罪をした後、何やら考え事をし、私の耳元に口を近づけてこう言いました。

「こんなかわいい奥さんを放ってはおけないから、あとでたっぷりと可愛がってあげるよ。もちろんベッドの上でね?」

「~~~~~~~~/////」

それを聞いた私はさらに顔を赤くしてしまう。仕方ないでしょ。こんなことを言われたら誰だって照れてしまうに決まっている。せめてもの反抗として腕のあたりをぺしぺしと叩くが彼はまったく気にしていない。

「アハハ。それじゃあ、まずは朱莉が用意してくれたご飯を食べようかな」

そう言って彼は私を連れてダイニングの方へ―――――


――――チリリリリリ

「はっ!」

アラームの音で私は目を覚ます。視界の中に映るのはいつもと変わらない私の部屋の天井。

「なんだ夢か」

あと少しで幸せの絶頂を迎えられそうだっただが、タイミング悪くアラームに邪魔をされてしまったようだ。

「しょうがない。今の夢の続きは数年後の未来の楽しみにしておこう!」

決意を口にし、私は学校の準備を始めるのだった。

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