第7‐2話 (白亜目線)

「ただいま」

コウに家まで送ってもらったあと、私はいつものボリュームで玄関から声をかける。

「白亜ちゃんだー!お帰りー!」

玄関からハイテンションで出迎えてくれるのは私の母親の水無月 美雪(みなづき みゆき)だ。

ママは、私とは対照的な性格をしていて、いつも明るい。ただ髪色は名前の通りきれいな白色をしているから、日本人なのに外国人に間違えられたりもする。あと、多少親ばかでもある。


「今日も虹くんの家に行っていたの?」

「うん」

ママの言葉に私は淡白に答える。私はいちいち何があったかなんて報告しないし、こんな感じの返事で対応するのはいつものことだ。

「虹くんのご飯、食べたの?」

「うん」

「うわぁ 。いいなぁ。私も食べたいなー。虹くんのご飯」

「それはダメ」

「ケチっ!」

ママの言葉を私はすぐに拒否する。あのご飯を食べられるのは私たち5人と彩さんだけの特権なのだから。簡単に食べさせたりなんてできるわけがない。


「あ、そうだ。そろそろ白亜ちゃん、虹くんと付き合い始めた?」

「まだ全然。そもそも恋愛対象として見られてない」

「えー?あんなに露骨に示してるのに気づかないの?さすがに鈍感過ぎじゃない?」

「それは私も思う」

ママの言葉を私は肯定する。実際、私を含めた5人はかなり露骨にアピールしているといっても過言ではない。まぁ、紫夕は例外かもしれないけど。それでもあの虹は気づかないのだから、その辺の野生動物を堕とすより難しい。そろそろ切り札の使いどころかもしれない。


「しょうがない。できればこんなことはしたくなかったけど。こうなったらやるしかない」

「ん?白亜ちゃん、何か考えがあるの?」

「うん」

私は肯定し、その切り札の名前をママに教える。

「色仕掛け作戦だよ」

「え?」

私の言葉にお母さんはポカンとしている。

「本気で言っているの?白亜ちゃん」

「もちろん」

これしか方法はないと思っている。多少強引だし、めちゃくちゃ恥ずかしいから今までしてこなかったけど、ここまできたらやるしかない。

「まぁ、虹くんだし大丈夫か!白亜ちゃん、あなたのママはいつでも白亜ちゃんを応援しているぞ!」

「ありがと。ママ」

ママからも応援してもらったわけだし、これは頑張らなくちゃいけない。絶対に負けられない戦いがここにはある!


さぁ、ヒロインレースの開幕だ!

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