第11話 両成敗

「生徒同士の争いは困るのだけど、あなたの言葉は一方的ですね。そのような態度ではここの学校にはいられませんよ」

教師がさすがに咎めに来る。


「ここは学びの場です。貴族・平民わけ隔てなく過ごさなければなりません。このようなトラブルは困ります、あまりにひどいときはご家族に連絡をしなければなりませんが」

悔しそうにしながら、ミラは大人しくなる。


さすがに実家への連絡は困るだろう。


「行くわよ」


「待て。ミューズへの謝罪がまだだ」

行く手を阻み、ティタンが立ち塞がる。


「ふん」


「一方的に罵りを受けたのは皆が聞いている、謝れ」


「……邪魔よ」

その言葉にミラの護衛騎士がティタンを退かそうと肩に手をかける。


反射的にティタンはその護衛騎士を投げ飛ばしてしまった。


「おっと、すまない。急に掴まれたからな」

大の大人である護衛騎士があっという間に投げ飛ばされたのだ。


皆も目を瞠る。


「よくも私の騎士に!」


「正当防衛だ、急に掴まれたからな。それにしても子どものすることなのに受け身も取れないのだな」


「ティタン……」

クイクイと服を引っ張る。


やりすぎだと咎められた。


「争いは困ると言ったでしょう。両方実家に連絡を入れさせてもらいます」

教師になる人間は王室が保護する。


彼らがこの報告で貴族の逆恨みに合わないように、徹底したシステムになっているのだ。


「俺とこちらのミラ嬢の両方ですね? それなら構いませんが」

自分だけなら何とでもなる。


ミューズとマオは手出しなどしていないので、巻き添えは嫌だ。


コクリと頷いた教師を見て安心する、しっかり見てくれてるようだ。


ミラはぎりりと歯軋りをしていた。







「ふふ、早速ティタンの素行について学校から手紙だ」

アルフレッドは微笑みながらエリックに手紙を渡してきた。


「ふむ、咎められたというかただの報告だな。この書き方では正当防衛が見て取れる。けれど騎士を投げ飛ばしたとは凄いな」

そしてもう一つ、マオからの郵便物だ。


中には同じく手紙と、魔石が入っている。


王家の秘密の魔法だ、見たものや聞いたものの記憶を、魔石に残して真実を見るもの。


無機物からの記憶を取ることもできるため、人間の記憶と違い改竄がされない。


王族付きの従者のため、マオはこの魔法を秘密裏に会得している。


「鮮明に見えるな。なるほどこういう事か」

手紙も読み、エリックはさらさらと手紙をしたためた。


「王族たるものもっと完膚なきまで叩きのめさなきゃダメだぞ。ミューズを困らせてはいかんな」







後日届いた兄からのダメ出しの手紙に、なるほどと頷く。


「ミューズを困らせたくないし、それにしても色々な手札があるものだ」

色々なパターンでの報復の仕方が書いてある。


様々な経緯や言葉やシチュエーションによって返しが違うため、参考になりそうだ。


最後は小難しく考えなくていいがミューズを悲しませるな、やり返す時は二度と歯向かわないよう徹底しろ。

二度目はもっと陰湿になるから確実に潰せと書いてあった。


「マオにも言われたな。あれでは甘いか」

もっと精進せねばと心を新たにする。






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