第12話 報復
「それで、いい残す言葉はある?」
連れてこられた部屋で、ミューズはただミラを睨みつけていた。
放課後、ティタンはキールと少し稽古をするといい、マオは少し疲れたと図書室でうたた寝していた。
休ませてあげたいとそのまま寝かせておき、少しトイレに立っただけなのだが、ミラと取り巻きに囲まれ空き教室まできている。
声を出そうかと思ったが、騒ぎになってはレナンの信用に関わると言われ大人しく付いてきた。
「姉妹揃って田舎っぽい顔よね、エリック様まで誑かされて……どうかしてるわ」
まじまじと顔を見られる。
「そしてその目、とっても不気味。両の目の色が違うなんて、あなた魔物なんじゃなくて?」
ミューズは顔を伏せるが、ぐいっとあごを捕まれ上を向けさせられた。
「はな、してっ」
「あなたの姉が悪いのよ。私のお姉様はエリック様の婚約者候補だったの。それなのにレナンにはいじめられ無実の罪を被せられ、修道院送りになったわ。あんな監獄のようなところに!」
顎を掴む手に力が込められる。
ミラはミューズが何者であるか知っていたようだ。
「そしてあの護衛、偉そうにしていたくせにあっさりと離れてしまうのね。キール様のおかげで助かったわ。あなたの従者も不真面目ね、お気の毒」
ミューズが顔を振り、手をふりほどく。
「生意気な顔ね。まぁいいわ。今から何が起こるかわかっている? 王太子妃となる者の妹が何者かに手籠めにされたなんて知られたら、大スキャンダルになると思わない?」
楽しそうに話すミラに察したミューズは逃げ出そうとする。
だがその両手はミラの護衛騎士に掴まれ、ドアの前には取り巻きがいる。
「こんなのバレたら、あなた達もただではすまないのよ!」
「喋られなくなれば問題じゃないわ、筆談も困るわね、あとで指も潰しましょ」
何気なくいうミラに、こういう事が慣れているのだと思わされる。
「あいつ俺を投げ飛ばしやがって! あの護衛、あんたの婚約者なんだろ?詫びを入れてもらうぞ」
「やめて!」
体を捻るが男の力にまったくない敵わない。
「無駄よ、ここに人は来ないもの。叫んだり、抵抗しても構わないわ。そのほうが楽しいからね」
無抵抗ではつまらない。
くすくすと笑う令嬢たちは悪魔のようだ。
「はい、そこまでですよー」
マオの声が響き、魔力の風が取り巻きごとドアを吹き飛ばした。
壁に叩きつけられ、令嬢たちは動けなくなる。
「ミューズ!」
飛び込んできたティタンの拳が護衛騎士の顔に一閃する。
渾身の一撃だ、骨の砕ける嫌な音がする。
「大丈夫か? 痛くないか?」
殴りつけた男を見もせず、ミューズの素に駆け寄る。
男に掴まれたミューズの細い腕を優しくさすり、体をぎゅっと抱きしめその後はミューズの体を抱き上げる。
「ちょっと、ティタン?!」
「マオ、さすがにこの男殺したいんだが駄目か? ベタベタと気持ち悪く俺のミューズに触りやがって」
「駄目です、きちんと裁いて、ニコラ兄さんに捌いてもらいます」
ティタン様が手を汚されるとミューズ様が悲しむので、そこまでにしてくださいと制された。
「事前に話を聞いていたし、大丈夫よ」
「俺が嫌だ。戻ったらいっぱい俺で上書きしてやる。たっぷり甘やかすからな。決定的な証拠となるまですまなかった」
ぎゅうっと抱きしめ、額に唇を落とす。
「あなた達、何なの?!」
逃げ出すのも忘れ、ミラは怯えている。
「何なのって、ミューズ様の従者と護衛ですよ。あなた方の悪行はここまでなのです」
「王太子妃の妹と知っていての悪行、これは罪が重いぞ。そうでなくても悪質な事だ。裁きを受けてこい」
先程の言葉とこのやり口、余罪もあるかもしれない。
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