みにくい王子様

アーエル

第1話


むかしむかし、プレピシ王国には双子の王子様がいました。

見目麗しい兄王子と、みにくい姿の弟王子。


人々は言います

「兄王子の美貌には絢爛豪華な衣裳がよく似合う」と。


人々は言います

「弟王子の美貌には麻でできた衣服がよく似合う」と。



貴族たちは笑います

「弟王子の姿はまるでカカシのようだ」と。


国民たちは笑います

「兄王子の姿はまるでマネキンのようだ」と。



ある日、国王はみなに尋ねます

「どちらが次の国王に相応しいか」と。


貴族たちは声を揃えて言いました

「それは兄王子です」


国民たちは声を揃えて言いました

「それは弟王子です」



困った国王は国を二つに分けて言いました

「どちらかの国を選べ」と。


ただし、選んだが最後

「あっちの国を選べばよかった」と後悔しても選び直しはできぬ


「慎重に選ぶが良い」



国王の言葉に人々は自分の求める王を選びました。




兄王子の国には貴族が集まりました。

弟王子の国には国民が集まりました。


兄王子の国はプレ王国と名乗ることになりました。

弟王子の国はピシ王国と名乗ることになりました。


プレ王国は華やかで煌びやかな国へと発展しました

王となった兄王子はその美貌に相応しい絢爛豪華な装いで国を治めます。


ピシ王国は自然美にあふれる国へと発展しました

王となった弟王子は麻の服を着て手に農具を持ち民と共に地を耕します。



プレ王国の貴族たちはピシ王国を嘲笑いました

「王が共に地を耕す貧しい国だ」と。


ピシ王国の国民たちはプレ王国を憐れみました

「綺麗な装いで心の貧しい国だ」と。




数年がたちました。

プレ王国は世界で一番裕福な国になりました。

ピシ王国も世界で一番豊かな国になりました。


プレ王国はファッションで最先端の国になりました。

世界各国から人々が集い、高価な装いにお金を落としていきます。

国は毎年裕福になっていきました。


ピシ王国は実り豊かな穀倉地帯の国になりました。

世界各国から商人が訪れ、安価な食料を仕入れていきます。

国は毎年豊かな実りが続きました。



そんなある年

世界は『数百年に一度の天変地異』といわれる異常気象に陥りました。


プレ王国の倉庫には

豊富なお金が貯蓄されています。


ピシ王国の倉庫には

豊富な穀物が貯蔵されています。



プレ王国は

お金の魔力に魅入られていました。


だからこそ

「金をばら撒けば食料は手に入る」と信じています。



ピシ王国は

自然の厳しさと優しさを知っていました。


だからこそ

お金より長期で貯蔵できる穀物を大切にしています。



プレ王国は世界に語りかけます

「あなたの国の食料を倍の値段で買いましょう」と。


世界の国々は声を揃えて言いました

「金では腹が膨れない」と。


「あなたは王にむいていない」

「ピシ王国を選べばよかった」


今まで仲良くしていた国々や国民たちから

いっせいに外方ソッポを向かれてしまった王様は

悲しくて涙をこぼしました。



そんなプレ王国に

国民が満足に食べられるだけの穀物が届きました。


袂を分かってから話すこともなかった

ピシ王国からです



「あなたがいたから、私は頑張ってこられたのです」


お金を受け取ることを拒む弟は

兄にお礼を言います。


その優しさに

兄の目から温もりのある涙が流れました。


そんな兄を

弟は優しく抱きしめます。


「これからも、私たちを選んでくれた国民のために力をあわせて頑張りましょうね」



見目麗しく、心のみにくい王子様は

麻の服を着た、心の優しい王子様に支えられて

優しい心を取り戻しました。



そんな2人は

相手を思いやれる心を持つ民に愛された王と

後世に伝えられている。






•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆*・゚•*¨*•.¸¸☆



はたして

プレ王国の王が善政をしいたのか


相手を思いやれる心を持った国民が

王を思いやっていたのか



それを知るものは

この世には誰ひとり生きていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

みにくい王子様 アーエル @marine_air

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ