第41話 挟んでのキス

 なんでこんな時に俺の下半身は興奮している?!? 

 14歳の時にみかんに勃起した前科のある予測不能の相棒ではあったが、それはもう若かりし日の笑い話。今は立つべくして立つグルメなヤツだというのに!


 「ち、違うんだ! これは決して二人が百合百合してるように見えて興奮したわけではなくて!」


 返事がない。さっきまであんなにも感情的だったのに、セドナが幽閉されていた時のように二人とも表情を失い、目はうつろになり、俺の股間に引き寄せられているようだ。


 「アイオン! セドナ!」


 二人は俺の前に膝をつき、俺の太ももを掴み、輝く股間に頬を両サイドから擦り寄せ合いはじめる。


 「おい! 何してんだこんな時に!」


 アイオンごめん、いつもこんな気分だったのか。俺空気読まずにおっぱい揉ませてくれって言ってたもんな。

 そのまま二人は相棒を挟んだまま見つめ合い、相棒ごしに口づけをした。


 お、俺のドリルは!! 言われなくても天をつくドリルだぁあああ!!!!


 螺旋の力とは関係ないが前回同様輝きは増していき、室内は光で満たされ俺は眩しさから目を閉じた。


 あまりのことに後ろに倒れ尻餅をつく。

 ごめんなさい、光が収まっても相棒はオッキしたまんまでした。


 「守さん? 何してるんですか?」


 「覚えてないのか、今二人で俺の……」


 セドナがチラチラ俺の相棒を見ている。言わない方がいいか。


 「セドナが正気を取り戻したときみたいに相棒が輝いたんだ。何か変化はないか?」


「勇者の鼓動が発動していたんですか? ステータスを確認してみます」


 しばらく沈黙が続く。アイオンが何かに気づき、目を見開いた。


「そ、そんな。私のステータスからタイムリープがごとなくなっています」


「私に変化はないようです。勇者様はいかがですか?」


 そうか、俺に変化があるパターンもあるわけか。

 ステータスを念じる。上から順に確認すると___


「お、おい! タイムリープって書いてあるぞ。これってもしかして俺がタイムリープできるってコト?」


 俺は喜んだ。思わずちいかわ語尾になるくらいに。アイオンとセドナの望みを叶えて、ヴィーナスを助けられるかもしれない。しかし、アイオンの表情は青ざめていた。


「なんで……」


「どうした? まだ何か問題があるのか」


「守さんを助けられなかったどころか、責務まで負わせてしまうなんて……」


 アイオン。なんていい女なんだ。普通自分が解放されて、妹も助かるかもしれないとわかったら、頼むから世界を救ってくれと懇願するところだろう。


「アイオン、俺を見ろ」


 顔を上げたアイオンに満面の笑みを見せる。アイオンは泣きそうな顔になるのをこらえた。やっと堂々と抱きしめられる。


「俺は嬉しいんだ。必ず3人を助けるから、信じてくれ」


「で、でも! タイムリープは想像しているより遥かに精神に負担がかかるんです。戻った先の私は、守さんのことを忘れていますし……忘れたく……ないのに」


 またアイオンはポロポロと涙を流し始める。


「大丈夫だ、俺は覚えてる。今日までのアイオンと過ごした時間を、絶対に忘れない。セドナのこともだ」


「勇者様……この御恩をお返しするすべがないこと、お許しください」


 セドナは片膝をつき、頭を下げた。


「何やってんだ。おいで」


 セドナは顔をあげると、おずおずと近づいてきた。

 俺は二人を抱きしめた。さっきまでの俺とは違う。チャンスがある。

 何があっても二人がいる世界を救う。そう決めた。

 アイオンは力いっぱい華奢な体で俺を抱きしめ返した。

 セドナはまだちょっと悔しそうだが、俺の背中に手を回し抱きしめ返してくれた。


「よし、魔王戦とタイムリープ後に向けて、作戦会議だ」


「「はい!」」

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