第20話 分岐点1
俺たちは神殿に戻り、食卓を囲んでいた。
今日の昼飯は、スパイスの効いたスープカレーに、根菜と肉が入っているものだ。
疲れた体にスパイスの香りと、肉のあぶらの旨味が染み渡る。
MPもいつのまにか回復したようだ。ほぼ全快に近い。
食事を終えてから、アイオンを宝物庫に誘った。
狭い個室に半裸の美女と二人きりだ。緊張感がはしる。まあ、そんなの童貞の俺だけだろうけど。
「試したいことって武器の変更ですか?」
「いや、変更じゃない、追加だ。1つ以上持てないなんて試してみないとわからないだろ。俺の戦闘って、実際に武器は使わないから、ステータスさえ向上してくれればいいと思ってさ」
「武器の複数装備ですか? なるほど。考えたこともありませんでした。試してみる価値はありそうですね!」
「だろ? お、その弓なら大剣背負ったまま装備できそうだ。とってくれアイオン」
「守さん、あなたはやはり勇者様です」
「なんだ?」
「いえ、なんでもないです」
アイオンは嬉しそうに弓を手に取り、俺に手渡した。
「うん、問題なく持ててるな」
強制的に弾かれる、持てない等の制約はなさそうだ。
「ステータスの補正はいかがですか?」
「確認する」
俺はステータスに意識を集中する。
相沢守 level 72
体力 499
魔力 311
攻撃 289+621+389
防御 201+489
装備 聖鎧 女神の寵愛 rankMAX
聖大剣 エクスカリバー rankMAX
聖大弓 エルシアの涙 rankMAX
魔法 戦いの唄 小石召喚 雷神の鉄斧
特殊能力 勇者の器+1 女運+∞ 投石技能rankMAX
「やったぞ! あがってる! 289+621+389で、合計値は1299だ」
「すごい! すごすぎます! もてるだけ持ちますか?」
アイオンはプリプリと腰を振って目を輝かせた。なんだ、誘ってるのか?夜まで待てないってか?
「いや、あとは片手が塞がるものしかない。装備として担ぐには大剣と弓だけにしておこう」
試しに矢筒から矢を抜いてみる。攻撃補正に変更はない。よし。俺は代わりに自らの相棒を入れ、隠してみた。
「何してるんですか、国宝級の伝説武器なんですよ!」
慌てるアイオンを無視して、コンコンと筒を叩く。
いい音だ。しかしどこかのジャングルの奥地に住んでいるシャーマンのようなので辞めた。丸出しとどっちかマシかはわからないが、もう丸出しに慣れてしまった自分もいた。矢筒を腰横にセットし、一応矢も戻した。
「アイオンには常に下半身を露出しなきゃいけない苦しみはわからないよ……」
「んぐっ。すみません」
「そういうなら脱いでくれよ! 下半身!」
チャンスか?
「この神衣は上下セットなので、下だけ脱ぐことはできないんです」
ノーチャンスだった。
「じゃあ、布団を適当にぬって服にすることは?」
「伝説級の装備を身につけた場合、ほかに身につけることが出来るものも伝説級に限定される制約があります。なので、普通の服を身につけるとステータス補正が消えますね」
「なあ、それってもしかして俺一生服きれないんじゃ……」
「せ、世界を救えば防具を身につけなくとも良くなりますので! 部屋着用にだけ作りますか?」
「いやいいよ。もう慣れた。鎧脱ぐだけだし」
落ち込む俺をアイオンはなんとか宥め、部屋を出た。
実は試したいことはこれではない。
俺たちはまた、例の四天王が住まう城に向かった。そろそろ、頃合いだ。
○
「さて、城の前だ」
手をポキポキを鳴らす。
「まさか特攻するつもりじゃ?」
青ざめたアイオンは俺を抱きしめてきた。なんだか最近心の距離と共に、体の距離も近くなった気がする。
「いくら攻撃力が高くとも無茶です! 防具は一つだけなので、そこまで補正はかかってません。最強の四天王に勝つにはまだ戦闘経験が足りませんよ」
「わーかってるって。ところで、魔法の威力も攻撃力依存だよな?」
「勇者の場合は統合されてますね。現状の威力を考えると、器でも同様かと。それが何か?」
「OKだ。出した後俺はすぐ走れない。魔法で浮かせて神域に戻ってくれ」
「え、ちょっとまさか___」
賢者モードになるからな。あとはまかせた。
俺はアイオンの静止を無視して、腕をあげ、手の平を城に向けた。
「【雷神の鉄斧】」
☆☆☆
いつもご愛読ありがとうございます。君のためなら生きられる。です。
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次話から、女神セドナ救出に向けてのお話になります。
是非、続きをお楽しみくださいませ!
著 君のためなら生きられる。
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